第15章『ダンスは続くよ、どこまでも……』
第15章『ダンスは続くよ、どこまでも……』
1 Aila・降臨!
ショー当日。桜が咲き誇る4月3日。ツアーを延期してしまったお詫びと愛藍の体調回復のアピールが目的でオファーを引き受け開催の運びとなったディナーショーのチケットはソールドアウトし、満員御礼となった。前年にドラマ出演をしたことや晃太郎との熱愛と突然の破局報道、そして今回の体調不良の流れも影響してか、訪れた客の年齢層も幅広かった。好調に席への案内がスタートし、ディナータイムに差し掛かった頃、照明が切り替わって薄暗くなった。会場客は、愛藍が登場すると確信した様子で急にソワソワし始めた。演奏が始まると、待ちわびていた客が拍手で愛藍を迎え出した。愛藍は、散々なトラブル続きであったにもかかわらず自分のことを温かく迎えてくれるファンの拍手が嬉しかった。EMMAを含めダンサーたちもコーラスやパーカッションなどで参加し、順調にこなしていく。最後の曲の衣装チェンジのためにダンサーたちと一度ステージを去る。
実は、このショーのオファーがあった時に『当日のコンディションによって、1~2曲くらいミドルかアップを後半で入れたいかな』という愛藍の希望があったので、楽屋では再びバラードにいくのか、それともラストで踊るのか? という選択が迫られた。愛藍は……
「こっち(の衣装)で。ラストお願いします!」
と言ってダンスを魅せる選択をした。急いで着替えを済ませて、愛藍はEMMAたちと円陣を組んで掛け声をして再びステージへと向かった。
――最後を飾った1曲は、晃太郎とのW主演ドラマ主題歌であった――
会場客は、やはり1曲くらい見せてくれるのでは? という期待と大好評だった晃太郎とのドラマ主題歌だったこともあり、それをラストに持ってくるという選択に『キターー♪ やっぱり!』とイントロで声を漏らす人もいた。授賞式の放送での様子で愛藍にとって思い入れのある主題歌なのだと感じて、感極まって泣いている熱烈なファンもいた。歌い終わると同時に観客は、愛藍を含め、ステージの全員にスタンディングオベーションを送ってくれた。こうして一夜限りのディナーショーは大成功で幕を閉じた。
ショーが終了して、愛藍は仲間たちと一緒に楽屋へ戻った。改めて、大河内と挨拶をした。
「ステージ、大変お疲れ様でした。ドレスアップでバラードももちろんのことですが、ダンス、本当に素晴らしいですね。本日は誠にありがとうございます。いやー、大盛況で御座いました! 宣伝までして戴いて。愛藍さんが本日お泊りになられるスイート、ファンの方から早速、御予約が数件御座いました! 凄い効果ですね」
「えー、そうなんですか? すごーい!!!」
「……本日、皆様に専用打ち上げ会場を御用意させて戴きましたので御準備が整いましたら、どうぞお越しくださいませ。それでは、また後程お逢いできますことを楽しみにしております」
と伝えて大河内は準備に加わるため、楽屋を後にした。愛藍は、シャワーが済むと、担当が代わる代わるやって来てクイックでフェイシャル、スタイリストによるドレスアップ、メイクアップアーティストからメイクとヘアーのセットを施されていった。
「スイート満喫しながらゆっくり休もうと思ってたのに。またメイクやドレスアップさせられちゃうなんて。しかも、ただの打ち上げなのにこんなミニドレスかわい過ぎなんですけど! どこのブランド?」
とスタイリストたちに質問を投げかけた。スタイリストやEMMAたちは
「え? これ? これは~、ブランドは……そりゃ~、一流ホテルだから…………ねぇ……」
「そうそう! 一流だから、ねぇw」
「えぇ、一流ですものw ねぇww そりゃぁ、失礼の無いように、ねぇw EMMA」
「そうざます、そうざます、一流ざますのよw 一流w さぁ、一流の皆さぁ~ん、一流の打ち上げ会場に一流が参りますわよ~」
「愛藍w ほら早く早くww」
「さぁ、早く! わたくし達もw 参りますわよーー!」
と言い、全てを話さずに誤魔化して愛藍を誘った。EMMAは、まさか愛藍に着せたドレスが『ウェディングドレスだ! なんて言えるかっつーのw』と心の中で叫んでいた。愛藍が着せられたドレスは、花柄・レーシーピンク・姫系・ミモレ丈・前短後長デザインの本格的なウェディングドレスであった。
2 デジャブ?
支度が整ったところで招待されている会場に行くと……
――♡ April 3.Closed for Aila's party tonight ♡――
「うわー! 何このウェルカムボード! お花もバルーンもいっぱい、可愛いー! 愛藍のぱーりぃになってるし、ハートも付いてるよぉ~♡」
と感激しながらスタッフに荷物を預けて入っていくと、……そこには、かつて共演した俳優仲間や黒川監督・スタッフ数人も集結していて、既に歓談・食事・ミニオーケストラの演奏会が繰り広げられていた。愛藍は胸が熱くなった。EMMAが、
「ドラマチームのメンバーさん、全員じゃないけど、ショーから来てくれてる人もいるって。元気な姿見せられて良かったね。さて、少し栄養補給しよっか!」
と言って、フォークを2つ手に取り、1つ愛藍に手渡し、あの日の愛藍を真似て、軽くフォークを上げた。愛藍はEMMAの気遣いに“ありがとう”と言って2人で“Fu――――!”をして笑った。他のダンサーも直ぐに駆けつけてフォークを持ち、円陣を作って盛り上がった。EMMAは料理担当に『Ailaの好みは柔らかくて食べやすいものなんで』とお願いしていたため、愛藍の食も進んだ。皆で料理を口にしたり、BGMに合わせてリズムをとったり、共演した仲間や監督たちとも話をしていると、演奏がUnchained Melodyに切り替わった。すると、黒川が笑いながら愛藍に
「おっと、これは、俺と踊れってことだな。愛藍!」
と言って誘い、ダンスをすることに……。
「受賞から4ヶ月も経っちゃったけど、女優賞おめでとうなっ!」
「監督のおかげです! ドラマ出られて本当に良かったです。凄く勉強になりました。打ち上げで監督が“ファーストダンス”って言った時『あぁ、やっぱ凄いなぁ!』って。脚本にないところにも演出の世界感とかスケールとか常に持っていて、そうやって皆でドラマ作ってるんだなぁって。あと、私が皆さんとなじめてるか? ってこともずっと見守ってくださっていたことも……」
「だろっ、監督だからね、俺。…………そうそう、今日、最初の顔合わせから丸一年だって覚えてるか?w」
と怪しげに問うと、直ぐに黒川がこう言う。
「……よし、じゃぁ、そろそろ行きましょうか! 愛美さんw」
と以前のドラマの役名で愛藍を呼び、左腕を曲げて目くばせで自分の腕に手を添えるよう促した。そして、愛藍は奥へ連れていかれるがままに進んで行くと……
……そこには、…………タキシード姿の晃太郎が待ち構えていた。




