胎内での記憶
こんばんは、第2話目の投稿です。今回は1話目より文字数が少なくなっておりますが、ご容赦下さい。
今回もシリアス&鬱要素ありですので、ご不快な方はブラウザを閉じて下さるようお願いします。
(ドクン)
頭の中に響くように、心臓の音が聞こえる。
(ドクン)
……俺は、どうなったんだっけ……
(ドクン)
……熱が出て、倒れて、気持ちが悪くなって
(ドクン)
俺、生きてる?
(ドクン……!)
力強く打ち続ける鼓動に安心して、もう1度意識を手放した。
***
温かい。全身がぬるま湯に浸かっているかのような心地良さ。
あの時来てくれたの、大家さんだよな?
此処は病院だろうか。あの後、救急車呼んでくれたのかな。また迷惑かけちゃったなぁ。今度お礼持って行かないとな。
けど大家さんってお礼とか持って行くと、逆に色々手渡されるんだよなぁ。ぐぬぬ。
あぁ、時々分けて貰ってるおかずには大変お世話になっておりますので、よろしければこれからも……って、いやいや。そうじゃない。
いっそ、お返しを貰う事前提で、山盛りにお礼を持って行くべきだろうか。いや、流石にそれは逆に迷惑か? っつーか、前提条件がそもそもおかしいだろう。なんで貰う事が前提なんだよ、俺。けど、いつもくれちゃうんだよなぁ、断るとすっごく悲しそうな顔するし……。うーむ。
って! さっきから、わちゃわちゃ周りがうっぜえ! 人の体のすぐ傍で動き回るんじゃねぇよ……って……
「(は?)」
声を出した筈が声にならない。いや、そもそも目を開ける事すら出来ない……?
えぇぇぇぇ、何が起こっちゃってるの俺の体。
耳しか碌に聞こえない——聞こえても、篭った音しか聞こえないのだが——状況の中で、少しでも何が起こっているのか知ろうと頑張ってみる。
そう、第3の目を開くんだ、俺!!
……まぁ、開いたらびっくりだよな。
ぅっ……俺に封じられた闇の力よ、静まれ。静まれっ……! 的なノリになってしまうだろうが。俺は立派な大人です。そんな黒歴史は知りません。知りませんったら知りません。あれはきっと悪い夢だった。良いね?
とりあえず、なんかぎゅうぎゅう、みちみちと俺以外にも蠢くナニカが詰まってる事は分かった。うん、さっぱり何も分かってないのと同じだな。
***
あれから、何日位過ぎたんだろうか。相変わらずのぎゅうぎゅう、みちみち具合です。もうすっかり慣れました。
嘘です。凄い狭い。しかもちょくちょく鳩尾辺りに何かが、ってグェェェェェ……! 今! まさにその状況に!!
って、あ。これ脇腹か。わー、初体験ー。
じゃねぇわ。そもそも人の体に何してく、グェェェェェ……!
誰か、俺を助けてくれませんか。
あの後、しばらく苦しみました。助けてくれる人は当然誰もいませんでした。チクショウ。
あー、苦しかった。何だか、俺が気が付いた時よりさらにぎゅうぎゅうになっていると思う。本当にどうなってんだ、これ。
人体で知恵の輪でも作ってんの? って言いたい位、体捻れてる時あるぞ。
…………。ぁー、実は、流石にね。色々気付いてるって言うか、察したって言うか。多分、自分の状況は気付いてるんだ。
けれど、それを認めてしまったら、絶対に戻れない気がして。
……もう少しだけ、気付かないフリをしてても良いかな。
***
今は多分、さらに数日が経ったんじゃないだろうか。
前からぎゅうぎゅう、みちみちって言ってたんだけれど、あれを確実に超えるみちみちっぷり。
ぶっちゃけ、身動き出来ません。
俺の体、どんな体勢になってんの? っていう状態で動けなくなりました。ホント、誰か助けて。とりあえず海老反っているのは分かる。
あぁ、そういえば。先日は気付かなかった事にしてたけど、いい加減現実だと諦めました。
うん、俺、あの時死んだんだな。きっと、あの倒れた後に。
あの状況じゃ、大家さんが第1発見者か、死ぬのを看取ったってことになるんじゃないかな。……うわぁ、ガチでヘコむ……。
大家さんとは、俺が1人暮しを始めた時からの付き合いだから、もう6年になる。借り始めた最初の時から、結局迷惑掛けっぱなしで終わっちゃったんだな……。
唯でさえ、本当は未成年には貸さない事にしていたってのに部屋を貸してくれてたんだ。海外にいる孫と同い年だからって言って。だけど、それって後付けなんだ。何でかって言うと、
俺が父親と上手くいっていないの、大家さんは知ってたから。
大家さんはじいちゃんの知り合いだったそうで、俺の事は時々聞いてたらしい。
成人した時お祝いしてくれたんだけど、その時酔っ払って、色々ポロポロ漏らしてた。次の日になったら、本人綺麗さっぱり覚えてなかったけどさ。俺に言っちゃダメな事じゃん。ねぇ?
話してくれた中で1番嬉しかったのは、じいちゃん達は俺の事を引き取りたがってたという事。
その時はばあちゃんもまだ生きていて。でも、結局親権がどうのこうの、とかで引き取る事が出来なかったらしい。その癖、父親は俺の事ほぼ放置だった所為で、父親とじいちゃんは不仲だったという事とか。
父親は食事や服や、風呂の支度とかはやってくれてたけどな。俺がある程度自分で出来るようになるまで。世間体があったからなぁ。近所で俺は、多忙な父親を1人で支える『孝行息子』だったらしい。何それ笑えるんだけど。
中学に上がる前にばあちゃんが亡くなった時も、父親は殆ど顔を出さずに香典だけ置いて行った。
ぶっちゃけ俺は、父親よりもじいちゃん達の方が大好きだった。父親からしたら、それが気に入らなくて余計放置してたのかもしれないけど。
それと、大家さんの話を聞いて思い出した事があった。
高校に入るので家を出ようと決めた後、じいちゃんからじいちゃん家に一緒に住まないか? って言われたんだ。だけど断った。
正直、父親が『アレ』だったから。絶対にじいちゃんのとこに何かしら行くって思って。
正直、じいちゃんの事は心配だったし、寂しそうにしてたのは気が付いていたけれど、迷惑を掛けるよりはマシだって思っていたんだ。その代わりと言っては何だけど、学校が休みの日はじいちゃんの家に入り浸っていた。当然彼女なんていない。単に作らなかっただけだからな!
じいちゃんとこに遊びに行ったある時。2人ではしゃぎ過ぎてじいちゃんが腰をやっちゃった時は、ばあちゃんの位牌に土下座したのは良い思い出。生きてたら、多分凄い怒られてた。
それで、じいちゃんに家を出るという話をした数日後の事。高校のわりと近くにあるアパートに入居者募集中の紙が貼ってあったぞ、ってじいちゃんが教えてくれた。じいちゃんが通ってる病院の通り道だから、偶然気付いたんだって言って。
それ聞いて喜んで行ったら、未成年者は云々言われて愕然としたけど。直後に名前と年を聞かれて答えたらうちの孫と年が一緒だって。じゃあ、良いわよって言ってくれたのを思い出した。
あれ、じいちゃんのおかげだったんだ。話聞いてその時初めて気が付いた。
じいちゃんが死ぬ数日前にも、もうすぐ成人だから孫と一緒に酒が飲めるって、嬉しそうに話してたんだって。
そんな事を聞いて、俺、酒飲みながらボロボロ泣いてた。大家さんが覚えてなくて良かったけどさ。……今だから思うけど、もしかしたら本当は覚えてたのに、覚えてない事にしてくれてたのかもしれない。
俺の勝手な思い込みかもしれないけど。
でも、本当に優しい人だったんだ。じいちゃんが死んだ時も、父親より余程親身になってくれて。
俺にとって本当に大事な人だったんだ。
最後に、お礼言いたかったなぁ……。
もう2度と会えないんだな……。大家さんにも、足立さん達、会社の人達にも。チクショウ。
もっと沢山、話したかっ、た、んだけど……な。
ちくしょう、泣きたい。
***
……っ、……ふぅ、少し落ち着いた……。
それで、俺があの時死んだならば、今の状況は何なのかってことを考えると、所謂生まれ変わりってやつなのかな。前世の記憶を持ったまま、生まれ変わった……て言うか、生まれる、前? あれ、ちょっと訳分からなくなって来た??
ま、まぁ、そういう事なんだろうな。
しかし、前世の記憶を持ったまま、生まれ変わり……かぁ。知人がそんな事言い出したら、ドン引き間違いなしだな。絶対に他の人には言わないようにしよう。
それにしても、生まれ変わり、ねぇ……前世の……記憶……。うん。普通に聞いたら『厨二病乙』だな。
これで実際産まれてみたら、右腕に龍が封印されていたり、邪気眼が付いてたり、『えたぁなるふぉぉすぶりざぁど』なんて言い出しちゃったりなんかしちゃわないだろうな、こんちくしょぉぉぉぉぉ!!!
『僕の考えた最強の〜』とかも嫌だからなぁぁぁぁぁ!!?
何で詳しく知ってるのかって?
……頼むから聞いてくれるな……!
え、ガチの黒歴史(正史)ですか?
って、お?
おぉぉ?
え、何か、痛いんだけど。
って、マジで痛い! 痛い痛い痛い!!
なんか、無理矢理狭いところ通らされてるっていうか、え、ちょ、マジで!?
俺
「ぴぁ————!!(産まれる————!!)」
俺、爆誕。
内容少なくて申し訳ありませんでしたっ!
正直、独り語りだとネタに困ります。過去を思い出す位しかないのです。
設定盛り過ぎかな、と思うところもあるので、後日修正するかもしれません。
厨二病、邪気眼云々は調べました。症状一覧とか見ると面白いですよ。おかげでスマホの検索履歴には人に見られたら不審がられる事間違いなしな文字の羅列が。
本日の投稿は以上の2話……とする予定でしたが、モヤっと感が抜けないため変更しまして、12時と18時に1話ずつ投稿致します。
度重なる予定変更申し訳ありませんがよろしくお願いします。