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猫又の能力に目醒めた記憶

 やっと猫又が猫又としての能力が開花します。


 猫主のセリフ、漢字と平仮名混じりで余計に読みづらくなった気が……!


 本日最後の投稿です。

 先日、団子になって潰された俺は、今も変わらず母さん達の元にいる。

 あれ以来、チャイロ達の狩りの練習……いや、狩りの訓練もどんどん厳しくなって来ている。俺も一応練習はしているんだけどな。まだ母さんが持って来た獲物を使ってだけだ。


 チャイロ達は少しずつ、母さんの狩りに同行するようになった。一緒に狩る訳ではなく、見学だけらしいけど。

 全員で藪に隠れて、母さんが獲物を追い込んで来て狩るのを見てるんだってさ。

 つーか、そこまで追い込んで行ける母さん凄すぎじゃね?と、思わないでもない。


 そんな訳で、今日もみんなで狩りにお出かけ中と言う事だ。俺は安定のお留守番。ぶっちゃけ


「みぁー(ヒマー)」


 寝転がったまま、千切れたネズミの尻尾を前足で(もてあそ)びつつゴロゴロ、ウダウダ。

 ちなみにこの尻尾は、俺が初めて狩った(殺した)ネズミのもの。チャイロに貰ったやつ? あっちは宝物として取っておいてある。クマの牙とかと一緒に。


 最近になってチャイロ達が訓練を厳しくするようになったのは団子事件の事もあるが、母さんが言った言葉の所為もあるらしい。


 俺達が暮らしている洞穴の周辺に生息しているらしい——俺は未だに1度も見た事がないのだが——『っぽいもの』シリーズ。こいつらを獲る為だ。

 何でも普通の獲物とは全く強さが違うらしく、1番弱そうな『ウサギっぽいもの』ですら、クマに匹敵する強さなのだとか。クマを刺し殺す事だってあるらしい。何それ怖い。


 こいつらを分かりやすく言うなら、前世の知識から参考にすると所謂(いわゆる)『モンスター』とか『魔物・魔獣』と呼ばれる類のものだろう。


 ちなみに、俺もこいつらの中に分類されるらしいのだが、俺そんなに強くないよ? と言ったらまだ子供だからね、と返された。大人になれば強くなれるらしい。何それ格好良い。

 もっとも、その強さが普通の獣に取っては脅威になるらしく、普通の親から稀に産まれても即殺される事もあるのだそうだ。……つまり、今世の俺の母親がそうだった訳だ。だからと言って許せる訳じゃねぇけど。


 おっと、話がズレた。えーと、どこまで言ったっけな? あぁ、そうそう。『っぽいものシリーズ』を狩る理由な。

 基本的にこいつらは強い。その上長生きする傾向にあるらしい。もちろん長生きした個体はそれだけ頭も良いって事だから近付くのも危険らしいけど。


 んで、こいつらがどうやって存在しているのかと言うと。

 まず1つに、普通の親から生まれた場合。これは生まれつきの特殊個体って事だ。この場合は何らかの理由とかで普通の獣になる事はない。

 もう1つが、通常の個体が特殊個体に変化する場合だ。これの方法としては特殊個体を狩り、その肉を食う事。それを重ねる事で通常の個体でも、特殊個体になる事が出来る——以前母さんが話してくれた、病気の子供に食べさせた肉と言うのがコレ(リスっぽいもの)だったらしい。

 だからこそ、ボスは余計に獲物を奪おうとし、奪う事を出来なかった事を逆恨みして凶行に及んだと言う訳だ——のだがそれをした全員が特殊個体になれる訳ではないそうだ。

 現に母さんはハグレ時代も含めて何度か特殊個体を狩って食べているのだそうだが、未だに普通の狼のままだ。


 それを聞いて思わず「母さんって何歳なの?」と聞いた俺がバカだった。次の瞬間、俺の首から上は母さんの口の中にあったからだ。しかも、ちょうど犬歯が頸動脈(けいどうみゃく)を的確に捉えた上で。

 俺を口の中にくわえている所為でモゴモゴと篭った声のまま「何か、聞いたかね?」と尋ねられたのだが、全身ガクガク震わせながら「いいえ、何も聞いておりません! マム!」と答えた俺を臆病者と咎める者はいないだろう。

 いたらお前が聞いてみろ、と言いたい。

 超、怖かった。

 だって、母さんが何か喋る度に頸動脈に当たった犬歯がクッ、クッて動くんだぞ!?

 口の中から出されて、よだれでヌトヌトになりながら震えている俺を、あの冷静なチャイロですらも全身ガクガク震わせながら見ていただけだったのだから……。


 狼であっても、(じょせい)に年齢を聞いてはいけない。そう確信した瞬間だった。


 うぉぉぉぉ……思い出すだけで、未だに体が震えるぜ……って。やばい。また脱線した。話を戻さにゃ。


 んーと、母さんは特殊個体を食べても普通の狼だってとこまでだったか。

 ここからは母さんの推測になるのだが、大人になるにつれて効果が出にくくなるのではないかと。つまり、子供も時から頻繁に特殊個体を食べるようにすれば、そうなりやすくなるのではないか? というものだ。


 チャイロ達はコレを狙っている、という事だな。

 以前にも食べた事がある、と聞いたから回数を聞いてみたら2回との事だ。まだ特殊個体にはなっていない。段階的に変わるのか、突然変わるのかは分からないが目標を持つのは良い事だろう。

 特殊個体になれなくても、母さんの狩りの成果を見れば想像は付くと思うのだが、ある程度の副次効果は見られるっぽいし。


 《食べれば食べるだけ強くなる》


 ゲームとかでありそうだが、この世界においてもそういう事らしい。

 さっきから「らしい」とか「そうだ」が続いてしまうけど母さんですら、実際に特殊固体に変化した例を見た事がないのだから仕方ない。


 その内チャイロ達が貴重な実例になるのだろうか……?


 まぁ、そもそもの特殊個体を目指し始めた原因と言うか、理由と言うのが「長生きになって俺と一緒に居たい」という事を聞かされた時の俺の居た堪れなさをお分かり頂けるだろうか……?

 母さんは相変わらずニヤニヤ、ニヤニヤ悪い顔をしているし。

 俺の尻尾は恥ずかしさでグネグネ、グネグネ動きまくるし……!


 あぁぁぁぁ!! くっそ、思い出すと顔が熱い!

 早くみんな帰って来ないものかね!



 ***



 ん? そろそろ帰って来たか。


 少し離れた所から母さん達が洞穴の方に近付いてくる気配を感じた。あぁ、これも気が付いたら分かるようになってたんだよな。後は獣的な直感とか。結構当たるんだ……って言ったばかりだけど、何か嫌な感じがする……何だコレ……!


「……ゥ! ウォゥッ!(……ィロ! しっかりするんだよ!!)」


 ……! 母さんの声だ!

 まさか、チャイロ達に何かあったのか……!?


 外から漏れ聞こえる声に、堪らず洞穴からまろび出る。

 顔を上げた俺の目に入って来たのは、体の所々を血で染めた母さんと、それ以上に血に染まり脇腹から血を流し続けるハイイロの姿だった……


「ミャウ!!(ハイイロ!!)」


 慌てて駆け寄るもハイイロの意識はない。他のみんなは!? と見回せば、やはり所々血に汚れてはいるものの、全員きちんと揃っていた。


「みゅ、みぃあ!?(みんな、けがは? なにがあったの!?)」

「くぅ、きゅぅん(おれたちにけがはない。けどハイイロが……っ)」

「ミィ!(ハイイロは大じょうぶなの!?)」

「キュン、きゃぅん(……分からない。大じょうぶだとしんじたい……)」

「フキャゥ、ヒャンヒャゥン(つのウサギを見つけたの。母さんがつかまえようとしたんだけどにげられそうになって)」

「グルゥ……ガルルル……(そうしたらハイイロが飛び込んで来たのさ……全く、とんでもない事をしてくれたよ……)」


 話を聞いて分かった事は、狩りに行った時に偶然角ウサギを見つけ、それを狩る為にみんなを一旦藪に隠し、母さんだけで狩りに行ったらしい。

 この時母さんにみんなに見学させる意図はなかったとの事だ。それだけ危険な生物なんだ。特殊個体(おれたち)は。


 ところが、逃げ回るウサギを追い掛けている内にうっかりみんなの隠れている藪の近くに出てしまった。それに気付いた母さんは追いかける足を緩め、好機と見たかウサギが一気に逃げ出そうとした。

 それを見て獲物(特殊個体)に「逃げられる」と思ったハイイロは、絶対に隠れていろと言われたにも関わらず——チャイロ達の制止の声も振り切って——飛び出して、それに激高した角ウサギに脇腹を角で突き刺された、という事だ。


「……ミィア(ハイイロはたすかるの?)」

「グルルゥ、ウォフッ……(分からないね。角が刺さったのは体の脇に沿ってだから内臓は傷付いてはいないだろうよ。だけど出血が……)」


 チャイロ達が必死にハイイロの顔や体に付いた血を舐めるが、ハイイロの体はピクリとも動かない。母さんも悲しそうにハイイロの顔を舐める。

 ……それでも声1つ上げようとしない。


 ……嘘、だろ? ハイイロが、しぬの??


「……みゃぁ(……いやだ)」


 血が止まらない


「……みゃぅ(……いやだ……っ)」


 流れ出る血が嫌で、消したくて、傷から流れる血を必死で舐める。そんな事をすれば、当然俺の顔も血だらけになる。だけど、今はそんな事に構ってる余裕なんてなかった。


「みぃ!(ハイイロっ!)」


 ……ポワッ……


 ……ハイイロが光った。って言うか、光ってる。現在進行形で。思わず、傷口を舐めてた舌を離し、光るハイイロを見つめた。そのまま光り続けるハイイロ。

 緊張感が頂点に達した所為なのか、段々頭がクラクラして来た。


 ……まさか、前に特殊個体を食べたって言っていたからか?


 微かに希望が浮かぶ。ひょっとしたら助かるかもしれない。しかも、もしかしたら本当に普通の狼から特殊個体になるのかも……?


「……ウォフッ(……黒いの、気付いてないだろうがお前も光っているよ……)」


 ……うぇっ!?


 慌てて自分の体を見回すと、確かに全身が光っていた。光り方はハイイロと全く同じに見える。光る様子をよく見てみるとハイイロの傷口が1番光り方が強く、しかも時間が経つに従って傷口が少しずつ小さくなっているのが分かった。


 ……いま、なにが、おこってるんだ?


 頭がクラクラする。混乱が酷くて、理解が追い付かない。

 呆然としながらもハイイロを見守る内に、最後にホワッと小さく光ってから、謎の光は消えた。

 気付けば全員が固まっていたらしい。


「クゥ、ワフ(……今の、何?)」


 いや、俺も同じ事を聞きたいです。

 そう思いながら、放心したまま呟いたチャイロの方を振り向こうとして


「「「「キャゥン!?(黒いの!?)」」」」


 フッ、と意識が途切れた……。

 最初に目醒めた能力は治癒能力でした。今後、訓練を重ねて行き、別の能力にも目醒めて行きますよ。能力開花の要因は色々です。


 とりあえず、猫主達特殊個体ってこうなってるんです。それを狩っちゃう母さんマジ凄え、という事です。


 突然の連続投稿とさせて頂きましたが、最後までお読み頂きありがとうごさいました。

 次話もよろしくお願いします。

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