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【第一章】第二十一部分

(次のターゲットは、こういう男じゃ。)

別の日に、人形から送られてきたパンツ交信の内容は以下の通りであった。

【「あんたねえ、こんなところにやってきても何もできないよ。そもそも誰も住んでない家が壊れたんだから。たしかに、家が崩れたりしたら、通行人に被害が出るかもしれないけど。」

頬かむりオバサンが、麦藁帽子の中年男性に声をかけた。

土砂崩れで被災した古い無人の木造家屋にひとりで入り、ショベルで汚泥を片付けている男性。彼は数日間、ひとりでひたすら復旧活動に勤しんでいた。

ここはまた別の被災地。台風による暴風と大雨に見舞われた地方である。

「あのひとはスゴい。感心するよ、いや尊敬するよ。ボランティアの域を超えてるよ。」

周りから賞賛の嵐。被災地で自分のことで精一杯な人たち。それは無理からぬこと。自分の家が床上浸水で、二階に住みながら片付け、掃除に明け暮れる人。家を流され、エアコンのない仮設住宅に住んでいる人たち。もう6月で暑くなっている。今を生きるのがやっとの状態。

そんな中で、麦藁帽子に白い半袖シャツで、被災した家の掃除、片付けをやっている男性、田中太郎。額に流れ出る汗を拭いもせず、作業に没頭している。

石に躓いて膝から流れる血をものともせず、手を休めることもない。

「田中さんのあんな姿を見ると、自分のことだけで他人のことには手が回らないと思っている自分が恥ずかしい。」

田中の献身的な活動に感銘して、自分の身を振り返る人がだんだんと出てきて、この地域のボランティアの数は日毎に増えてきていた。

知らず知らずのうちに手伝ってしまうのである。そんな魔法のようなことが田中の周辺

では起こっていた。

五十歳の田中は、こうして全国の被災地を回っていた。田中のひたむきな姿勢は、行く先々で、地域の人に感銘を与え、普段ボランティア活動に無縁な人間を巻き込んで、復旧を大きく前進させていた。

田中は、恵まれないひとに対しての募金活動など、愛の手を入れることにも余念がなかった。そんな活動が評価されて、国の褒章候補にもなったが、田中はそれを辞退した。自分のことには欲がなかった。】

パンツ交信を聴いて、凪河は眉間にシワを寄せて、クレームのように話した。

「こんなの、どこから見ても善しかないじゃない。絵に描いたような献身的ボランティアの人じゃない。どこに真の悪が存在するのよ?」

(アウトかセーフなのか、パンツの力で見極めてみるんじゃな。)


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