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出逢えた奇跡  作者: 琴音七色


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第18章『連日に渡る激しい洪水』

第18章『連日に渡る激しい洪水』



    1 どいつがドイツ?



 翌朝、朝食を取って落ち着いた頃、愛藍が婚姻届にサイン・捺印をすることに。証人欄は既に埋まっていた。冴木と三上だった。


「あー、まこさんと三上さんだっ!」


「うん。………………本当はね、愛藍のお父さんに書いてもらおうかなぁって思ったんだけど……」


「……えっ、………………お父さん?」


「うん……、お父さんが証人だったとしたら嬉しい?」


「……………………」


「愛藍? ………………ごめん……突然……だよな、突然色々……」


「……違う…………」


 愛藍は泣いていた。


「違うぅぅぅぅ~。……なんか、もう……、こうさんがこんなに私のこと……。もう、いっぱい……。倒れそう」


「おいおい……、またか?w」


 愛藍は、晃太郎に抱きついて呼吸を整えようとしていた。そして、晃太朗を見上げながら


「……えっっ、お父さんって、もしかして…………、生きてるの?」


「……うん、……………………見つけた」


「ホント?」


「うん、結構大変だった。ってか、これが一番大変だったなぁ……」


 そう言って晃太郎は追加で婚姻届を出した。


「愛藍のお父さんのこと、少し前にね、冴木さんに相談したんだよ。で、愛藍の伯母さんが知ってるんじゃないか? って聞いて取り次いでもらって。で、伯母さんのとこ行って、色々聞いて調べて探した……。で、見つかった」


「……見つかった?」


「うん。見つかって……通訳連れて、ドイツまで行ってきた!」


「……噓でしょ!?」


「ううん、本当。……ごめんな、俺が先に逢っちゃって」


 晃太郎は、愛藍の“お父さん”が証人欄に記入した婚姻届を出して手に取って愛藍に見せながら、こう話を続けた。


「伯母さんに聞いたんだけど、愛藍のお父さん、愛藍のこと……知らなかったんだよ。お母さんたちね、お父さんの家のほうに反対されてたらしくて駆け落ち同然だったらしい。でも、色々あって別れちゃったんだって。で、その後、お父さんはドイツに戻って。で、愛藍のお母さんは、別れて少ししてから愛藍がお腹にいることが分かったんだって。でも、お父さんには知らせないで独りで産んだんだって。って事情を通訳入れてもらって、今の話、全部お父さんに伝えたら………………」


「伝えたら?」


「……泣いてた」


「…………」


「で…………、……愛藍と結婚したいって伝えたら…………」


「……伝えたら? ……何て?」


「…………めちゃくちゃ祝福されてさぁ、まだ正式なプロポーズもしてない! って言ってんのに知り合い片っ端から招集かけてパーティー開き出してさぁ、通訳と二人でめちゃくちゃ酒飲まされて……度数高いショットとかビールとか、料理にケーキに……っていっぱい御馳走になって大変だった。ショットが本当やばかったぁーーw」


「フフフw えーーーーっ、お父さん、どんな感じだった?」


「うん、顔見たいだろうと思って撮ってきたよ」


「見たぁーい!」

 

 愛藍が父親の動画や画像を見ている間にも晃太郎は話し続けた。


「お父さんにも同じこと聞かれてさ。日本の土産と一緒に愛藍のアルバムとかMVとか冴木さんに揃えてもらって全部持っていって渡してきたよ。俺が個人的に持ってたスマホの画像や動画とかも見て凄く喜んでたよ。…………でね、お父さんね、愛藍が……もし逢ってくれるなら、日本に来たいって」


「………………こうさん、ヤバい!」


「ん? どした?」


「…………決壊しそう!」


「おおっ、じゃぁ、受け止めるっ! さぁ、来いっ!」


 愛藍が号泣した。晃太郎は両手を広げて抱きついてきた愛藍を優しく抱きしめた。そして、追加でこんなことも伝えた。


「あっ、あと……、決壊ついでに……。冴木さんが言ってたAlessaの新しい里親って、俺だから!」


「………………ああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーっ、…………ヤバぁーーい……」


「氾濫する? w」


「…………もうしてるぅぅぅぅぅぅ、さっきので堤防も壊れてるぅぅぅぅぅぅ……」


「ハハハ! あー、でもな、Alessaが俺のところにたどり着いたのは、冴木さんの機転のお陰だからな。それが無かったら……」


 晃太郎はそう説明し、愛藍を抱きしめながら背中をさすって、愛藍が落ち着くのを待った。そして、『婚姻届』に愛藍が記入と捺印を済ませた。2人で区役所に行き、念のため、確実に受理されることを優先し、全ての婚姻届を持参した。



    2 大切な“雄子むすこ



 無事に提出が済み、2人は晴れて戸籍上、正式な夫婦となった。その足で直ぐに晃太郎の自宅へ一緒に帰ることにした2人。たかが数十分の事務的な処理ではあったが、婚姻届が受理されたというだけで晃太郎との関係を阻む障害から身を守れたような気持ちになっていた愛藍は踏ん切りがついたのか、顔を隠すのをやめてしまった。


「ねぇ、こうさん…………」


「ん?」


「………………手……繋ぎたい……かも…………」


「おっ! 繋ぐか?」


「うん! …………記念日が2日続きになっちゃったね!」


「再会の日と入籍かぁ」


「うん。今日の入籍の4月4日って覚えやすいね! よしよしヾ(・ω・`) 良き良きっ♡」


「うん、よしよしヾ(・ω・`) 外で手繋いだのも初めてだな」


「うん、じゃ、それも記念日の項目内容に。えーー、なんか、もう夢みたい。すっっっごく幸せ!」


「…………俺も!」


 一世一代の大勝負を果たした晃太郎と夢見心地で歩く愛藍だった。タクシー乗り場に着いて、2人は順に乗り込んだ。車内で時折『姫居愛藍♪ 姫居Alessa♪ 愛藍は、新妻・人妻・既婚♪』と浮かれながら晃太朗の耳元で歌うように呟いてご機嫌だった。愛藍の手を握り、晃太郎も愛藍に付き合って『姫居愛藍♪ 姫居Alessa♪ 愛藍は、にいふの俺の妻w はい!』と返し、愛藍が昨夜言い間違えた“新夫”を間に差し込んでからかった。愛藍が悔しくて頬を膨らませながら晃太朗の頬を軽くつねった。見つめ合って二人仲睦まじくしていると、タクシーの運転手が二人に気付いて話しかけてきた。


「楽しそうですね~!」


「……あっ、すみません」

 

「いやいや、全然。何か凄く幸せそうだなぁと思いまして! やっぱり、お二人さん……お付き合い続けられてたんですね~。なぁ~んか、週刊誌って、本当よく分からんないもんですね~。いやぁ~、安心した! あのー、後で、サイン……とか……もらえないでしょうか? 娘がいるんですけどね、Ailaさんの大ファンで。もう娘の車なんか愛藍さんの曲しか流れないんですわ」


「えー、嬉しいです! ありがとうございます」

 

「あのー、区役所……って…………、もしかしたら、もしか……しますか?」

 

「…………(二人で目を合わせてニヤニヤし、愛藍が)……秘密ですw」


 2人は再度、顔を見合わせて微笑んだ。


 晃太郎の自宅付近に到着した。愛藍は、たまたま持っていたグッズにサインをして運転手に渡した。運転手が『カミさんがサスペンス大好きでして……』とチャッカリ晃太朗のサインまで頼み込んできた。そして、サインと運賃の支払いを済ませて、二人は部屋に向かった。愛藍は、歩きながら時々は晃太郎を見てはにかみながら、逸る気持ちを抑えていた。ドアの前まで到着。留守番してくれていたEMMAとその彼氏がリビングのドアを開けて出迎えた。そして、勢い良く部屋の奥から飛び出して駆け寄ってきたのは……


――離れ離れになっていたAlessaだった。――


 愛藍のAlessaとの再会にEMMAも号泣。晃太郎も目を潤ませた。そして、相変わらずAlessaの上手く尻尾を振れないお尻を見てほっこりした。

 少しすると訪問者が。弁護士と冴木の登場であった。愛藍と引き離されたことはもちろん、契約内容や過密スケジュール等を含めて愛藍の事務所社長・大野と全面的に争うための作戦会議だった。

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