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Messenger  作者: 井鷹 冬樹
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第1話 仕事

 

 2037年インターネットと電子・通信における技術の発達により手紙という、紙の媒体が存在し無くなった世界。

 メッセージや伝えたい事は、ほとんどネットによるチャットや電話で済む事ができた。

 しかし、ただ1つだけ。ネットやチャットでは済まされない物ができ、ある指定の場所へ送らなければならなくなったのだ。

 



 液晶画面から写しだれている映像からニュースキャスターの声が聞こえる。


『本日、人工人間、通称:ジンフォニアックの作製禁止法案が可決され、文章化されました。この法案が可決された事により、人工人間の作製が禁止となり、飽和が叫ばれていた諸問題への改善が見える道筋が立てれる様になります。ここで、ニンフォニアックについて専門の方に解説を……ニンフォニアック作製の第一人者である。ジョブス・クオーツマン博士にお越し頂いてます』


 映像が切り替わり、ジンフォニアックの構造が流れる映像になった。


『まずは、彼らについて説明を……ジンフォニアックは、ロボットやクローンとは違い、外見は人間そのものでありますが意思を持たない。操作する人間だけの指示を受けて動く。一種のアンドロイドと呼んでも過言ではないでしょう』


 キャスターは博士の話を聞きながら質問の原稿を横目で見ている。

 博士はそれを承知ながら説明を続けた。


『体内は電気と金属で構築されています。その為、流れ出るものとして、血ではなく金属と電気の摩擦によって発生する金属の塵が液体として巡回します。その為、黒い血。みなさんから言えば、黒血ブラック・ブラッドと呼ばれています……』


 キャスターは頷きながら本来の質問へとはいる。


『博士、今回の法案についてジンフォニアックがどうなるのでしょう?』


『それまで、ジンフォニアックは、我々がやりたがろうとしなかった仕事を担って今日を渡り歩いてきましたが、中には、良からぬ事で彼らを利用としている者がいる事により犯罪・違法を行うジンフォニアックの数が増えてしまった事です。その上、現在国家の人口数とジンフォニアックの数の比率が押し始めてきている事を受け、国家が重い腰を挙げたわけです。今回はそれに伴い、新しい連邦法も文章化されるみたいですね』


『なるほど。では、現在、連邦議会の様子を、モニークが行っています。モニーク』

 液晶画面に写る映像は消えた。




 朝7時、レイモンド・ダンは、いつもの様に、やけにうるさい電子音を流す目覚まし時計に起こされた。


「……ったく」


 手探りでベッドの隣に置いてあるチェストの上を探り目覚ましのボタンを押す。

 音は鳴り止み、毛布から顔をだして、軽い欠伸をした。最近は余り疲労が取れてないせいか、仕事に対して若干、やる気を起こす事はできなかったが、仕方なくゆっくりとベッドから出て、仕事に行くための準備をする事にする。

 レイモンドがベッドから立ち上がって、移動を始めると、リビングに停止していた家事用ロボットが起動した。


『おはようございます。レイ様』


「……おはようグランツ。卵2つ、ハム1枚のハムエッグを作ってくれ。スープじゃなくコーヒーで。アイスブラックで。あ、トーストは30秒でいい」


『かしこまりました』


グランツはレイモンドの言われた通りの料理を早速作り始める。

 クローゼットから、今日の仕事着であるスーツの色を決めて、手に取った。


「今日は黒にするか」


 ネクタイは、いつも無地。薄青の斜線が入った藍色のネクタイ。

 洗面台に、仕事着セットを持って、彼は仕事に向かうための準備をする。

 迎えが来るのは、8時。

 1時間後だ。

 幸いレイモンドの髪の毛は、長髪でもなければ、パーマとかの類ではない無難な薄茶がかった黒短髪だった為、ヘアセットの時間はそんなにかからなかった。

 ワイシャツを着て、ネクタイの結びを鏡に写る自分を見ながら合わせていく。


「あっ、クソ。間違えた」


 合わせ終わった後は、自動剃刀で、髭を整え、綺麗な肌にする為にした。

 ズボンを履き、ソックスを着け、スリッパから革靴へと履き替える。

スーツの上着をそのままハンガーに掛けたままリビングへと持って行き、ソファーの背もたれにかけた。

 レイモンドは手を1回叩き、壁に備わった薄型液晶モニターの電源が入り、ニュース映像が写っている。

 レイモンドはそれを見ながら自分のチェアに座って、朝の食事を待つ。


「今日の連絡は?」


『3件です。タイムズの朝定期ニュースメール・保険会社からの保険宣伝、コールソン氏からの録画映像メッセージになります』


「録画映像を」


『かしこまりました』


 グランツは、録画映像を壁の液晶モニターに転送し、再生する。

 それまで、ニュース映像だったものが、藍色のスーツを着けた中年のスキンヘッド男性がモニターに写っている。

 いかにも威厳を感じさせられる姿。


『おはよう中尉。定刻通りに車が来る。連邦議会場で会おう。あっ、そうそう。この前の息子の誕生日プレゼント、あれ、少々でかすぎだぞ。まぁ、アレックスが喜んでいた。ありがとう』


 再生映像は終了し、モニターは、ニュース映像に戻った。


「あなたのプレゼントが小さすぎたんですよ」


 レイモンドは、軽く笑みで返していた。

 1人用の食卓にグランツが作った食事が並ぶ。


「ありがとう」


『いえいえ』


「俺が出た後の家事は頼む」


『いつもの様に完璧に仕上げておきます』


「頼むぞ」


 グランツは、次の家事をする為に、洗面台へと向かった。

 その間にアンドロイドが作った料理をレイモンドは、食す。

 作った料理は、プロのシェフと同じレベルをその場で提供してくれるからレイモンドも文句はなく美味しく頂いた。

 食事を食べ終えて、コーヒーをゆっくりすすりながら、ニュースの映像を見ていた。

 内容は、新しい連邦法成文が作成されたというニュース。


「新しい連邦法か」


 連邦法は日本の国で言う憲法みたいなもので、俗に言う憲法典という奴である。

 レイモンドは、左手を横に振ってチャンネルを変えた。丁度、時間が50分になり、レイモンドは、席を立つ。

 洗面台で歯を磨き終わった後で、仕事に必要な道具を取りに。洗面台から自室へと移り、鉄製クローゼットの暗証を解着始めた。ボタンを打ち込んだあと、次は声紋認証で、ロックを解錠させる。


「レイモンド・ダン」


 認証画面から、《Raymond_Danレイモンド・ダン》という名前の文字と声の波長を照らし、合致と判断され、認証が終了する。

 ロックが解かれ、レイモンドはゆっくりと両扉を開いた。中から、SIG P229とFN Five―seveNがそれぞれ、弾薬が入ったマガジンと共に現れる。彼はそれぞれ、弾薬が入っているかを確認し、マガジンを装填。隣のクローゼットに掛けていたショルダーホルスターをワイシャツの上に装着し、 それぞれの拳銃を自分のショルダーホルスターにしまった。軍用の電波腕時計を手に取り、左手につける。


「よし」


 時間は55分になり、彼は自室からリビングへと移動して、垂れ流していたテレビの電源を落とす。

ソファーにかけていた上着に手を通し、自分の姿を確認し洗面台へ向かう。

 いつもの様に、元気な自分の姿を確認し、時間を見て、自宅の玄関を出る。

 家を出る前にグランツに告げた。


「晩飯作って置いといてくれ。頼んだぞ」


『はい。かしこまりました。レイモンド様、お気を付けて』


「ああ」


 玄関のドアを閉め、通りに目をやると1台の黒染めの4WDが近づいてきているのを確認した。

 レイモンドは近づいてくる車に手を振り、自分の存在を気づかせる。

その返しとして、車もクラクションをレイモンドに知らせる様に鳴らした。

 車はレイモンドのいる所で止まり、助手席の窓が開いた。

 助手席には誰も座っておらず、運転席に、筋肉によって余りスーツを着こなせていない屈強そうな黒人が乗っている。

 男はレイモンドに挨拶を交わした。


「おはようさん。レイ」


「おはよう。バクスター」


レイモンドは、助手席のドアを開けて、乗り込み、シートベルトをつける。


「定刻通りだな」


「行こうか」


 マーティン・バクスター中尉は、ハンドルを持ち、アクセルを踏み始める。

 バクスターは、左片手でハンドルを握り、アクセルを踏んで車の直線進行を行いながら右手で無線を持ち、連絡をする。


「メッセンジャーから司令部イーグルへ、ダン中尉が乗った。応答せよ」


司令部イーグルからメッセンジャーへ。そのまま目的地へ。積荷メッセージが待っているそうだ』


「了解」


 無線機を元の位置に戻し、助手席の背に持たれた。


「やれやれ。これから面倒な1日の始まりだな」


「いつもそうだ」


 これから大きな仕事が待っている。

 バクスターはハンドルをきり、車を右へ曲がらせ、走行させた。



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