出会い
あらすじをご確認くださいませ…
5人の兄がいる私はそれはもう絵に描いたようなお転婆で、屋敷の下男にまで拳骨付きで怒られるような女児だった。
兄達と生傷を作りながらもそれなりに乙女な部分もあった私は、毎晩お母様にお姫様が幸せになるお話を読んでとせがんでいた。
その乙女部分は子供を6人も産んだとは思えない見た目儚げ美人のお母様の影響かもしれない。
お父様とのラブラブを惜しげもなく日常に組み込み、とても幸せそうなお母様は、私達子供から見ても可愛らしい。
そして私達を毎日抱きしめてキスをしては「あなた達のお父様は私の王子様なのよ」と幸せをふりまくのだ。お父様は私とすぐ上の兄二人を一緒に抱っこできる力持ちで、休日にはいつも私達が疲れるまで遊んでくれるので大好きだ。
そのせいもあるのか、「王子様」という単語に過剰に夢を持った私は、お父様ではない王子様に会える事にかなり舞い上がった。
第一王子のジークフリード様に初めて会った理由は、お母様が王妃様のお茶会に呼ばれたからだったと思う。兄達に比べまだ大人しかった5歳の私だけを連れていってくれたので、さらに気分は舞い上がった。瞳の色に合わせて作られた藍色のドレスがとても可愛い仕上がりで、「今日もなんて可愛いの〜!」とお母様をメロメロにしたのもさらに私を舞い上がらせた。
そして目の前に現れた第一王子が、私くらい背が小さかったのには少しだけ拍子抜けしたが、絵本で想像していたよりも金髪はキラキラと輝き、晴れた夏の青空のような瞳が美しかった。
お母様やお父様の他にこんなに麗しい人間がいたとは。もちろん王妃様も美人で、この日私の美の基準は爆上がり。
王子に見とれていた私はお母様にそっと肩に手を置かれ、そこでやっと挨拶を思い出した。
「○○伯爵の娘のコンスタンスと申します」
スカートをつまみ、お母様と猛練習した礼をする。お兄様達や使用人達からは拍手喝采、そしてお父様の腰を砕いた自信の礼だ。
それに対して王子様はふわりと微笑み、私はその笑顔にまた魅入ってしまった。
「瑠璃蛙みたいだ」
瑠璃蛙とは瑠璃色の体液が背でキラキラと艶めく、素手で触ると手がただれてしまう蛙である。
毒蛙じゃねぇか。
渾身の我が身を毒蛙に例えられた私の怒りはあっさりと沸点を越え、王子に向かって罵詈雑言、それに対して王子も負けじと辛辣な返し。たぶん私からだとは思うが取っ組み合いの大喧嘩。
5歳同士とはいえ、服は汚れて破れて、顔にも擦り傷ができた。
出会って1分後のまさかの殴り合いに大人達の理解は追い付かなかったのだろう、王子の頭突きで鼻血を出した私が後方に倒れかけながらもつま先で王子の顎を蹴り上げたところで王妃様が叫んでやっと近衛が止めに入った。
王妃様は卒倒しかけたが、お母様はいつもの事と慌てていなかった。が、手当ての際に「ドレス姿の時は暴れない約束だったでしょう?」とほんわりとお説教され、約束を破ってしまった事に凹んだ。お気に入りのドレスの無惨な状態にその日初めて少しだけ泣いた。
結局お茶も飲まずに帰った私達を出迎えたお兄様達は爆笑し、使用人達は悲鳴を上げ、お父様は気絶。
その後、王家とどういうやり取りがあったのか、私はジークフリード王子の婚約者候補になった。
解せぬ。