第5話 守れたもの
気がつくとまた精神世界に来ていた。
「えーと、どうして俺はまたここにいるんだ?……おーいルナ?」
「はーい、何ですか?まったく、私が恋しいんですね相真君」
ルナの姿が見えないので呼んでみると、悪戯っぽく微笑むルナがすぐに何処からともなく現れる。
「ようルナ。早速だけど何でまた俺はここにいるんだ?」
「それは相真君の魂が精神世界に呼べるくらいには回復したので私が引き込みました」
「またかよ……」
曇りのない笑顔で微笑むルナに俺は苦笑する。
「ま、それはそうと色々聞きたい事があるんだけど良いか?」
「良いですよ。何でも聞いて下さい」
「あの時は混乱してたから色々とスルーしてたけど、まずお前は何者なんだ?」
「私ですか?私は普通の美少女ですよ」
自分で言うのか……。そもそもお前のどこが普通なんだよ。
「まぁ正直に言うと私は幽霊みたいなものですかね。現実の肉体を失った魂だけの存在です」
「幽霊ねぇ」
「あ、でも死んではいませんよ。お化けとかじゃないので怖がらないで下さいね」
「別に怖がらないよ。じゃあ次、能力って結局なんだ?」
言われるがままにしていたが、使えば強くなる事くらいしか分かっていない。能力が一体なんなのか質問してみる。
「そうですね、まず能力とは魔力という科学的には計測出来ない超自然的な物質を基にして引き起こす事が出来る特殊な力の事です。それで相真君の能力《魔王継承》は先代魔王の力が使えるという能力です」
「えーと、情報量が多過ぎて付いていけないんだけど……」
ルナが冷静に説明してくれるが、理解出来ない事が多過ぎて俺は困惑を隠しきれない。
(とりあえず一般常識が通用する話ではないって事だけは分かった)
「じゃあ順番に説明していきますね。まずこの世界には魔力という超自然的で科学的に計測不可能な物質が存在します。その魔力を利用した魔術などもありますが、それは後々説明します」
魔力や魔術なんてものが本当に存在する事に心躍るが、その気持ちを一旦落ち着かせルナの話を聞く。
「その魔力という物質を利用して科学的には絶対にあり得ない様な現象を引き起こす事が出来る力が能力です。因みに能力で引き起こす現象を魔法と言い、魔術以上に非科学的です」
「なるほど。つまり超能力とかそういうモノって認識で良いのか?」
「まぁ、簡単に言うとそうですね。それで相真君の能力《魔王継承》ですが、先代魔王の魂を相真君の魂とリンクさせて身体能力や精神力を強化するっていう能力です」
「魔王?そんなRPGのラスボスみたいな奴までいるのか?」
「あぁ魔王と言ってもこの能力を創り出した人のことですから、相真君が思っている様なのとは違いますよ」
どうやら魔王ってのは漫画とかゲームでよくある魔族の王とかでは無いらしい。
「うっ! なん……だ!?」
ルナによる説明を聞いていると、急に意識が無くなる様な睡魔に近い感覚が襲って来る。
「どうやら相真君の意識が完全に戻るようです。まぁ話す事は大体話したので大丈夫でしょう。ではまた現実世界で」
いつも通りの微笑のルナがどことなく安心した様な口調でそう言ったのが最後に聞こえた……。
目が覚めたら俺は病室のベッドの上だった。窓から差し込む眩しいくらいの光と病院独特の匂いが意識が覚醒させていく。
「ああ! 痛ってぇ!」
身体を起こそうとした途端、激痛が全身を駆け巡る。
『あら、お目覚めですか相真君』
「くぅ……なんだ!? 全身痛い」
『ああ、それは能力を使った反動ですね。相真君の身体が能力に耐えられなかったようです』
俺が痛み苦しんでいるとルナが『念話』で脳内に直接語り掛けてくる。
(つうか人が痛がってるのに冷静に説明するなよ)
『まあまあ、そんなに怒らないで下さいよ〜』
「しれっと心を読むなよ」
俺が恨めしそうにそう言うが、ルナはあっけらかんと俺の思っている事を読む。
ルナとそんな風に話していると、トントンと扉をノックする音が聞こえてくる。
「相真、入るわよ。ってあんた起きてたのね」
「よう相真君。お見舞いに来たぞー」
結梨と朱音がそんな事を言いながら病室に入ってくる。てかお見舞いならもっと静かにしろよ。
「おう、2人共。久しぶりー」
「久しぶりーじゃないわよ。あんた寝すぎなのよ」
俺が軽く挨拶をすると、結梨はジト目で呆れた様にそう返す。
「それは死にかけた人間言うセリフじゃなくね?」
「まあまあ結梨は相真君が心配だったんだよ」
「ほほう、そりゃ嬉しいねー」
「はぁ? そんな訳ないでしょ!」
俺と朱音で結梨をおちょくるいつも通りの会話。久しぶりの2人との会話で若干テンションが上がってしまっている。
「まったくあんた……死んだと思ったわよ」
「……悪かったよ」
結梨がいつもでは絶対に見せない本気の怒りの表情を浮かべながら俺は睨む。しかしその瞳には悲しみの感情が見て取れた。
「朱音もすまなかったな」
「ま、あんまり無茶すんなって話だよ相真君」
苦笑を浮かべながら、いつも通りの飄々とした態度でそう話す。だがどことなく安心した様な口調をしている。
(随分と心配かけたらしいな)
その後、俺達はいつもと変わらない様な話で笑いあった。
この2人の笑顔を見れただけで、命を張った甲斐があるというものだ。
「じゃあ私達はそろそろ帰るわね」
「またなー相真君」
「おう、またな」
1時間ほど話した2人はそう言って病室を後にする。
『良い友人を持ちましたね相真君』
「ああ我ながらそう思うよ」
自分にもこんな幼馴染がいたらいいのになぁ(´・ω・`)
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