【第一章】第十部分
いつもの通り、遅刻取締りをやっている生徒会長憂果莉の姿が見えた。
今日の凪河はひとりなので、登校時間としては十分過ぎる早さで、他の生徒は見当たらない。
『ずかずかずか。』道路の砂埃を巻き上げて、まるでオーラに覆われたようになっている。凪河はそのまま、憂果莉のところに近づいた。
憂果莉は一瞬、はっとした顔を見せたが、即座にいつもの能面に戻した。
「会長、昨日、ゾウさん公園にいたわよね。ネタは上がってるんだからねっ。」
「いったい何のことです?公園は通学路ですから、通行はしましたが。猫柳さんは何かを見たのです?」
「何、すっとぼけブリッコしてるのよ、生徒会長のくせに。昨日、変な格好をして公園にいたじゃない!」
「変な格好とはどんなモノです?」
「変な格好は、変な格好よ。こう、なんというか、ハレンチノというか、パンツが透けて見えるスカートを恥ずかし気もなく穿いてるっていうか。要はパ、パンツ露出狂と断定するわ、生徒会長!」
「パンツ露出狂!?」
憂果莉の顔色が青ざめた。憂果莉は左右に首を振って、他に人影がないことを確認した。
「わかりましたです。今日、放課後、その公園に来てくださいです。」
「えっ。放課後?今すぐじゃダメなの?」
「ヒミツを知りたいなら、こんな公の場ではムリです。」
凪河が周りを見ると、登校する生徒たちが見えてきた。
「わかったわ。会長のあられもない正体をガン見してあげるから覚悟しなさいよ!
「あられもない、・・・。ぽっ。」
憂果莉の頬に赤みが差して、凪河はちょっとイヤな予感がして、校舎へ走っていった。