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わたくし、何かまちがっていますわ。


編集が終わらなかった……。




 わたくし、気づきましたの。掃除とは奥深いですわ。



「あの、カビがついた場所がわたくしの手で綺麗に磨かれる……わたくし、すっかり癖になりそうですわ」

「「おいたわしいですわ。レイリシア様」」



 何故か目元をハンカチで拭うターナ様とアイラ様に使用済みのお茶っぱは、埃を取るのに使用するとすごく良いらしいと先程セラから仕入れた情報を披露すると、また「おいたわしい」と泣かれてしまいましたわ。

 ……食堂は、わたくしが平民限定でガーリックライス食べ放題にしたせいかニンニク臭がしますわ。

 これで、ニンニク臭がするのはわたくしだけではありません。

 高貴なわたくしと同じ匂いを纏えるのです。感謝して欲しいくらいですわ。おーほっほっほっ。

 ……フレイム様のご友人が鼻を押さえながらこちらに足早に近づいてきますが、わたくし、気にしません。何かご用かしら?

 攻略キャラの腹黒宰相候補のヴァイス様。

 ああ、銀髪のい丈夫な彼。水色の瞳にわたくしへの非難を込めていらっしゃりますわ。



「オズワルド公爵令嬢」

「あら、何かしら」

「……午後からの授業をどうするつもりだ」

「……」



 わたくし、うっかり動揺致してしまいました。ええ、確かにいかが致しましょう。平民達がニンニク臭い…。

 わたくしは、フッと意味ありげに微笑み返す。

「あら、ヴァイス様ったら」

「なんだ」

「わたくしが何も考えていないとでも?」

「………」



 にやり、と真っ赤な紅を塗った唇をあげると、ヴァイス様が半眼ですわ。

 フレイム様の次に付き合いが長いので、わたくしの悪役な笑みに騙されませんわ。困りましたわ。…ハッ、そうですわ。



「………ふ、……ゴキゲンヨ……」

「逃げるな」



 肩を捕まれてしまいましたわ。なんてこと!紳士ではありませんわよ!


 仕方有りませんわ。


「うっ…急に持病の」

「お前、先程おかわり五回してなかったか?」

「ーー食べ過ぎが!」

「「まあ、大変ですわ!」」



 ターナ様とアイラ様が蹲ったわたくしに手を貸してくれるわ。さすがお友だち!



「ヴァイス様、私たち、レイリシア様を保健室に連れていくという使命が」

「「では、ごきげんよう!」」



 二人の迫力に圧されたのか呆然とわたくしたちの逃走……違いますわ。戦略的撤退を見送るヴァイス様。

 おーほっほっほっ。ごきげんよう。


 わたくし、その日のうちにアゼル先生に捕まって「授業妨害?いい度胸だよね」と年上なのにショタ枠の妙な迫力の笑顔で説教されましたの。

 ですが、わたくし、悪役令嬢ですから、授業妨害?間違っておりませんわ。キリッ。




 ーーフレイム様とお勉強会をする事になってしまいましたわ。



 わたくし、ニンニクをここ三日、食べませんでしたわ。紅茶で何度も口をすすぎましたわ。

 ……どうして、妹のレーリアとその婚約者の第二王子シオン様がいらっしゃるのでしょう。

 ああ、わたくしとそっくりなストレートな黒髪・茶目をキリリっとつり上げた気の強そうな妹と金髪碧眼のゆるふわ髪で甘ったるい面の癖に俺様なシオン様。

 性格的にお似合いですわ。

 わたくしとフレイム様もお似合いな筈ですわ。しっかりもの同士ですから。ね、フレイム様。



「リシアは、また阿呆な事をしているそうだな」


 わたくしを勝手に愛称で呼ぶシオン様。別にどうでも良いですけど。



「まあ、わたくしは貴族の義務を全うしているだけですわ」

「……掃除やら教室中を異臭騒ぎにするのが、か?」



 あら、あちらで小鳥さんが鳴いていますわ。トルットルッルゥー。



「お姉様が平民に施しなどするから、我が家は笑い者ですわ」



 レーリアの言葉に空気が固いものになりましたわ。えぇ、王子もフレイム様も平民にお優しい方々ですから。わたくしとレーリアは、貴族寄りですもの。

 ですが、わたくしは平民に施しなどしておりませんわ。財力と権力の差を見せつけているだけですわ。失礼ね。


「そういえば、レイリシアは自分の後輩に一、二年の時の教科書をあげてしまったんだったね。俺ので勉強しようか」



 うっ、フレイム様のお優しさが辛い。持病の腹痛が…っ。



「しかも、平民に紙やインクを配ったり」

「あら、わたくしに必要だったから買ったのよ。平民にあげたのは、余った分よ」

「その割りには、リシアは全然勉強が出来ないな」



 痛い所をーー。

 からかうような王子をキッと睨み付ける。わたくし、負けませんことよ。



「ふふ、わたくしの手元には、その時の紙とインクで描いたフレイム様の訓練姿とお昼寝姿という大作が御座いましてよ」



 わたくし画ですわ!と高々と宣言すれば、サラがさっとわたくしの絵をテーブルに置いてくれようとしたのにーーいや、侍従様!

 何故、サラからわたくしの絵をとりあげるの!?

 フレイム様も、わたくしの肩を押さえて「勉強しなさい」 ……ああ、無情!ですわ!!

 覗き見していたことは謝りませんわ!


 順調にヒロイン様にわたくしとの差を見せつけておりますわ。




「タリスさん!また学業一位なのですね!」


 ふ、わたくしは、赤点ギリギリですわよ。



「まあ、このハンカチの刺繍素敵ですわ」



 そういえば、前にサラと一緒にした刺繍、途中で飽きて投げたけれどどこかしら?



「あら、ご実家がガーリックライスのお店を出店なさるのですか?……えーと……」



 ーーなんですって。平民に施す為に是非リサーチを!



「あ!レイリシア様!!」



 パアッと花を咲かせ、わたくしに走りよってくるヒロイン様事、タリス様。

 まあまあ、なんて野花のようにあどけない笑みなのでしょう。

 ふ、わたくしのように薔薇のように美しく咲き誇れないとこれから魑魅魍魎の貴族社会ではやっていけません事よ!

 おほほほっ。



「レイリシア様のおかげで、内職が次々と舞い込むようになりましたわ!私、王妃様のドレスにまで刺繍させて頂けることになりましたわ!」

「まあ、素晴らしい!」


 わたくしなんて、かわいそうな子を見る目をされて「シオンの側室に来て良いのよ。たくさん贅沢させてあげるから」と、もちろん。わたくし、きっぱりお断りしましたわ。フレイム様に真実の愛の相手が見つからなければ、わたくし、フレイム様の真横に居座る気満々ですわ。絶対居座りますわよ?早く真実の愛に目覚めないと、このままフレイム様のお、お隣がわたくしのものに!!


 くう、ヒロイン様、こうやって期待させて落とす気なのですわね。悪役令嬢として受けて立とうじゃありませんか。



「私の家は取り立てて産業らしいものがありませんでしたが、私がこのまま王室御用達になれるくらいのデザイナーを目指したく……縁を取り持ってくださったレイリシア様になんとお礼をと、レイリシア様のお知り合いの方々に頼んで」



 ヒロイン様の紅潮した頬を笑顔を保ちながら……あら?ヒロイン様にデザイナーなんてエンディング有りましたかしら?

 わたくし、首を傾げますわ。

 まだ何か言っておりますが、突然、わたくし、閃きましたわ。ーーハッ、わたくしとした事が、まさかそんな……。



「タリス様」

「は、はい…っ」

「ヒロイン様ではなかったのですね!」

「はい!?」



 わたくしったら、人違いでタリスさんに悪役令嬢な所業の数々を。ーーなんて事を!

 ちくり、と痛む胸。申し訳なさにわたくしは、タリス様の手を取る。



「……わたくしの専属になれるように精々腕を磨くことですわ」

「ーーはいっ!」



 間違ってしまったことは仕方有りませんわ。彼女にはこれから、ビシッバシッとわたくしが貴族としてどこに出しても恥ずかしくない教育をして差し上げましょう。……お父様にそっとお手紙でことの経緯とタリスさんのご実家への援助をお願いしたのにお父様ったら、『男爵令嬢に何させてるの!?……慰謝料はちゃんと払っておくから』……わたくし、貧乏男爵家を救ったのではなくて?

 ーーハッ、お父様はそれが不満なのですわね。わたくしったら、悪役令嬢の本文をうっかり忘れていましたわ。

 待ってて、ヒロイン様、貴女の悪役令嬢がしっかり出会いに行きますわ!

 もう、ゲーム期間半年切ってますけど!!



「ーー出会ってどうするのさ」



 呆れ返った表情の平民……とは、偽りの姿、隣国の地味系王子ギルフォード様に(何故か幼なじみになってしまいましたの)わたくしは、おっとりと首を傾けますの。



「フレイム様が真実の愛に目覚めるように」

「なんで」



 あら、なんでとはこれいかに。わたくし、フレイム様の幸せを願っておりますのよ。



「ヒロイン……に出会っても揺るがない愛が欲しいの?」


 わたくしの妄想とも言える話に耳を傾ける変人ですわ。まあ、だから癒し系担当でしたけど。



「そういえば、ギルフォード様、何故タリス様と一緒に居たのですか?」

「……質問を質問で返さない。フレイムが、君に関わった相手だから変なのか見極めようとして……信者だったけど」



 まあ、タリス様。どこかの宗教にハマっているのかしら。そういえば去り際にニンニクをくださったわね。

 ……貴族の間でも流行っているのかしら?



「そういえば、ギルフォード様」

「何」

「タリス様のご実家がガーリックライスの専門店を」

「信者を止めろ」



 あら?わたくしにそんな権限はございませんわよ?




 フレイム様がわたくしをデートに!ーーデートに!!誘ってくださりましたわ!



「お勉強会じゃないって嬉しすぎますわーっ!!」

「……そこは、貴方と二人ならどんな事でも嬉しいと」



 サラの苦言に耳を押さえますわ。……お勉強会のたびにフレイム様の口から出てくる異世界用語にわたくし、うっとりと美声のみを堪能するという特技を開拓致しましたわ。

 ふぅ……フレイム様のお隣で美声だけを堪能する。地獄から天国というのはこの用な状況なのでしょう。



「わたくし、自分が恐ろしいですわ」

「……次の考査の結果が恐ろしいのは私だけでしょうか」



 ……わたくしも恐ろしいですわ。



「大丈夫ですわ。ギリギリ卒業出来る予定ですのよ!」

「……公爵令嬢がギリギリ」



 サーっと血の気を引かせるサラ。ふ、わたくしのこの誰も彼もの顔色を変えさせる才能が恐ろしいですわ。


「あの、差し出がましいのですが、レイリシア様」

「何かしら?」

「……フレイム様の気持ちは別としてですが、あまり素行が悪ければ、あちらの方が家柄は下ですが、力のある侯爵家ですので、お嬢様との婚約破棄の打診をされる可能性も……」


 ーーわたくし、お友達のターナ様とアイラ様、そして学年一位のタリス様に急いでお手紙をしたためました。


 ヘルプー!ですわー!!


 ……別な意味で婚約破棄がある可能性をサラに示唆されて以来、わたくし、授業はカタカタと机にへばりついております。「オズワルド、真剣なのは良い。でも、煩い」と、そちらが煩いですわ。このショタ枠先生!



「ガンバラナイトステラレルノデスワ」

「ああ、漸く気づきましたか」



 この合法ショタ野郎。

 朗らかにわたくしの不幸を笑うアゼル先生め。

 わたくしの前世の知識をフル活用して、二次作書いて女子生徒に回してやるですわ!



 ーーハッ!殺気!!



 にっこり、とこちらを向いているアゼル先生。


「オズワルドは、卒業したいんだよね?」


 ……わたくし、悪役令嬢としての誇りを持っておりますわ。



「……袖の下はいかほどで…」

「誰か、フレイム(保護者)を呼んで来てくれないか?」




 アゼル先生、一考くらいしてください。無情!ですわ!!



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