異世界のホワイトデー
突発ホワイトデー小話です。楽しんで頂けたら幸いです。
「ワフッ!(なぁなぁ、くろいの!)」
「ミァ?(ハイイロ、どしたん?)」
「ウォフッ!(『ほわいとでえ』ってなんだ?)」
「ぴっ!?(はぁっ!?)」
今日は日差しが強すぎるので、俺は洞穴の中でノンビリごろごろ中。だいぶ季節も夏に近付いてきたのかな?
他のみんなは……多分外にいるんだろうな、視界の中にはいないし。俺は毛が真っ黒だから、熱吸収して暑いんだよ……。
地面にペタッと、体全体でへばり付くとヒンヤリ気持ち良い。もっとも、このヒンヤリ感が本気を出すのは夏場だろうけど。夏場の太陽は、まだ考えたくないなぁ……。
そんな感じでグダグダしてたら。
ズザーッ! と横滑りしながらハイイロが洞穴に駆け込んで来た。と、思ったら、突然妙な事を言い出した。
って、ちょ! いきなり何を言い出したんだ!? 何でハイイロが『ホワイトデー』なんて知ってるんだよ!?
驚きすぎて変な声出たわ! 変な声出たわ!!
「ワウ?(なにおどろいてるんだ?)」
「ウニャニャッ、ニ?(ちょっと聞くけど、どこで『ホワイトデー』なんて知ったんだ?)」
「ウ? ウォフッ!(ん? わかんない。けど、なんかきこえたっ!)」
「……ミ(……なんだ、そりゃ)」
ハイイロに聞いた俺がバカだった。今までまともな回答が返って来た事無いじゃん。
つーか、聞こえたって何だよ。誰が言ったのさ?
そういえば、そもそものハイイロが言ってるのって『ホワイトデー』で合ってるんだよな?
ん~……もしかすると、ハイイロ以外にも聞いたってやついるのかな。ちっと聞きに行ってみるか。
ってわけで、ちと外行くわ。
「ワゥン? ワフー(くろいの、どっかいくのか? おれもいっしょにいくー)」
おーぅ、一緒に行こうぜー。
とりあえずチャイロ達はどこにいるんだ? さっきハイイロ外から来たんだし、洞穴の外かね?
てふてふ、てふてふ
わふわふっ、わふわふっ!
ハイイロと並んで洞穴の外へレッツ、ゴー。
相変わらず微妙な感じの足音を響かせる横で、ハイイロがワフワフ興奮しながら、小走りに先に行ったり、戻ったり。ってか、これ並んでねぇよ。
おぐっ!? 俺にのしかかって来るのは や め ろ !! 潰れるわ!
道中ハイイロにのしかかられて潰されかけたり、それに対して反撃したり。
そうしたら余計興奮するものだから、最終的には鼻先への『必殺 猫パンチ』で黙らせた。今は尻尾をしおっと垂らしながら大人しく付いてくる。どうせ今だけだしな。きっとすぐ忘れるんだ、ハイイロだから。
……あ、ハイクロみっけ。っと、チャイロとハイシロも一緒だったか。
「ミャーゥ(おーい)」
「キュフ(あ、黒いの。ちょうど良かったわ)」
「ワウッ(おっ、黒いの)」
「ウォフッ(……黒いの、少し聞きたい事があるんだけど)」
おん? いや、俺もハイクロに用事あったんだけどハイクロもなん? それにハイシロとチャイロもなのか?
「キャウン?(黒いのは『ほわいとでー』って知ってる?)」
……ブルー○スお前もか。
「ワゥっ!(おれも『ほわいとでー』っていうの聞きたかったんだ!)」
「グゥ(……おれも)」
お前らもか。何なの? 俺も聞きたいわ。ホウイトデーなんて、どこで聞いたん?
「キュ?(どうしたの?)」
「ンミ(んにゃ、『ホワイトデー』って)」
「キャゥン、ワフッ?(あ、そうそう。『ほわいとでー』って知ってる?)」
「……ンニィ(……知ってるような、知らないような)」
「フキュ? ウルル(何それ? 変なの)」「グルゥ?(知ってるのか? 知らないのか?)」
「ワフ?(……黒いのも流石に知らないか?)」
俺の知ってるホワイトデーなら教えられるんだけど、それで良いのかなぁ?
あ。それよりどこで知ったのか、後で聞いてみるか。チャイロ達ならちゃんと説明出来るだろ。
んー、けどまぁ、さっきのは答えになってなかったよな。悪い事した。けど、俺の知ってるホワイトデーで良いのかなぁ?
「ウミュゥ……(おれの知ってる『ホワイトデー』ならせつ明できるけど……)」
「ヴァウッ!(それでいいぜ!)」「ウフ(かまわないわよ)」
「ウルゥ(……流石、黒いのだな)」
おおぅ、食い付き方が凄い。ってかチャイロ、流石とか照れるからやめれ。俺の場合はずるしてるみたいなもんだしなー。中身は人間だもんよ。
未知のものへ対する期待なのか、全員の尻尾の振りがすご……って、ハイイロどこ行った?
きょろきょろと周りを見回してると、俺が何を探してるのか気付いたハイシロが声を掛けてきた。
「ワゥ、ワフッ(ハイイロをさがしてるなら、黒いのの後ろにいるぞ)」
「ミ?(うしろ?)」
クリッと振り向くと、ゾババババッ! と物凄い勢いで土を掘り返すハイイロがいた。あ、土飛んで来た。避けたけど。
……何してるんだ、あいつ。
ハイイロの奇行に思わず遠い目になった。ふと横を見た時に、ハイクロと目が合ったけど即座に逸らされた。わーい。
「……ニャウ?(……なぁ、ハイイロ、何をしてるんだ?)」
「ウォフッ!(『ほわいとでえ』っていうのさがしてるっ!)」
土掘ったって出て来ねえよ。物じゃねぇし、行事だし。
早いところ説明しておかないと、そこらじゅう穴ぼこだらけになりそうだな。
って、ハイシロ! つられて穴掘ろうとするなっつの! あん? 埋まって……無いから! そんなところにあるもんじゃないから!
あ――――! もう! ちゃんと説明するから、全員……「ミャッ!!(おすわりっ!!)」
スチャッ!!
お、おぅ、うっかり声出てたのか。
って、見事に全員お座りしたな。肝心のハイイロもちゃんとお座り状態だ。ハイクロとチャイロはとばっちりだったな、正直済まんかった。
「クゥ?(何かつられてすわっちゃったわね?)」
「グル(……おれもだ)」
「……ミ(……ごめん)」
「キュフン、クフ(気にしてないわよ。さわいだハイシロとハイイロが悪いんだから)」
「グゥ……(わるい……)」「ゥキューン(ごめーん)」
なんだかんだとごたごたしつつも、何とか場を収める事が出来た。
そしたら今度こそホワイトデーについて説明しないとなー。……っつても、バレンタインデーのお返しなんだよな。けど、それを説明すると今度は『バレンタインデー』についても説明せにゃならんし。
ん~……まぁ、良いか、勝手に作っちゃえ。きっとばれないだろーし、うん。
「キュ?(黒いの、説明まだ?)」
あ。待たせてるの忘れてた。
「ミャ、ミィ、ミャァウ(わるい。んっと『ホワイトデー』は家ぞくとか、おせ話になっている人にプレゼントをわたす日のこと)」
……まぁ、大きくは違ってないよな、多分。何かお歳暮とか混ざってる気がしないでも無いけど。
「「「「ワゥ?(プレゼント?)」」」」
「ミ(そう)」
「ゥー、キャフッ!(だったら、母さんに何かプレゼントしたいわ!)」
「ウォゥッ! ワフッ(それいいな! 何あげようかなー)」
「ウォンッ!(おれ、にくがいい!)」
……ハイイロ、それ自分が欲しいもの言ってるだけじゃね? まぁ、母さんへのプレゼントに肉ってのは間違い無いだろうけど。肉食だし。
「グルル?(……それなら、おれ達だけでかりに行くか?)」
俺達が、ガウガウ、ニャーニャーと相談しあっていると、チャイロが『自分達だけで狩りに行く』と言い出した。
真面目なチャイロには珍しい発言だ。むしろ言い出しそうなのはハイシロかハイイロで、チャイロはそれを窘める側だと思ってたんだけど。現に、ハイクロもすごくびっくりしている。
「キュフ?(めずらしいわね、チャイロがそんな事言い出すなんて)」
ハイクロがそう言いながら、チラッとハイシロとハイイロを見る。
ハイイロはハイクロに見られても全く気にしないで、ご機嫌に舌を出しながら、尻尾をバフバフとハイシロに当てている。
逆に、ハイシロは見られた事にむっと鼻先に皺を寄せながら不満そうにしている。チラッとハイイロを見た事から、尻尾をぶつけられている事も不快に思ってるっぽいけど。って、そろそろ気付いた方が良いぞ、ハイイロ。いい加減ハイシロも……。
「ギャウンッ!(いてぇっ!)」
「ガウゥッ!(しっぽうぜぇよ!)」
「ゥキューン……(わざとじゃないのにぃ……)」
ほらなー。がぶっと噛まれた。
ハイシロはお仕置きをした後は鼻をフンッと鳴らしている。まだ興奮が治まらないのか、鼻息が荒いし尻尾の振りも荒い。
まぁ、そんな2匹はおいといて、まずはホワイトデーの相談だな。本当に狩りに行くのん?
「クゥ、ワフッ?(チャイロ、かりに行くって本気なの?)」
「グルル(……他に母さんがよろこびそうな物ってあるか?)」
「ンニュ(そう言われるとむずかしいよな)」
「グウゥ?(けど、おれたちだけでかりなんてやったことないぞ?)」
そうなんだよなぁ、それに母さんが許可してくれるかも分からないし……。
むしろ、反対されそうだよな。うーむ、どうするか……。
「ウォフッ(……とりあえず、母さんに行っても良いか聞いてみよう)」
まぁ、それしかないか。
無断で狩りになんて行ったら、間違いなく『パックリ』されるし。
……うぉぉ、思い出すだけで体が……!
ガタガタガタガタ……
「キュ!?(黒いの!?)」
「グゥッ!?(……どうした、黒いの!?)」
お、おおぅ……心配させたみたいだな。まぁ、目の前でいきなり震えだせば当然か。
「にゃう、み……(だいじょうぶ、『ぱっくり』されたのおもいだしただけだから……)」
「キュ(そ、そう)」
「ニャ(うん、もう大じょうぶ)」
「ワフッ(そんじゃ、母さんのところに行くか)」
うっかり母さんの『ぱっくり』を思い出したら全身がたがた震えだした。俺のトラウマは治っていない模様です。
心配するハイクロとチャイロを宥めてって、何かまだカクカクしてた。……ふぃー、もう大丈夫。治ったから、うん。
うーい。んじゃ、気を取り直して、みんなで行くか。
ハイイロ、そろそろ起きろ。つか、さっきハイシロに怒られてしょげたと思ったら、いつの間にか寝てやがった。まぁ、悩みが無さそうで羨ましい限りだな。
なかなか起きないハイイロをへち倒して起こしてから、全員揃って母さんの所へ。
女3人寄れば姦しい、とか言うけど、子狼が4匹集まるともっとだぞ。ガウガウ、ワフワフ元気いっぱいだからな。
けど、多分、許可は出ないんだろうな~……。
***
「グルゥ? ウォフッ(お前達だけで狩りに行くのかい? 構わないよ)」
あれぇ~??
てっきり反対されると思ってたんだけど、むしろ賛成モード?
「グフゥ、ガウ(だけど、黒いのにはまだ早いからね。お前はだめだよ)」
……ですよねー。流石に俺にはまだ早いか。母さんの持って帰って来た獲物での練習しかしてないんだし。
「キューン?(黒いのはだめなの?)」
「ウォウッ(だめだよ、まだ早いからね)」
「フキュ……(ごめんね、黒いの……)」
「ミ、ミャウー(しかたないだろ。ハイクロたちだけで行って来いよ)」
俺にはいざとなったら肉を焼く、という裏技があるからなっ! 俺の事は気にせず、行って来てくれよ。
肉焼く用に体力温存して待ってるからさ。
って訳で。う~い、行ってらっしゃい~。
***
「ウォーン!(ただいまー!)」
「クゥ、キャフッ(黒いの、ちょっとおねがいがあるんだけど)」
おん? お願いって何ぞ??
「グルル、クォフッ(ウサギをとって来たから、焼いてもらいたいの)」
「ンミ!(まかせろ!)」
むしろ、焼く気満々で待機してました。その為に体力残してたんだからなっ。
それじゃあ張り切って肉焼いちゃうぞ~! 肉を焼くならまかせろー。ばりばりー。
最初からだいぶ練習して、今ではかなり火の扱いも慣れたしな! 肉焼き専用スペースも作ったから、肉を焼くなら任せろなんだぜー。
肉を焼けるようになってからは、母さんも焼いて食べるのがお気に入りだしな。俺も焼いた方が好きだし。
さて、焼き始めるかね。それじゃあハイクロ、ウサギおくれー。
うし。お次は、肉焼きスペースに移動して、と。
で、ハイイロ。邪魔だから、どーいーてー。っつーか、どけ!
何とかハイイロを押しのけて、預かったウサギを焼き始める。
最初は毛が燃える匂いがして臭いんだけど、段々と肉の焼ける良い匂いがしてきた。うぅ、美味そうな匂い……。つられて腹が鳴るー。
横からスンスン、スンスンと鼻を鳴らしながらハイイロの顔が肉に近付くのを妨害して、最後まで何とかウサギを守りきった! って、途中から目的変わってね?
何はともあれ、美味そうに肉も焼き上がったぞ。
さて、チャイロ達を呼びに……いや、待て。……うん。
「ミ(ハイイロ、チャイロたちよんできて)」
「ワゥー(わかったー)」
ふぅ、危ねぇ。この場にハイイロを残して行ったら、間違いなく食われるか、歯型が付いてるに決まってるからな。
「クゥ?(黒いの、焼けた?)」
「ミ(かんぺき)」
「グゥ(……おれ達の分はべつにあるから)」
まじか! チャイロ、流石!
そういう訳だから、このウサギは母さんのだからな! ハイイロはよだれ垂らしてんじゃねぇよ!
ウサギも良い感じで焼きあがったし、母さんに早いところ渡そうぜ。ハイイロに食われる前に。
焼き上がったウサギをチャイロがくわえて、みんなで母さんのところにレッツゴー。
「ウォンっ!(かあさん!)」
「グル?(ん? 何だい?)」
「ウォフ(……これ、母さんにプレゼント)」
「ウォフッ!(そのために、おれたちかりに行ったんだぜ!)」
「ウォーン!(にくうまい!)」
「ミャ、ニャニャ(きょうは『ホワイトデー』なんだって。だから、かあさんにプレゼント)」
「グルゥ……(お前達……)」
最初にハイシロが声を上げると、他のみんなも口々に母さんに声を掛ける。
俺達が口々に言う言葉に、段々母さんの目が潤んで来ている気がする。それでいながら嬉しそうに目を細める母さんの様子に、俺達も嬉しくなる。ちょっと照れくさいけど。
「グゥ、ウォフッ?(それじゃ、頂くよ。お前達は食べないのかい?)」
「クゥ(あたしたちのは別にあるから、気にしないで食べて)」
「ガウ?(黒いの、やいてくれるか?)」
「ニャ(まかせろ)」
うまうま、と尻尾を振りながらウサギを食べる母さんの姿を見ながら、自分達の分を焼く。
正直なところ、ウサギ1羽だけだと俺達全員分には足りないんだけどな。大食らいのハイイロがいるからなー。
「グルゥ、ウォンッ(とっても美味しかったよ、ありがとうね)」
改めて母さんから御礼を言われて、全員嬉しそうにしながらも恥ずかしそうにモジモジする。
ちなみに俺の場合は、照れたりすると尻尾がグネグネする。
ハイクロは時々顔を前足で隠す感じで非常に可愛い。和む。
ハイシロの場合は、ちょっと顔を背け気味になるんだよな。けど、尻尾はぶんぶん揺れているから喜んでるのはバレバレだ。
チャイロは喜び方もちょっと控えめで、尻尾が揺れてるけれど揺れ方も控えめ。
逆にハイイロは凄く分かりやすくて、舌を出しながら尻尾ぶんぶん全力だ。っつか、これ照れてるのか全然分かんねぇ。
まぁ、何はともあれ……ハッピーホワイトデー!
なお、この話のために12日に2話投稿とさせて頂きました。そうしないと黒いのの活躍どころが無い……。
小さなお子様のきれいな花プレゼントも、母さんだともぐもぐされて終わりです。んで「あまり、美味しくは無いね?」などとさらっと言われたりします。ひどい。
~追記の小話~
「ニャー、ウニャン?(なぁ、チャイロたちは何で『ホワイトデー』なんて知ってたんだ?)」
「ウォフッ? グウゥ(ん、どうしたんだ? んー、何か聞こえて来たんだよな)」
「クゥン? クォゥッ(ハイシロもなの? あたしも、急に声が聞こえたからびっくりしたわ)」
「グゥ、ウォン(……おれもだ。母さんはよろこんでくれらから良いけど、何だったんだろうな)」
結局チャイロ達にも分からないのか。……以前、俺がバレンタインデーが今日だ、って気付いた時みたいな感じなのかな。
つーか、ハイイロごめん。お前の言ってた事、合ってたわ。
「ミャ(ハイイロ)」
「ワフ?(くろいの?)」
「ミ(これ、やる)」
ウサギの骨、若干のお肉付き。香ばしい香りを添えて。
ぶっちゃけ、母さんが食べた後の骨から少しでも肉の付いてるとこ探して、改めて火で炙っただけなんだけどな。
「ワフッ!? ウォーン!(いいのか!? やったー!)」
……うん、ハイイロが単純で助かった。




