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わたくし、ヒロイン様と対面しましたわ。




 アゼル先生の愛ノゴ指導のおかげで……デートが流れましたわ。


 課題をたくさん持たされ、サボらないようにフレイム様に寮に戻らなければならない時間ギリギリまで手伝って貰い、寮に戻れば、お友達の三人……ターナ様とアイラ様、タリス様にもお手伝いをしていただき、わたくし、お友達の皆様に足を向けて眠れませんわ。 勿論、フレイム様にも。 だだ、……フレイム様とのお勉強はニンニク臭が気になり集中出来ませんでしたわ。………控えようかしら?でも、部屋に置いていかれるので増える一方ですわ。困りましたわ。



 ーーハッ、閃きましたわ!ふふ、デートを潰され、やさぐれた悪役の底力を見せて差し上げますわ。



「……また、同じ愚行を繰り返すつもりか」



 食堂でヴァイス様がわたくしに水色の……険のこもった目を向けましたが、いまのわたくしには、大した問題ではございません。


「何をおっしゃられているのか。ホホッ、わたくしは、ただ平民に施して行っているだけですわ」

「だったら、違うメニューを考えろ!何故、また同じメニューなんだ!?」

「同じメニューだけではございませんわ!さすがにライスだけでは、飽きるだろうとパスタも用意致しましたもの!明日にはカレーと酢漬けも用意致しますわ!」

「そこじゃないだろ!?」

「正直、わたくし一人では食べきれないのですわ!」


 わたくし、思わずぶっちゃけました。

 毎日、毎日、部屋の前に置かれるニンニク達。ここまでいくと捨てるのも呪われそうなのですわ。

 ですから、消費する為に平民を利用するのですわ。


 わたくしは、ニンニクが減り、平民はお腹が満たされるまさに一石二鳥。

 ふふ、なんて天才なのかしら、わたくし。


「……ニンニク?」

「わたくし、人気者ですからニンニクを貢がれておりますの」



 ヴァイス様が、盛大に顔を引きつらせていますが、わたくしが人気者でないとでも?

 ふ、高嶺の花である事は確かですわ。


「……必要な友に配って歩くとかは」

「まあ、ヴァイス様、ニンニクが必要な友って誰ですか?」

「……」

「それとー…」


 わたくしは、ふ、と胸を張り、ヴァイス様に視線を向ける。



「わたくし、お友達が少ないのですわ」



 どや顔ですわよ!


 わたくし、ヴァイス様を言い負かせてどや顔ですのに何故可哀想なものを見る目なのですか。

 わたくし、誰もが羨む高貴なる人間ですのよ!


「……ああ、うん、何かすまない……」

「ふ、わかれば宜しいのですわ」

「ただ、もう少しやり方を考えろ」

「まあ!わたくしばかりに任せずヴァイス様も考えてくださいまし!」

「……配って」

「ですから、お友達がー…はっ」



 わたくし、閃きましたわ!



「ふふふ」

「……笑い方が不気味だぞ」

「おーほっほっほっ、わたくし、閃きましたわ!」

「……」


 あら、何故身を引くのですか。ヴァイス様。

 前世の知識があるわたくしですわよ。あるじゃないですか名案が!



「わたくし程の知識があれば、簡単に解決出来ますわよ!」

「わかった。フレイムに相談してから!な!一拍置いて行動しろ!」



 嫌ですわ。ヴァイス様ったら、わたくしの考えが間違ってる訳ございませんのに。


「ふふ、わたくし、これから忙しくなるので、ごきげんよう!」

「あ、なんでそんなに逃げ足が速いんだ!?」


 待てーっ!と言われて待つ悪役がおりまして?おーほーほっほっ!!


 ごきげんよう!





 ……ちくちくとお裁縫に飽きましたわ。



「この小さな小物入れを大量に作ってどうなさるおつもりでしょう?」


 お手伝いをしてくれるサラと裁縫がお上手で内職に誘ったタリス様にわたくしは、頷きます。


「ニンニクを入れようと思いまして」

「……ご乱心……」

「違いますわ!」


 フレイム様とお父様にすぐに連絡を入れようとするサラを必死に止めますわ。


 違うのですわ!


「その、寄付を募ろうかと思いまして」

「寄付?」

「ええ、平民に貸し出し用の教科書があっても良いのではないかと。それで寄付してくださった方にお返しにと」

「……」



 サラが黙りましたわ。ええ、何故そこまで考えていたのですか、的な表情なのですか。

 ただの思い付きなのは確かですが、言わぬが花。さあ、こんな言い訳をすぐさま思い付いたわたくしを誉めても構わなくてよ。



 わたくしが誉められる事を待て!していると云うのにサラと内職の手を止めたタリス様が一向に動く気配がありませんわ。

 何故ですか。……も、もしや、悪役令嬢として間違えましたか?


「レイリシア様!」



 タリス様の突然の真剣な声にわたくし、姿勢を正しますわ。



「は、はい!ですわ」

「寄付のお返しではなく、これをお守りとして売りましょう」

「え?」

「平民でも買えるような値段設定にし、王族・貴族・富豪には寄付制も取り入れましょう。ーーレイリシア様のお名前をお借りできればやれますわ!」


 くわっと目を見開き、何事か算段を始めるタリス様……に、わたくし、恐怖を感じ、サラのスカートをきゅっと掴みますわ。

 だ、断罪イベントであのような凄みのある表情をタリス様にされていたら、わたくし、何もしてなくとも謝りましたわ。


 タリス様がヒロイン様でなくて改めて良かったですわ。



「そうですわね。色違いにピンクは恋愛成就、黄色は商売繁盛…青は、出世……赤で学業」

「お待ちください。タリス様」


 何かがめつい気配を漂わせ、もしかしたら前世持ちですか?と聞きたくなる事をぶつぶつ呟き始めたタリス様に待ったをかけるサラ。

 タリス様がサラに視線を向けると深々とため息を吐くサラ。



「その宗教の神は学業に関しては、あまり縁がないかと思われますわ」



 宗教!?



「あら、では、恋愛と金運と出世で手を打ちましょう」

「ありがとうございます」


 何故か通じ合う二人にわたくし、ぼっちなのですか?

 宗教ってなんですの?わたくし、特に信心深い方ではないですわよ?


「最初にお買い上げしてくださる貴族は大物が好ましいですわね」

「レイリシア様の交遊関係で一番は、やはり王族のシオン様ですわ」


 隣の国の王子ギルフォード様もおりますわよ?

 ちくちくと小物入れを作りながら、あーでもないこーでもないと言い合う二人。わたくし、前世の知識で何かなかったかと考えてみますわ。



「限定品を作ったり、当たりを入れてみてはいかがかしら?」

「まあ!素晴らしいご意見ですわ。さすがレイリシア様!」



 わたくしの言葉にタリス様が賛辞を!

 思わずによりと口角があがりそうですわ。わたくし、鼻も高々ですわ。もっと讃えなさい!ですわ。


 まあまあまあと、タリス様に誉められるたびにわたくし、どんどん、知識を披露しましたのよ。

 タリス様ったら誉め上手ですわ。……あら?そういえば、前世のお菓子の知識なんて、どうして披露してしまったのかしら?

 タリス様の目がキラキラ輝いていたから問題ありませんわね。


 サラがにこにことお口チャックのポーズを。ふ、わたくしの知識は、安いものではありませんのでそろそろ黙りますわ。


 他にもお手伝いくださる方を募りますね!とお約束くださったタリス様は頼もしく……商魂というものを体験させて頂きましたわ。



 わたくし、その日から当たりのお守りの中に当たりクジの代わりになるカードメッセージ係になりましたわ。


 恋愛成就にニンニク入りピンクなお守りはいかがですか?きっと、口臭が気になること間違いなし!ですわ。



 ……メッセージに『食事三十分後に歯をよく磨きましょう』や『お茶で口をゆすぐと宜しいですわ』と書いておきましょう。


 わたくし、悪役令嬢ですが、恋する人には優しいのです。

 金運と出世お守りは、『ストップ、犯罪!』『断罪、されたくないですわよね?』とカキカキ。


 ………ハッ!ヒロイン様探しを忘れておりましたわ!!




 内職を任せ、ショタ枠先生の課題も済ませたわたくしは、タリス様以外のピンク頭を探す旅に出ますわ。


 部屋で限定三十個の紫のお守りを作るサラに「しばらく探さないでください」と言ったら、ターナ様とアイラ様がいつの間にかわたくしの後ろをシズシズと歩いておりますわ。


 気配もなかったーーいつの間に、ですわ。



「髪の色がピンクの男爵令嬢ですか?タリス様以外居ましたかしら……?」

「そういえば、平民でレーリア様に目を付けられている少女はピンクゴールドですが」


 レーリアと同級生では、わたくしが出る幕がないではないですか。

 ヒロイン様はわたくしと同じ歳の筈ですので。



 あら、あちらから泣き声が聞こえますわ。

 わたくしは、学園の中庭の方から聞こえてくる啜り泣く声の方に足を向けます。



 ………あら、水浸しの少女がおりますわ。ピンクゴールド髪がふわふわと肩までありますわね。妹がいじめてる平民かしら?


「あらあら」

「まあまあ」



 ターナ様とアイラ様がわたくしに視線を向けますわ。わたくしの行動待ちですわね。

 ふ、悪役令嬢として、きっちりと対応を。


「レイリシア?」


 びくり、とハンカチを持ったわたくしは肩を揺らしてしまいましたわ。


 ……フレイム様とシオン様。


「何をしている」


 ……嫌ですわ。まだ何もしておりませんわよ。シオン様。尖った声はやめてください。


「……」


 フレイム様が泣いている少女に上着を貸そうとしておりますが、待ってください。


「その前に少しは水滴を拭った方がいいと思いますわ。貴女、ハンカチは?」

 顔をあげずに頭だけ振る少女ですわね。


 仕方ありませんわ。とわたくしが持っていたハンカチで髪を拭こうと手を伸ばすと、びくり、と少女が震えましたわ。……あら?


「おい」


 ですから、シオン様。わたくしではございませんよ。


「まあ!レイリシア様、見た目はきついですが、中身は小兎ですのよ」

「そうですわ!悪ぶってはいますが、捨て猫や犬をみると拾って帰って、親に怒られ半泣きという典型的な方ですわよ!」


 お友だち!


 大丈夫ですわよー。とお友だちのフォローに漸く顔をあげた……あら、可愛らしい子ですわ。涙に滲んだ碧眼が護ってあげたくなる感じを醸し出しておりますが、タリス様の商魂逞しいキラキラしい瞳を見た後では、ちょっと見劣り致しますわ。


 フレイム様が、にっこりと蕩けるような笑みを浮かべてますわ。



「レイリシアは、良い子だよ」



 フレイム様ーっ!!




「はぅ」

「「きゃああああああっ!レイリシア様!!」」



 わたくし、フレイム様の笑顔に浄化され、その場に崩れ落ちてしまいましたわ。


 ああ、ターナ様、アイラ様、膝が汚れてしまいますわ。わたくしの抱き起こそうと地に膝をつけてまで…っ、わたくし達ーーわたくしが断罪されない限りーーズッ友よ!


 大丈夫ですわ。絶対、芋づる式なんてさせないからね!

 魔の手が差し迫っても「あの子達は、わたくしが命じたことをしただけですわ。……わたくしに逆らえるとでも」と、絶対口を割りませんわ!

 ただ、残念ながら今のところ、何にも致しておりませんのでこの決意は、いつ効果を発揮出来るかわかりませんけど!


 悪役令嬢なのに本当に申し訳なくて…っ。



「わたくし、お二人のお友だちとして不甲斐なくて…っ」


「いいえ、私達、有りのままのレイリシア様が好きなのですわ!」

「ええ、空回ってるレイリシア様!見ていてともてゆか………楽しくて!!」


 友情を確かめるように抱き合うわたくしたちにフレイム様が無言で割って入って参りましたわ。

 あら、上着は結局貸したのですわね。


「レイリシア、歩けそう?」

「あ、……申し訳ありません。持病が」



 フレイム様にときめきすぎて、天に昇りかけてしまいましたわ。危険です。

 これが医者も治せねという難病()の威力、ですわ。


 あら、そういえば、あの少女は?と、ちらりと視線を送ると、シオン様は飽きたのかおりませんわね。

 さすがマイペース俺様。わたくし達一生わかりあえませんわね。


 ……あら?

 フレイム様の上着を肩にかけぎゅっと握り、わたくしを憎々しげに見ている少女。


 そういえば、フレイム様のイベントに悪役令嬢に水をかけられ、中庭で泣いているところで慰められ上着を貸してもらい、寮まで送ってもらうというものがございいましたね。


 あらあら、もしかして貴女がヒロイン様なのかしら?






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