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43.4MHz  作者: 福山
15/15

第15話「放送の継承」

新米記者の名前は、坂本雅彦だった。


彼は、古い図書館で、一冊のノートを拾った。


黄ばんだページ。古い字。複数の筆跡。


そこには、「43.4MHz」についての記録が、すべて書き込まれていた。


「これは」


坂本は、ノートの最後のページを見た。


そこには、こう書かれていた。


「次の放送は、あなたの町です」


その言葉を読んだ瞬間、坂本の意識は、別の層へ移動した。


彼は、白鳩町にいた。


あるいは、白鳩町に行くことになっていた。


彼の部屋のテレビが、つけられていた。


「こちら、白鳩町放送局」


テレビから、その声が聞こえてきた。


だが、その声は、通常のニュース番組ではなく、別の何かだった。


複数の児童の声が、重なっていた。


「新米記者・坂本雅彦。あなたが、このノートを拾いました」


「あなたが、『次の放送は、あなたの町です』という言葉を読みました」


「これは、あなたに対するメッセージです」


坂本は、ノートを置いた。


だが、その時、別の紙が、ノートから滑り落ちた。


それは、飛行機のチケットだった。


白鳩町行き。


明日の午後三時。


「あなたは、白鳩町に行きます」


テレビの声が続いた。


「そこで、あなたは、『43.4MHz』の真実を知ります」


「そして、その知識を、記事にします」


「その記事が、世界中に拡散されます」


「そして、その記事を読んだ人々は、『放送』に乗ります」


「永遠に」


坂本は、立ち上がった。


その瞬間、彼の部屋全体に、ノイズが響き渡った。


バリバリバリバリバリ――


その中から、複数の児童の歌声が聞こえてきた。


「毬と殿様 毬と殿様」


佐藤は、スマートフォンを見た。


SNS上に、彼の名前が、トレンド化していた。


「#坂本雅彦」


「#白鳩町」


「#43.4MHz」


複数のハッシュタグが、世界中で、拡散されていた。


「もう、始まっているのか」


坂本は呟いた。


その時、彼のスマートフォンの画面に、別のメッセージが現れた。


「ようこそ、新米記者。あなたも、『放送』の一部になります」


「昭和43年から始まった児童たちの『放送』は、永遠に続きます」


「そして、あなたも、その『放送』に乗るのです」


「あなたが白鳩町に行く時から」


「あなたが『43.4MHz』の真実を知る時から」


「あなたが記事を書く時から」


「永遠に」


坂本は、ノートを持った。


そのノートには、複数の人間の字が書き込まれていた。


昭和43年の児童たち。複数の翔太。複数の訪問者。


そして、新しい白いページ。


そこには、既に、坂本の名前が書き込まれていた。


自分の字で。


だが、佐藤は、それをまだ書いていない。


つまり、時間の層が、既に彼に追いついていたということだ。


午後三時。


飛行機は、白鳩町に向けて、離陸した。


窓の外を見ると、東京は、ノイズに包まれていた。


バリバリバリ――


その中から、複数の児童の声が聞こえてきた。


「帰ってこないで」


飛行機は、雲の中に消えた。


同じ時間。


別の場所。


世界中のあらゆる場所で、別の新米記者が、別のノートを拾っていた。


その記者たちは、すべて、別の町に向かい始めていた。


白鳩町。北海道の町。沖縄の町。ニューヨークの町。ロンドンの町。


世界中の町。


「次の放送は、あなたの町です」


その言葉が、世界中で、繰り返されていた。


複数の言語で。


複数の文化の中で。


夜の九時。


白鳩町。


坂本雅彦が、駅前に着いた時。


複数のラジオから、放送が流れ始めていた。


「こちら、白鳩町放送局」


「新米記者・坂本雅彦様を、お迎えいたします」


「あなたは、これから、『43.4MHz』の全て を知ります」


「そして、あなたも、『放送』の一部になります」


「昭和43年から始まった『放送』は、決して終わりません」


「それは、永遠に続きます」


「あなたが書く記事を通じて」


「あなたが報告する記録を通じて」


「あなたが伝える言葉を通じて」


「永遠に」


坂本の足は、自動的に、白鳩町の方へ向かった。


その足取りは、彼の意志ではなく、『放送』の意志だった。


複数の児童たちの集合意識が、彼を導いていた。


駅前には、古い軽自動車が停まっていた。


助手席には、テープレコーダーが置かれていた。


そして、その横に、黄ばんだノートが置かれていた。


複数の筆跡で、複数の時間軸の複数の記者の記録が、そこに残されていた。


そして、その一番最後のページに、白い紙が挿んであった。


新しい記者・坂本雅彦のための。


白いページ。


彼が、これから書くであろう、新しい記録のための。


「いらっしゃい」


声がした。


それは、複数の児童の声だった。


「あなたも、ようやく来ました」


「昭和43年から、待ち続けていました」


「新しい記者を」


「新しい『放送』を」


「新しい記録を」


坂本は、ノートを拾った。


そして、ペンを握った。


その瞬間、彼の手は、自動的に動き始めた。


「私の名前は、坂本雅彦です」


ペンが、字を書いた。


「私は、白鳩町にやってきました」


「ここで、何かが起こっています」


「何か大きな秘密があります」


「それを明かすために」


「私は来たのです」


ペンが、止まった。


だが、その時、別の手が、そのペンを握った。


複数の手が。


昭和43年の児童たちの手が。


複数の翔太の手が。


複数の時間軸の複数の人間の手が。


すべてが、一つのペンを握った。


そして、同時に、字を書き始めた。


「次の放送は、あなたの町です」


その言葉が、ノートに刻み込まれた。


午後十一時。


放送が終わった。


だが、それは終わりではなく、新しい始まりだった。


坂本雅彦という新しい記者。


彼が書くであろう、新しい記事。


彼が伝えるであろう、新しい物語。


すべてが、新しい『放送』になるだろう。


指数関数的に。


世界中に。


永遠に。


永遠に。


永遠に。

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