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Messenger  作者: 井鷹 冬樹
2/9

第2話 異変

【登場人物】

 

レイモンド・ダン    中尉

マーティン・バクスター 中尉

ベイ・ミッキー     司令部オペレーター

 午前8時半。彼らの目的地は、家から20キロ離れた司法省の地下駐車場。一度、車を乗り換えてから、勤務開始となる。

 今日はやけに司法省は忙しさに駆られ、ゴタゴタとしていた。

 レイモンドは、指定される車のボンネットに寄りかかり、地下駐車場の様子を確認している。


「今日は、だいぶ時間がかかりそうだな」


 周りにも同じ4WDが止まっており、いわゆる職場仲間が集まっていた。

 地下駐車場の通用口から、4人がかりで鉄のボックスを運ぶ司法省職員とサブマシンガンを携行した重装備の警備員達が出てくる。

 レイモンドは、ボックスを目で確認し、4WDのトランクに周り、トランクを開けた。

 ボックスをトランクに入れたと同時に、重装備をした男がリストをレイモンドに渡す。


「ダン中尉。これがリストになります。これをいつもどおりに連邦議会の方に持って行ってください」


「了解。ルートについて変更は?」


 その間にほかの部下が積荷の入ったアタッシェケースをトランクに入れている。


「ありません。いつも通りとの事でした」


「そう。ご苦労さん」


 レイモンドは1つの積荷を確認してから、トランクを閉めて、助手席へと戻る。


「いいぞ。出してくれ」


 バクスターは車のエンジンを起動させた。

 車に備え付けられている無線機でレイモンドは報告する。


「メッセンジャーから司令部イーグルへ、積荷メッセージを載せた。これから連邦議会場へ向かう」


『司令部了解』


 車はゆっくりと発進し、地下駐車場を出て、司法省の出入り口を通って、交通道路へ入る。レイモンドとバクスターが乗る4WDの背後に、同じ型の4WD5台が列を作って進行していく。

 目的地となる連邦議会場まで後、あと10キロあるかないかの距離。

 いつもどおりの空気が流れているのをレイモンドは感じたが、今日はやけに静かであるのを妙に感じた。


「やけに静かだな」


 車が進行している道路には、対向車両が1台もなく、ましてや同じ進行している車はレイモンドの車と後続に続く4WD5台。

 バクスターはふざけながらレイモンドに向けて返す。


「フットボールの大会だったっけか?」


「こんな朝早くはないだろうよ」


 レイモンドは、無線機を持ち、司令部に連絡する


「こちらメッセンジャー。今日のオペレーターは誰だ?」


 レイモンドの問いかけに、若々しくひょうきんな男の声が聞こえる。


『俺が今日の担当だよ。ダン中尉』


「おいおい。冗談だろ? 誰だよ。この方向音痴に頼んだの?」


 バクスターは隣でその男の声を耳にしてうんざりしている。


『方向音痴とは失礼だよなぁ。事故からは免れたからそれでいいじゃないか、少しはこのベイ・ミッキー様を信用しろよ』


「はいはい。分かった。次のルートを案内してくれ」


『了解! ん!?』


「どうしたんだ?」


『……1機の自動無人戦闘機トークンがそちらに向かっているぞ!』


 レイモンドが車のカーブミラーで確認する。

 確かに後ろの上空から、戦闘機の機体が見えた。既に攻撃態勢に入っているのか、モーションが変わって、ロケット弾が見える。


「まずい。バクスター避けろ!」


「ああ! 分かってるって!」


 バクスターは自分のドライビングを信用して、ハンドルとアクセルを駆使してスピードを出しながら左右へ蛇行していく。

 その間にも戦闘機は音速で接近し、標的を補足。戦闘機の先頭に備え付けられたレーダーカメラが標的の姿、速度を感知し、適正な攻撃範囲を作り上げる。

 標的はレイモンドたちが乗っている車。

 運転手の荒々しいドライビングの中でレイモンドはシートベルトを外し、後部座席に移り、バックシートの布を剥がし、緊急用の武器ケースを取り出した。

 ホルスターにつけているピストル2丁で戦闘機を相手するなんて電子コミックや立体アニメのガンマンでならやってのけれるかもしれないが、レイモンドはそんな次元の生き物ではない。

 到底、無理だと、誰でも分かる相手だ。

 レイモンドは、武器ケースに入っているマグネティックレールライフルを取り出して、弾が入った特殊マガジンをライフルに装填する。

 その間にバクスターはカーブミラーを目で確認しながら、空に浮かぶ敵の動向を伺いハンドルを切った。


「来るぞ! 後方40m!」


「クソッ!」


 戦闘機はレイモンドの車に向けて、ロケット弾を放つ。弾丸は、空を切りながら、車に向けて、着弾しようと接近。


「来たか!! 揺れるぞ!」


 バクスターはアクセルを踏み、スピードを上げながら、ロケット弾を避けようとし、車体を左右に揺らせた。

 車は、車道を外れ、歩道へと侵入し、スピードを上げながら走行する。

 揺れる車中で、レイモンドはバクスターに聞こえるよう叫ぶ。


「もう揺れてるよ!」


 弾丸は、バクスターのドライビングのおかげかレイモンドの車を避けて、右後輪のアスファルトに着弾した。

 着弾した瞬間、大きな火炎がアスファルトに亀裂を発生させ、振動を発生させる。振動は、バクスターが運転する車にも衝撃を発生させるものだった。

 シフトレバーやアクセル、ハンドルを駆使して、なんとか保たせようと運転手は努力するが、ロケット弾の威力は、強かった。


「くそっ」


 ハンドルを切ることができず、衝撃により後部右タイヤが破損し、その影響で、車はスリップを起こした。

 レイモンドは、なんとか体勢を整えようと踏ん張ったが、耐える事ができなかった。

 車体が斜めにそれ、右後輪が浮き、それに続けて、右前輪が空を走り始める。

何とかしてハンドルを切ろうとして、車体を下の位置に戻そうとバクスターは努力するが、それももう遅かった。


「ダメだ! きかない!」


 車は、スピードとスリップの勢いで安全分離帯に激突、引きずりながら走行し、最後は分離帯を外れ、左から横転。数秒間、レイモンドの体は宙に浮き、無重力を強制体験する事になった。横転したと同時に体をシートにぶつけ、激痛が腹部に走る。

 車は横転して、数十メートル車体を引きずらせた後で、停止した。

 レイモンドは車が横転した事実を、無重力体験、逆さに写る外の景色、激痛が走る腹部と、乱れた車内、バクスターの様子で感じ取る。


「バクスター!」


 彼の意識はなく、逆さまの状態で浮いていた。


「くそっ」


 レイモンドは割れた後部座席の窓からライフルを出す。

 左耳にインカムをつけて、ミッキーに連絡を取る。


「ミッキー! 襲撃された! オペレートを頼む!」


『ああ、分かってるよ。こっちも色々と……』


 慌てているミッキーに対して、レイモンドは怒鳴った。


「ミッキー!!」


 怒鳴り声を、インカム越しで聞き取り、余計、ミッキーを慌てさせる。

 彼はそのまま、オペレートを続けていく。


『はい。分かってます。分かってますよ! ちょっと待ってくれ! 奴が旋回し始める! 標的は、車だ!』


 戦闘機は、横転した車を確認しながら通り越した。

 音速の速さで敵がレイモンドの車両を通り過ぎたと同時に、嫌な音がレイモンドの耳を襲うが、そんな事どうでも良い事。

 急いで、トランクに乗せていた積荷のケースをレイモンドは車外へと出した。

 そうしている間に、戦闘機は旋回をし始め、再び横転した車に向けて接近し始めた。


「糞野郎がっ」


 彼はバクスターのシートベルトを外して、自分の体を車外へ抜け出した後で、バクスターを車外へと救い出す。

その間にも再び、戦闘機は第2波の攻撃ステップへと移り、標的を補足。もう1発、ロケット弾をダメ押しとばかりで横転した車に向けて浴びせる。

 弾は車のエンジンに命中し、大きな爆発音と共に、周りに車の破片と火炎を撒き散らした。火炎の熱さはレイモンドに苦痛を与える。


『再び、旋回してくるぞ。どうやら狙いは車じゃないらしい!』


 レイモンドはバクスターの体を引きずりながら戦闘機を目で確認する。

 ミッキーの言う通り、再び、奴は旋回を開始していた。


「くそ!」


バクスターの体を道路のビル壁まで避難させた後で、レイモンドはレールライフルを持ち、戦闘機に向けて狙いを定める。

 800、700、600、戦闘機は再び、大きな空を切る音を立てながら、接近。

 レールライフルの安全装置セーフティーを外し、自動スコープで戦闘機の動向を捕捉マーク


「来いっ。来い来い来い来い! 獲物はこちら。お遊びだ。小鳥ちゃん」


 レイモンドは、戦闘機の主体となっているカメラに向けて弾丸を放った。

 青い空気痕を発生させながら光の速さで放たれた弾丸は、戦闘機の操作をしている中枢知能を撃ち抜いた。

 戦闘機は火花を発生しながら高度を落とし、アスファルトの白線に機体を叩きつける。ロケットの火薬と機体に使われている燃料が引火し、大きな爆発を発生させた。

 レイモンドは、体を近くの壁に伏せて、爆風から逃れるように体を壁に付近のガードレールに覆う。

 熱風が彼のところまで押し寄せ、額から出る汗が冷たく感じていた。

 構えていたライフルを下げ、乱れたスーツのネクタイを外し、積荷とバクスターの様子を見つめる。積荷は無事。そして助けられたバクスターも五体満足でいるが、頭部を強打したせいか、出血がひどい。

 レイモンドはインカムで連絡する。


「救援を要請する! 急いでくれ! 場所は、司法省付近のアルヴァン通りだ!」


『今、要請したよ。ちょっと時間がかかる!』


 司令部内では慌ただしく人間が動いている中で、ミッキーは冷静に保ちながら、レイモンドに報告する。


『レイ』


「なんだ?」


『何者かによる襲撃が起きている。1時間前に、連邦議会が襲撃されて、ファイルの更新や連絡、データ送信ができない状態なんだ。実質、その荷物をその身の力で運ばなくちゃいけなくなった』


 レイモンドは落ちたままの積荷が入ったケースの付近まで行き、しゃがみこむ。

 ケースの状態は少し、凹んでいるのがわかるが、丈夫。


「……」


『なるだけ早く、連絡が取れるようにやってみるよ』


 ゆっくりと彼は積荷が入ったケースを拾い、インカム越しからミッキーに告げる。


「ミッキー。ここからの最短ルートは?」


 レイモンドはケースを持って立ち上がり、上着を道端に投げ込んだ。


『住宅街を抜けて複合施設に入り、そのまま直進するしかないね』


 腕時計で時間を見ると、既に予定の時間より遅れているのが理解できた。


「分かった。それで行こう。後、急いで上層部に連絡してくれ。こちらも妨害ブラック・アウトが起きたと……」


『よし。まずは、あそこの狭い路地通りをまっすぐ行ってくれ』


「ああ」

 

 ケースを持ち、ライフルを背負う。レールライフルの重さは、軍隊に入った時に知れ渡った仲だ。いつもならどうってことはないが、あの状況の後だと、若干、だるさを感じた。


「くそっ。こんな予定じゃなかったんだがな……」


 軽く頭を掻いてからレイモンドは、歩き始める。


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