第4話 狙撃
ジョブスは自分の部屋で、パソコンの画面を見ていた。画面には、連邦議会の襲撃事件の映像が映し出されている。その隣のモニターには、ジンフォニアックの構造とカメラ映像が遠隔的に表示されている。
彼は、パソコンのキーボードを叩き、指定のジンフォニアックに指示を送信。
《シルヴァ機動。狙撃標的、レイモンド・ダン 標的沈黙後、ケースを回収》
「塵になるがいい。駄作よ」
ジョブスは、近くに置いてある水入れからコップに水を注いで、口に流し込む。透き通る様な冷たさが彼の脳に刺激を与えていく。コップを置き、ため息をついて、液晶モニターの画面に映し出される中継映像を見つめていた。
当初の予定から、時間がずれている。レイモンドは足を早めながら少し熱くなった体を、ネクタイを外したシャツの隙から入る透き通る風に当たりながら、目的地に向かって歩く。
ミッキーは、冷静な口調で指示していき、モニターから写る状況や情報を逐一報告している。
『そのまま、左へまっすぐ向かってくれ』
「分かった」
レイモンドは背後から何か不穏な感覚を感じていたが、気にせず持っているケースを運ぶ為に歩きながら周辺の状況を確認している。
一般人が通るビジネス街に入り、人ごみをうまく右、左へと交わしながら、目的地へ向かう。
たまに、レイモンドの身なりを見て、怪訝そうにしている者や心配しながらも自分の行動に移る者、無関心で通り過ぎる者がいて、それをレイモンドは嫌な感覚を受けていた。
「やれやれだ。もっと良い服の状態で、歩きたかったよ」
『そう言うなよ。レイ。その仕事が終われば、司令部が無償でスーツを新調してくれるそうだぞ』
いつもなら財布の口が堅い司令部の思わしくない態度に怪訝そうレイモンドは感じた。
「珍しい待遇だな」
ミッキーもその思いには同感だったらしい。
『あんたもそう思ってたか? まぁ、高級品ではないだろうがな』
「いいブランドに変えてもらうぞ。で、このまま左に入ればいいのか? また路地裏だが……」
『それでいい。そのまま行ってくれ』
「了解」
レイモンドは指示通り、路地裏の通り道を進んだ。
誰もいるような気配はなく、ごみやガラクタが道端で散乱して、ここ最近、人の出入りはほとんどない様に伺える。
建物の壁も落書きやひび割れ、一部欠落によって風化、老朽化していた。
「おい! 本当にこの通りで合っているのか?」
『信じろよっ!』
オペレーターの声とその内容と眼前の状況に対して、レイモンドは内心、心配しかなかった。
だが、その心配というのは、当たるもので。
レイモンドの背後から、赤いレーザーサイトが頭に定められているのが、近くの窓ガラスの反射投影で感じ取った。瞬時に頭を下げて、赤く放たれる閃光をそらす。
1発の弾丸がどこかから放たれ、空を切り、誰も気づかない速さで、レイモンドの頭上を過ぎ、近くの建物の壁に着弾する。
着弾した瞬間の火花と炸裂音でレイモンドは背後からの襲撃予測が当たった事を理解した。
「うおっ!? やっぱり!?」
レイモンドが歩く通りの壁が弾け、コンクリートが欠けたと同時に、炸裂音がどこかのビルから発生したのを理解し、撃たれそうになった彼は、近くの自動集合型ゴミ集積箱の影に隠れ、相手の場所と使っている銃器を確かめるが、集中に狙っているのか、何発もレイモンドに向けて撃ちこんでくる。
何発もゴミ集積箱の隅に弾丸が弾いたと同時に発生する硝煙と火花がレイモンドに自分が襲撃されていr事をより強く感じさせた。
状況を把握できていないミッキーは、レイモンドに訊く。
『どうした? 襲撃か!?』
「背後から撃ってきやがった。とにかくなんとかできないか!?」
慌てながらミッキーは、状況を確かめるべく、司令部のパソコンから都市部の監視カメラ映像をハッキング、駆使して、レイモンドの居場所と状況を確かめようと試む。
『待て、今、調べるから!』
耳から響くミッキーの声がいきなり静かになり、その間に銃声もなく、通りは静かになった。
「クソッ!! もうなんでだよ!」
静けさを取り戻した通りでレイモンドは陰に隠れながら、状況を考える。
現時点で敵は1人。使っている武器から放たれる炸裂音が同じ、その上、撃ってくる弾丸のタイミングが全て、1人だけだという事を示していると判断。
それに加えて、相手が使っている武器は、長距離用のスナイパーライフル。
レイモンドは相手の動向を疑いながら、自分が持っているレールライフルで、応戦するが、相手の場所が掴めず、相手に当たる事はなかった。
「どうする?」
彼は周りを見渡しながら次の手を考える。しかし、相手に対して自分の位置を比較すると断然不利。
状況はまずい方向へと向かっていると彼は察した。このまずい方向を軌道修正する為に策はないかと考えはじめるが、いきなり考えても出てくることはない。レイモンドは相手の動向を伺いながら自分の持っている物を確認。
現在の自分が持っている装備は、弾丸が込められたレールライフルとカスタムモデルのハンドガン2丁、そして何かが入ったケース。
レイモンドはゆっくりと自分の周りを見つめていく。
あたり一面、ヒビや落書き、手入れもされておらず風化したコンクリートやレンガの壁ばかり。自分を弾丸から守ってくれるような頑丈な壁ではない事を理解した。
持っているレールライフルで反撃するしかないとそう思っていたが、しかし閃きというのは、いきなり来る。
レイモンドは、一度残弾数を見る為に、レールライフルの側面を見てみた。
「これは……」
第4話です。話は続く。