【第一章】第二十三部分
(そんなに慌てる必要はないぞ。ここには人がほとんどいないからのう。)
「ほ、ほんとだ。よかったわ。アタシの下着姿なんて、どれだけ市場価値があることか。もったいないことをしてしまうところだったわ。」
『じーっ。』
少し離れたところからの視線を感じる凪河。
到底あられもない姿を見られる距離ではない。爽やかな笑顔、田中だった。
「夕方からボランティア慰労会をやるけど。この暑い中で頑張ってる皆さんに、ささやかながら食事でも思ってるんだけど、どうかな。」
「ちょっと、オジサン、アタシをナンパしようっていうなら、30年遅いわよ。」
ぷいと背中を向けた凪河。
「ははは。冗談うまいなあ。ナンパじゃないよ。ちゃんとジュースも容易するし、全部で10人ぐらいのささやかなパーティーだから心配ないよ、見返り美人のお嬢様。」
「お嬢様⁉しかも美人とか。キュン!」
たった一言で、凪河のベクトルが決定した。お嬢様と呼ばれたのは生まれて初めてであった。美人という修飾語も加わって、堕ちてしまった凪河。夕方の慰労会に参加するとなった。
凪河は人形に質問する。
「今日、アタシここに泊まることになるの?」
(大丈夫じゃ。スケパンデカの能力でテントとか可能じゃ。その時になったらやってみればよい。)
こうして夕日の沈む時間となった。どこからともなくジャージや作業服姿の若い男女が集まっている。いずれも服には土が着き、顔は日焼けしている。
場所は公民館の庭。公民館から長い机を3つ出して、そこにオードブルと乾きもの、アルコール、ジュースなどのドリンクが並べられている。
田中が缶ビール片手に、全員の前に立った。
「みなさん、お暑い中、お疲れ様です。ボランティア活動はみなさんの誠意で順調に進んでいます。これからも地域のために、一致団結して頑張りましょう。今日から参加した女の子はまだ来てませんが、まもなく来ると思います。さあ、始めましょう。」
「「「「「「「「「「「「「かんぱ~い。」」」」」」」」」」」」
公民館の庭は、盛り上がっている。1日の疲れが大きい方が宴会はヒートアップするものである。
凪河は、近くの林に隠れて慰労会の様子を見ていた。




