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名前を付けた記憶

 こんばんは、第7話目です。


 今回は狼達に名前が付きます。なお、ネーミングセンスは無い模様。


 最後の最後で猫主に悲劇が……。

 てっこてっこ、と5匹が団子になりながら歩く。って、気付けばおまえも付いて来てんのかよ。


 首傾げんな。目ぇ輝かすな、尻尾振んな。体を低く構えてんじゃねぇよ、遊ばねぇからな。おい、遊ばねぇって言ってんだろ、ちょ、ま、おぐ!? 聞きやがれアホ狼ぃぃぃぃ!!


 ……3匹がかりでやっと引き離された。凄え力強ぇよ、あいつ。何なの、脳味噌全部筋肉なんじゃねぇの? 飛びかかって来た時、前足が喉元にグエッて来たぞ。グエッって。ふざけんな、後で泣かす!

 ……って思ったけど、あいつなら逆に喜びそうな気がしてきた。


 知◯袋で聞きたい。「脳味噌筋肉なアホを泣かせる場合、どうしたら良いですか?」って。優良回答者には500コイン払うから。


「きゅう(ねぇ、くろいの)」

「んみ?(ん、なに?)」

「ふきゅぅ、きゃう(さっきから、しっぽがはーとになってるわよ)」


 ズバッ! と振り向く。

 マジかよぉぉぉぉ……。地面に前足べしべし叩き付けて悶える。……おい、真似するなそこのアホ。

 はぁ、逆に冷静になったわー。


「きゅん(……どんまい)」


 その優しさが痛いっ!?

 3匹から生暖かい視線を感じる。1匹? 分かってる訳ねーじゃん。


「グルルル(随分と仲良くなったみたいだね)」

「わふ(かあさん)」

「きゅう、くぅん。きゃふ(かあさん、あのね、おねがいがあるのー)」

「きゅん(……みんなでおねがい)」

「きゃうー(おなかすいたー)」


 おい、頼むから最後のやつ黙ってろ。地味に文章繋げてんじゃねぇよ。『お願い=ご飯』になるだろうがよ。そうじゃねぇよ!?


「みゃう(『ちび』たちもみんな、なまえほしいって)」

「グルゥ?(そうなのかい?)」

「きゃぅん(あたしもじぶんのなまえほしい)」

「ぐぅ(おれも。いまのだとわかりづらいよ)」

「きゅふぅ(……みんなでおそろいにするの)」

「わふ(しらない)」


 おい、だから最後。とりあえず口塞ぐか、と思ったら幼女狼が枝投げたわ。

 おぉ、見事に追いかけて行ったな。グッジョブ。そのまま遊んでろ。


「みゅ。にぃあ(よびにくいから、ぜんいんにちがうなまえつけて)」

「ウフ(そうだねぇ)」


 まさか、嫌とは言わないよな? 子供達からのお願いだぞ。


「ウォフッ、ガウ(よし、黒いの。お前が付けておやり)」


 ちょ、えぇぇぇぇ。

 何 で お れ が !? 自分で付ければ良いじゃねぇかよ!


「ウォゥ、ウォン(あたしはチビで良いと思ってたからね。言い出したのは黒いのだろう)」


 逃げやがった。チクショウ、汚ねえぞ……。

 うわ、周り見れば子狼達が目ん玉キラキラさせながら凄い期待してるし。尻尾の振りも半端ない。うぐぐ……逃げ道ないな、コレ。


「みゃう(わかった)」

「「「!!」」」

「んに、みぁぅ(ただし、もんくつけるなよ)」

「わふっ!(おれ、くろいのとおなじかんじにしたい!)」


 おん?


「ふきゅ(……おそろいがいい)」

「ぅー、きゃふ(もうちょっとかわいいのがいいんだけどなー。まぁ、しかたないわね)」


 おぉん? マジで??

 そうすると、ぶっちゃけ『色』になるんだが。良いのかな。まぁ、とりあえず言ってみるか。えーと……誰から行くか、と思ったけどココはやっぱりコイツからだよな。


「みゅぅ、み(おまえは、『ちゃいろ』な)」

「きゅ(……おれ、ちゃいろ)」


「ふみゅう、みぅ(そんで、おまえは『はいしろ』)」

「わうっ!(おれ、はいしろ!)」


「……うみゅ(……えーっと)」

「きゃふ(みんなとおなじでいいわ)」

「みぃ、ふにゃぅ(じゃあ、『はいくろ』)」

「きゃぅん(はいくろ、ね。まぁ、そうわるくはないわね)」


「わぅー!(おれもー!)」

「んみ(『はいいろ』)」

「わっふ!(おれ、はいいろ!)」


 よし、これで全員決まっ「ウォウン(次はあたしだね)」


 ちょ、えー。


「んみ(『かあさん』じゃなかったの?)」

「グルゥ(それは名前じゃないだろう)」


 ぐぬぬ……!


「……み。みぁう(……『よる』はどうかな。おれとあったの、よる、だったから)」


 くっそ、凄え恥ずかしい。


「グルルゥ、ウォフッ(あたしは今日から『夜』だね。良い名前をありがとうね。黒いの)」


 くっそ、凄え恥ずかしい!



 ***



 おっれは、はいいろー!と歌いながらグルグル回ってるどこぞのアホは置いといて。とりあえず、本当に全員こんな名前……っていうか、色で良いの?


「わう(おれはまんぞく。わかりやすいし)」

「くぅん(……おそろい)」

「きゅ、ぅきゅぅ(ほんねは、ちょっとね。でもきにいってないわけじゃないわ)」


 まぁ、そうだよな。狼とは言え、女の子ならもっと可愛い名前のが良いんだろうな。

 例えば花の名前とか、雪とか、そっち系のもっと女の子っぽいやつ的なのとな。残念ながら、俺が考えるにはハードル高すぎて無理だけど。

 それに、お揃いにこだわるのが1匹いるからな。もしも、はいくろだけ別の名前にしたら泣きそうな気がする。

 逆に、はいいろは何にしても喜びそうな気がするな。まぁ、喜んでるなら良いか。


 それと、何で『母さん』だけが、みんなみたいに色じゃなくて『夜』なのかって言うと。

 俺と同じで真っ黒なんだよな。だから『黒』にすると被るって事で『夜』になった訳だ。単純な理由だろ?

 実はこの名前だけはチャイロが少し不満気だったんだけどな。理由と、黒は夜の色って説明して何とか納得させた。


 はー、何はともあれ、これで全員分かりやすくなったぞ。呼び分けが出来る。

 ん、そうだな。一旦、全員の紹介でもしておこうか。


 しっかり者で世話焼きのお兄ちゃん。こだわりを持つ男。ついでに家族お揃いが大好きで、言葉使いがちょっとのんびりな『チャイロ』


 元気で常識的なお兄ちゃん。ちょっと口調が荒いところがあるけれど兄弟思いな『ハイシロ』


 口が達者で社交性の高いお姉ちゃん。キリッとした性格で、人間だったら凄くオシャレさんなんだろうな。4匹兄弟の唯一の女の子『ハイクロ』


 元気なアホ『ハイイロ』


 最後に俺達全員の母さん。全身真っ黒でちょっと口が悪い、あと手も足も尻尾も早い。でも、とても優しい『夜』


 ついでに、末っ子で拾われっ子な猫又の俺。『黒いの』


 うん、大体こんな感じかね。結構分かりやすくまとめられたんじゃないかな。誰に紹介してるんだか知らないけどさ。はぁ、つっかれたー。ひと仕事終えた気分だわ。ゔぁー。


「グルゥ、ウォフッ(さて、そろそろあたしは狩りに行ってくるよ)」


 ん? あ、そっか。肉食わんとおっぱい出ないもんな。そういえば、こいつらも肉食うんだよな? 俺はまだ無理だけど。


「みぃ(ちゃいろたちもにくくうの?)」

「わふん(……にく、うまい)」


 さいですか。俺も大きくなったら食わないといかんよなー。生肉かぁ……ユッケならイケるんだけどな。ガチの生肉かぁ。


「ウォゥッ(それじゃあ、行ってくるからね。大人しく待ってるんだよ。良いね? ハイイロ)」


 おかん、早速の名指しである。まさかのハイイロ限定。

 行ってらっしゃーい。


「きゅう、きゃん!(かあさんなにとってくるのかな! たのしみ!)」


 流石肉食獣。女の子なのに超ハイテンション。これが肉食系女子か。ただしガチなやつ。


 んー。普段何の肉食べてるんだろう。野生の狼なら、鹿だろうか。テレビとかでそんなイメージが。害獣(鹿)対策に狼を、って聞いた事あるし。

 まさか、人里降りて家畜を襲ったりはしてないだろうな。そんな事したら狩られるぞ。


「みぃ、にゃう(いつも、なんのにくたべてるの?)」

「わぅ、わふー(んーと、そうだな。だいたいはしかとか、とりとかだな)」


 やっぱり鹿か。それにしても鳥も取れるのか、凄いな。流石狩りの名手。


「わふん、きゃう(あと、ときどきうさぎっぽいの)」


 へー、うさぎかぁ。……いや、ちょっと違う。『っぽい』て何だ。うさぎじゃねぇの??


「きゃぅん、きゅふ(ちがうわよ、つのはえてるもの。まえのむれでもとれるのって、かあさんぐらいなんだから)」


 へ、へぇー。角生えてるんだー。うさぎに。

 ……え、それってうさぎじゃなくね? ひょっとして俺のお仲間的な生き物だったりするの?


「きゅん(……くろいのはたべない)」


 ありがとう、俺も食われたくないです。でも多分そういう問題じゃない。


 しかし、角の生えたうさぎか。ジャッカロープだっけ? 本当に実在したんだな。

 まぁ、俺みたいなの(ねこまた)もいる位だからなぁ。

 ひょっとしてイエティとか、ネッシーもやっぱりいるんだろうか? って、ちょっと待て。いや、おかしいだろ。


『猫又』も『ジャッカロープ』も、ほぼ想像上の生き物で実在している筈がない。

 母さんは『猫又』は極普通に存在するみたいな事を言っていた。ハイシロとハイクロも『ジャッカロープ』を時々食べてるらしい事を言っている。


 あり得なくないか?


「ふきゅー(くろいの、またかんがえこんでる)」


 あ。


「み、みゅう(えと、ごめん。つい、うっかり)」

「うきゅん、くぅん(べつにいいけどね。なにかきになることでもあった?)」


 えーと、どう答えるべきだ? コレ。むしろ、どう聞くべきだろうか?

「ここって地球ですよね?」

 いや、こんな質問されたらドン引きだわ。んー、よし。


「みぁー、にゅぅ(このあたりって、どんないきものいるのかなって)」

「きゅん(いろいろいるぞ?)」

「ふみゃぅ(ぐたいてきには?)」

「ぅー、わっふくふん?(おおかみ、とり、しか、うさぎ、きつね、くま、ねずみ、りす?)」


 ん? 普通のウサギもいるのか?


「わぅん、うっふうぉぅ(うさぎっぽいの、しかっぽいの、くまっぽいの、りすっぽいの、きつねっぽいの)」


 ……どれにも『っぽい』が付くのは何でですか?


「くふん(……ねこまたも)」


 俺ですね。分かります。

 つぅか、『っぽい』シリーズが気になって仕方ないんだが。けど、こいつら子供だしそんなに知らないよな? 母さんが帰って来たら聞いてみるか。

 特に『くまっぽいの』から危険な匂いがプンプンするぜぇ……。そういえば『とりっぽいの』はいないのかね。


 ん?? あれ? 1番騒いでいそうなハイイロどうした?

 やけに静かじゃないか。


 クリッとハイイロの方を振り向くと、そこには


 口からダリダリとよだれを垂れ流しながら、母さんの出て行った洞穴の入り口をじっ、と見続けるハイイロがいた。


 ……見なかった事にしてやるか。気付けば他のやつらも不自然な程にそっち向かねえし。

 いつもの事なんだろうな……はぁ。



 ***



「ウォフッ(帰ったよ)」

「きゃおぉぉぉぉん!!(ごは——ん!!)」


 速えなぁ、おい。よだれを撒き散らしながら突撃していったぞ。しかし、流石母さん。あのよだれ塗れを気にせず受け止めるとは……


 ヒョイッ

 ズシャァッ!


 ……避けたぞ、おい。なぁ、チャイロ。

 なぁ、何で目逸らすの? 何で、みんな目合わせないの? なぁ、何で??


「ふきゅ(……きにしない)」


 ……そうか。


「ウォン、ウォッフ(あんたは相変わらずだねぇ。飛び付くなって、一体いつになったら覚えるんだい?)」


 …………そうか。毎回、なのか。


 ぽふん


「ふみゅ(がんばれ)」

「ガゥッ(うるさいよ)」


 んで、今日の獲物は?


「ウォフ、グルゥ(鹿だよ。この子らは食べ盛りだからね)」

「わふー!(しかにくー!)」

「きゃぅん! きゅん!(かあさん、はやくたべたい!)」

「くきゅぅ(……くろいのは?)」


 俺?


「グルゥ、グルルゥ(黒いのにはまだ早いさね。あんたはまだおっぱいだよ)」

「わぅ、わっふ(おれ、おっぱいものむ)」

「んきゅ……(あたしものむ……)」

「ウォフッ、ガゥ(構わないよ。たくさん食べて大きくおなり)」

「んみ(おっぱいかぁ)」


 子猫の授乳期間ってどの位だったかな。猫又も同じで良いんだろうか。まぁ、なるようにしかならないけど。


 そんな事よりまずは、いただきます。


 意外と美味いんだよな。母乳(コレ)って。味覚は獣仕様なんだろうか。

 よくある猫のフミフミも自然と出るし。うん。不思議。

 しかし、あっちは凄い事になってるな。


 モザイク必須のゲ◯祭り&グロ祭りが俺のすぐ脇で開催されてます。音が、音が……!


 うひぃぃぃぃぃぃ……!?


 そんな狂乱の宴の中で大興奮の4匹。そして、母さんマジ肉食獣。あの中にその内俺も加わるのかね?

 加われる、んだろうか。ちょっと不安になってきたけど。


 チラッ


 うぉぇぇぇぇぇぇ……。


「ギャイン!?(黒いの、一体どうしたね!?)」

 えー、お食事中に読まれた方がいらっしゃいましたら申し訳ありませんでした。全力で謝罪致します。


 前書きの通り、全員の名前判明。

 次話もよろしくお願いします。

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