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第四話:装備品は装備しなければ効果が……確認もしましょう

「どうしたんだ?」


 急に立ち止まるエレナにリトが声をかける。


「……ごめん。辺りを照らそうと思ったんだけど、魔力が切れていたのすっかり忘れてた……」

「回復アイテムとかないのか?」

「傷を治すものは少し持ってるけど、魔力は自然回復だけよ?」

「いーじゃん自然回復! はぁ……いままでどれだけ回復アイテムをケチってきたことか……その心配がなくて済むんだな」

「そんな便利なアイテムがある方がうらやましいと思うけどなぁ。この地下道を抜けるとなると……あと数時間は回復するのを待つ必要があるかも。それじゃあ日が暮れちゃいそう」


 エレナは時間を心配する。


 この地下道を抜けた先は森の中だ。暗くなってからでは奇襲を受けやすく危険度が増す。だからエレナはできる限り日が昇っている間に村に着きたいと考えている。


「そんなに待つ必要あるか? 明かりだったらすぐそこにあるだろ? 持って行こうぜ」


 リトがある場所を指差す。


 その先にあるのは――サンストーン。


「あんな大岩どうするつもり?」

「決まってるだろ。砕いて持っていく!」


 リトは腰に掛けてある鞘から長剣を抜き、大岩――サンストーンに向かって構えた。


「無理だって。あの鉱石とても硬いのよ」


 エレナが忠告する。


「ふっ、苦労して手に入れたこの『エターナルソード』の力、なめてもらちゃ困るぜ!」


 忠告なんてなんのその。自信満々のリトは大岩に向かって一直線に走り出した。


「うおおおおおお」


そして、岩の直前でジャンプし振り上げた剣をサンストーンにたたきつける。


「はあ! ――っ!」

 ――ガキンッ。

 

 甲高い音が地下道内に響き渡る。


「いててててて……なんだこの石!?」


 剣と一緒に岩にはじかれ、しりもちをついたリトが驚きの声を上げる。


 ――サンストーンには傷一つついていない。


「だから言ったじゃない」


 エレナが彼の元に駆け寄ってきた。


「この最強の剣でも敵わないとかマジか……いやもしかして……げっ!」


 リトは傍に落ちた『エターナルソード』を拾い、剣全体を見つめる。そして、その剣が刃こぼれしていることに気付いた。


「さすがにこれは……。エレナ、ちょっと聞きたいんだけどこの世界に妖精とか精霊っているか?」

「……妖精? 御伽噺おとぎばなしでしか聞いたことないよ?」

「だよなー。道理で思うように切れないわけだ。加護がないんじゃあなぁ……。これじゃあただのロングソードじゃないか……待てよ。ってことはこの鎧もただの鉄の鎧に……。装備は引き継げないってことかよ、ちくしょぉ」


 がっかりするリトをよそに、エレナはこれからどうするかを思案していた。


「はぁーあ、周りの敵が強い中、せっかくダメージを受ける通路も越えて手に入れたっていうのに、使ったのは最後のちょっとだったし、今回斬りまくろうと思ったのになぁ。無駄になるのは慣れてるけどさ。慣れてるけど。ちょっと期待したこの気持ちはどうすればいいんだよ。この岩にぶつけるのか? 無理だったよ。それに――」

「――あの、もういい?」


 エレナがリトの愚痴を制す。


「やっぱり日が暮れる前に村に着きたいの。だから明かりもないままでも進みたいんだけど」

「たいまつもなしに進むとかマジで? 二週目でもあるまいし、道に迷わないか?」

「外に出るまでに分かれ道が二箇所あって左、右の順番で通ればいいだけのはず。だから慎重に進めば大丈夫だと思う……多分」

 

 エレナは地下道の構造――村までの道はある程度知っていた。しかし、分かれ道までの距離は感覚では分かりにくい。最初は左の壁伝いに歩いていけばいいが、どのくらい進んだところで右に進路を変えればいいか判断するのは難しい。それに実際通るのは初めてだから記憶だけで進むのに不安があった。


「そんな不安そうな顔をするなよ。マップが分かっているんだろ? なら目的地にたどりつくって! 歩き回れば何とかなるさ!」


 リトが明るく励ます。


「その時間がないから問題なんじゃないの……。はぁーあ、魔法が使えないのがこんなに不便だと思わなかったなぁ……」


 普段は膨大な魔力を持つ身のエレナ。魔力切れには全然慣れていない。いまさらもうちょっと配分して使うべきだったなぁと後悔する。


「気付くの遅いなー。ちゃんと町に戻る用のMP――いや魔力を残すのは基本だろ」

「はいはい、基本基本……」


 エレナは突っ込む気力なくつぶやいた。



「そういえばさっきはどんな魔法を使おうとしていたんだ? というよりなんて呪文だっけ?」


 リトが気になっていたことを口にする。


「『灯火トーチ』っていう火の魔法だよ。小さな火の玉を周りに浮かべることで辺りを照らすの」

「へぇー、俺も試してみるかな」

「えっ? リトは魔法を使えるの? どうみても剣士だからてっきり使えないのかと思ってたんだけど」

「この世界で使えるかは分からん! 自信はない! 最初から魔法が使えることなんていままでほとんどなかったからな。でも今回はいろいろ引き継いでるし……なーに、物は試しよ。やってみる価値はあるだろ?」


 リトはニヤリと口元に笑みを浮かべて言う。


「まあそうかもしれないけど……そうね。一度試してみるのもありかな。ただこの岩を斬れなかったこともあるし、期待はしないでおくね」


「よーし、はぁー……ふぅー……『灯火トーチ』!」


 リトが呪文を唱えた直後、二人の周りに小さな火の玉が浮かび、明かりを灯した。


「どうだ!」

 勝ち誇った顔をするリト。


「まさかほんとに使えるなんて……。でもよかった。これで進め――」


 エレナの言葉の途中で急に火の玉が消え、あたりが暗くなった。


「ちょっとリト! なんで消しちゃうの!」

「えっ!? なんでと言われても……むしろなんで消えたのか俺にも……」

「ちゃんと魔法に集中してた?」

「もちろんさ! 連続で失敗したら恥ずかしいからな! ちゃんと呪文の前に深呼吸もしたぞ?」

「その後は?」


「…………へ? 後って?」


 リトがきょとんとする。


「呪文を唱え終わった後よ。維持しないと明かりが消えちゃうに決まってるでしょ!」

「いや決まってると言われてもだなぁ、前の世界ではある程度歩いてから呪文の効果が消えてたし……まあいいや、もう一回……『灯火トーチ!』」


 再び二人の周りを火の玉が照らす。


「くぅ……魔法に意識し続けるって……結構難しいな」

「慣れれば楽になるよ。……よし、じゃあ時間もないしさっさと進もっか。魔法も使えるようだから進む途中いくつか教えてあげる。……まあ火の魔法以外使えるかどうかは分からないけど、一応知っているものは話すつもり」

「おう……悪いが……聞くだけにする。話しながらだと――」

 火の玉が消える。

「――『灯火トーチ』。……維持できねぇ」


 魔法を使いながら話すのに苦戦するリト。

 今までの世界は『話し』ながら『調べる』『攻撃』しつつ『逃げる』など、二つのことを同時に行動することができかったのが原因だった。


「本当はリトの元いた世界をいろいろと聞きたかったんだけど……仕方ないわね。村に着いてからにしようかな」


 エレナは先に歩き始める。


「ちょっと待て! 俺が先頭で歩きたい!」

「いや道知らないでしょ! ……それとまた消えちゃったから、早く明かりつけて!」

「だって主人公は俺だし! ……まさかエレナが主人公……いいや、ないない。だって女性で魔法使いが主人公じゃ最初の戦闘が時間かかって大変……さすがにそれは新しい世界とはいえ変わってないはず……」

「もう男なんだからうじうじ言わない! 早く呪文唱えて行くよ!」


 時間に余裕がないエレナは少し強めに怒鳴った。


「男だから……か。確かにひ弱な主人公というのはよくないな。でもまてよ、ちょっと前『逃げちゃダメだ』とかいう主人公のも人気があったような……。いやしかし、俺のしょうには合わない……なら……」


 リトはぶつぶつ呟いた後、ポンっと手を打った。


「よぉしわかった! エレナに先に進んでもらおう。ただし前を歩かすのは今回だけだからな!」


「そう言われてもリトは向かう方向知らないだろうし。たぶん大抵私が引っ張っていくことになると思うんだけどなぁ」

 これ以上の言い争いは面倒なので、リトには聞こえないようエレナは小さくつぶやく。


 彼女の後ろをリトは渋々付いて行った。

リトの初期装備……

武器:ロングソード × → なまくら剣 ○

防具:鉄の鎧    × → もろい鎧  ○

装飾品 ???


能力上昇値は低い。だって初期装備ですもの。

 



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