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第三十八話:魔王でも会心の一撃は食らいます

 お気に入り登録数200越えてました。

 急にアクセス数が伸びていたのでびっくりです。ありがとうございます!

 

「はぁ……まだ歩かねばならんのか……」


 方向山に向かい、村を出て早三十分。

 山を登り始めてまだ間もないふもとだが、ダクドの足取りは重く、不満を口にする。


「第一、村にドラゴンが来るまで待っていればよかろう。なぜいちいち我輩らが出向く必要があるのか……」

「そりゃお前、いままでは俺みたいな勇者を待っていればよかったかもしれないけどさ。よく考えてみろよ。俺らは魔王に用があるから魔王城まで足を運ぶわけだ。ドラゴンにもう一度村を襲う用事があるか?」

「むう…………」

「それに――」


 ドラゴンに攫われた人の安否を早く確かめるためにもこちらから仕掛けなければならない……よりも、


「新しいエリア、ダンジョンがそこにあるんだぜ! 早速行くべきだろ!」

「そういうものなのか!? まあ数々の旅をしてきた貴様が言うのなら間違いはあるまい……。しかしあれだ、勇者というのも大変なのだな、ここまで移動ばかりとは。もし次に我輩が魔王として君臨したなら、城の入口に転送装置を用意してやろう。一瞬で我輩の王座のある部屋に着くように」

「……やめてくれ。そんなのあってもまず使わねえから。アイテム回収したいし、レベル上げもしたいんだよ」

「こんなに疲れるというのに変わってるな……シャム姫もふらふらしているではないか」


 ダクドは後ろを振り返り、ゆっくり歩くシャムとエレナを見やる。


「――あっ、すいません。すぐ追いつきます。…………少しボーっとしていたもので、ふぁああ……」


 シャムは小さくあくびをしながらダクドの傍に近づく。


「昨日夜更かししてたでしょ。私が寝るまでそわそわ動く音したの覚えてるんだから」

「ええと、昨日の夜少し興奮してしまいまして……」

「もしかしてドラゴンに立ち向かうのを緊張してた?」

「心配すんなって。戦闘の前線に出るのはたぶん俺とこいつだろうから」


 ダクドの肩をぽんっと叩くリト。


「い、いえ別に今日のことを心配していたわけでは……。あのー、昨日の夜ダクドさんとナニ……してたんですか?」


 シャムはリトに近づきこそっと耳打ちする。


 昨日の夜、壁に耳を当て隣の部屋から発せられる声を聞いていたシャム。

 そのときに耳に入ってきたドタバタという物音。さらにリトの「これならはどうだ……?」やダクドの「くっ、それは……」といういかがわしい声。


「ダクドさんとはもしやそういう関係……」

「…………なんかよからぬ想像をしてるみたいだけどたぶん違うぞ。昨日の夜と言ったら――互いの弱点を確認し合ってたな」

「やっぱりそうじゃないですか! 足とか耳とかですか!?」

「ん? まあ体の部位での会心の出やすさやも試したけど、一番は属性だな」

「会心……? 属性……?」


 シャムはリトの言っていることがすぐに理解できず、金色の目をぱちくりと丸くする。


「ああ。模擬戦闘ができるみたいだからさ、軽く魔法を唱えてあいつにぶつけてみたんだよ」

「は、はぁ……ってダクドさん怪我してませんか!?」

「うむ、問題ない。傷一つない」

「そうなんだよ。全ッ然ダメージ通らないとは……。火の玉ぶつけようとしてもマントで軽く消されるし。水かけて凍らせても簡単に割られるし……」

「風と地はどうだったんです?」

「それは試せず。さすがに部屋の物壊しそうだったからさ。前エレナにこっぴどく叱られたことがあるんだよ。まあでも、どちらもダメージは与えられそうにないなー」

「ふん、当たり前だ。なめてもらっては困る。対して貴様の方は跳ね返した火の玉、食らっていたみたいだがな」

「まあな。でも属性ダメージがまんべんなく通っちゃうのはいつものことだ。装備品補完でよし!」

「ふっ、やれやれ、軟弱なことだ……」

「何をー、お前だって効いてた所あるじゃん」

「――な!? あ、あれは貴様もだろうが!」

「何々! 二人にも弱点があるの!? それはぜひ聞いておきたいなー」


 これは使える、とエレナが話に入ってくる。

 もちろん聞いたらすぐに実行予定。

 昨日客室で模擬戦闘なんてめちゃくちゃなことをしていた罰である。


「そ、それは物理で『あそこ』を……」

「え? あそこってどこですか?」

「我輩は弱点なぞ晒さんからな!」

「あそこって……」


 エレナの視線が下に向く。


「あ、ああ、うん、まあ…………」


 さすがに手が出せない。

 少しして、シャムの方もなんのことか分かったらしい。




「「「「……………………」」」」




 微妙な沈黙が続く。




「…………あ、あれじゃない? ドラゴンの住処すみかって」


 この沈黙を破ったのはエレナだ。

 急勾配の斜面にぽっかりとあいた十メートルの穴――洞窟を指差す。


「おっ、そうみたいだな。じゃ、新ダンジョン攻略開始するか!」


 リトが先頭切って洞窟の中に入り、


「ま、待ってよ! ちょっとは心の準備を」


 エレナがその背中を追いかける。

 入口に立ち止まったのはダクドとシャムだ。


「…………」

「どうしました?」


 シャムはくいっとダクドのマントを引っ張る。


「……なんでもない。気にすることではなかったか」


 ダクドはつかつかと洞窟の中へ歩き出す。


「あ、あの!」

「――なんだ?」

「ここまで来てあれなんですが…………私もドラゴンは恐ろしいんです。ダクドさんは、私のことちゃんと守っていただけますか?」

「もちろんだ。勇者ならまだしもドラゴンに姫を取られてなるものか。絶対に渡さん。……そろそろ行くぞ」

「――はい!」


 シャムは暗い洞窟と対照的な非常にまぶしい笑顔をダクドに向ける。


「……ふん」


 ダクドはばさっとマントが音を立てるくらいの速さで百八十度回転し、リトとエレナの後を追う。


 中が暗い洞窟ためか、ダクドの顔が少し赤くなっていることに彼自身を含め、誰も気付くことはなかった。


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