表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
23/44

第二十二話:達成できないクエストもあります

 街の中心にそびえ立つレイアード城。


 正面には立派な石門を構え、二人の兵士が門番として前に立っている。城の周りは三メートルはある塀で囲まれており、その塀の内側も兵が数人警備している。が――


「ぶっちゃけ警備薄いし、塀もがんばれば乗り越えられる……どこからでも侵入は可能だよね」


 門番の案内で、城の周りをぐるりと一周し終えたエレナは、門番を横に感想をつぶやく。


「ただ正面からの侵入は君たちがずっと見張ってたからまずないと……まあ塀を乗り越えてきたんでしょ。あれぐらいなら経験を積んだ戦士なら余裕で超えれるだろうし。ってか意味あるのって位の高さの気が……」

「うむ、そうなんだが……塀が高すぎると城内に光が差し込みにくいとか、周りの民家から洗濯物が干せないとかのいわゆる日照権の問題があってだな……」

「あっ、そんな理由なんだ……」


 あまりにも平和すぎる理由にエレナは微妙な反応になる。どうやら塀は見かけだけで、侵入する輩がいるなんて全く考えていなかったようだ。


「まあそれは置いといて……。侵入が容易ということは脱出も容易。……で、もう城の外に逃げちゃったってことでいいんですよね?」


 リトとエレナが城に到着した頃には侵入者はすでに城から脱出していた。下見だけだったらしく、何も盗られていないし、暴れまわられてもいない。


「ああそうだ。周りを警備していた一人が街の方へ軽々と塀を乗り越えていく姿をなんとか確認している。……臆病な奴なのか、侵入がばれてからは脱兎のごとく逃げていったな。素早すぎて目で追うのがやっとのスピードだったが」

「ふーん、探すとしたら街、もしくはさらに外ってことか。こういうのはいろんな奴に聞いてフラグを立てるしかないよなー。……本当は城の中も探索したかったけど……」


 今日会ったばかりの旅人を城の隅々まで通すほどセキュリティは甘くなかった。


「とりあえずどの方向に逃げたかを教えてもらえますか?」

「そうだな……確か向こうの方に逃げて行ったと聞いている」


 門番の兵士は右の方を指差す。


「同僚のやつらが先にそっちで聞き込みをしているだろうから、逃げた先の情報はそいつらから聞くのが手っ取り早いだろう」

「サンキュー、じゃ行ってくるわ」


 リト達は兵士が指差した街の東側、住宅街の方へ足を運んだ。




「はぁー、だめだ! 全然足取りがつかめねえ! 難し過ぎだろこのクエスト!」


 日が暮れるまで住宅街を聞き込み、探しまわるも成果は全然無し。唯一有効と思われる情報――住宅街で聞き込みを行っていた、侵入者を直に見たという兵士の話も、その侵入者が赤黒い布を身に纏っていたということのみ。服を替えた可能性もあり、追うには対象を絞りきれないものだった。


「もう遅いし諦めて帰ろうよー。こんな情報の少なさじゃ無理だって!」

「そうだな……初クエストが失敗ってのは納得しないが……いやまだ失敗じゃないはず。明日に回すか」


 そう言ってリトは宿『春眠処』へ向けて歩き出した。


「…………一応言っておくけど明日は図書館に行くからね。侵入者より魔王の情報を集めるの」

「えー、でももしかしたら宿屋で休んだら新たな情報が出てきてたり……は普通ないか……。わかったわかった、本編進める。図書館の場所は……確かパンフレットに載ってたな」

「うん。ええと……街の北側だね。このまま宿に向かって歩けば建物が見えてくるかも」

「ならちらっと見ていくか…………おっ、ちょっと待てよ。あそこちょっと気になるな」


 リトの視線の先にあるのは家と家の間にある狭い空間。

 細身の人間二人がなんとかすれ違えるかというほどの広さで、明かりもほとんど入ることはなく、日も暮れたこの時間だともう真っ暗である。


「今日最後の賭けだ。あそこに侵入者が隠れてるかも……」

「さすがにないと思うけどなぁ」

「まあちょっと見てくるだけだ! エレナも来るか?」

「私は遠慮しておく……。なんかそういう暗い道ってれ、霊とが出そうで不気味だもん」


 (霊が出ても倒せばいいだけなのに)と思いながら、リトは家と家の隙間に入っていった。


「さすがに何も見えないな……『灯火トーチ』」


 暗闇を照らして先に進み、十五メートルくらい進んだところで塀に突き当たる。


「行き止まりかー。くそお、猫一匹いなかった……侵入者どこだよマジで。……ん? あの木箱は何だ……? もしかして!」


 リトはすぐに木箱を開けて中身を確認する。


 ――から……ではない。


「なんだ、やっぱりアイテム落ちてるんじゃん。捨ててあるような感じだし持っていってもいいよな……どれどれ…………ん、んん?」


 アイテムを確認したリトは複雑な表情になった。


「これは……俺は全然必要ないんだけど、しかしだ、もしかしたら大事な物かもしれないし……まあ最悪……売ればいいか。持って行くだけもっていこっと」


 リトはそのアイテムの一つをズボンと下着の間、Tシャツの内側に隠すようにして持ち帰ることにした。




 リトとエレナが宿に帰り、部屋に入るとすでにダクドがそこにいた。


「遅かったではないか。さすがの我輩も腹が減ったぞ」

「先に食べてくれても良かったのに……ってあれ?」


 エレナは今朝部屋に置いていったお金がそのまま残っていることに気付く。


「もしかして昼も何も食べてないの?」

「うむ。金などないと言ったらなにも食べ物をくれんかった」

「だからちゃんと置いていったのに……」

「とはいえ我輩には金というもののシステムがよくわからん。そんなものいままで使ったことないからな」

「え!?」


 エレナは固まる。まさかダクドがリトより常識がないとは思っていなかった。


「まっ、そりゃそうだわな。人里降りてくることなんてまずなかったから。俺としては元魔王が今日部屋の外に出るとも思ってなかったぞ?」

「ふん、我輩にも探究心はある。新しい世界だ、いろいろ試したくはなるのだ」

「で、試してみてどうだったよ? 何かつかめたか?」

「そうだな……まず思ったことはこの平和な街くらい我輩なら簡単に征服できるだろう」

「征服って何怖いことを……」


 ダクドの発言にエレナが少し引く。一方のリトは当然のように聞き流している。


「強い奴がほとんど見当たらんからな。それに警備も薄い。城でさえやすやすと入れるくらいだ」


「…………え? 今なんて言った?」


 リトが聞き返す。


「ん? だから城でさえやすやすと入れるくらいと……まあ兵士に見つかってしまったミスはあるが」


 ダクドの発言にリトが叫ぶ。


「侵入者はお前かー! 何クエストのターゲットになってんだよ。お前を連れてけばクエストクリアになるのか? なら今すぐギルドへ?」


 混乱気味のリトがダクドの腕を引っ張る。


「り、リト落ち着いて! はい、水! 仲間にしたんでしょ。ならちゃんと聞いてあげないと。悪気はなかったかもしれないじゃない」

「……ぷはぁ。そ、そうだな……。なんで城へ行ったんだ?」

「この国の姫がどんなやつか気になったのだ。……一目見たが美しい姫君だった。思わずさらいたくなってしまうくらいにな」

「やっぱギルドに連れて行こうか。ね、リト」


 エレナは即断する。


(まさか王女誘拐という重罪をしようとするなんて。さすがに放っておけない)というのが彼女の考えだ。


「ま、待て! 今までの癖だ。前の世界とは違うのは理解している。ちゃんと思いとどまったのをほめて欲しいくらいだ!」


 慌てたダクドの弁明に、リトが答えた。


「癖かー、なら仕方ないな」

「軽っ! 思いとどまらなければ結構やばいことだったよ!?」


 まあまあといった感じでエレナに向かってリトがなだめるように手を振る。


「俺も住宅に入ろうとかやっちゃおうとしてたし。気をつければ、ってか理解すれば大丈夫だって!」

「うむ、この世界を理解するまではできるだけ控えるよう努力する」

「なんか安心できない言葉だなぁ……。まあこの場合リトの考え方が合ってるのかな。確かに待ったく別の常識なんて理解するのに時間かかるのは当然か。それまではちゃんと見てあげないと」


 エレナはダクドをギルドに連れて行かないことを納得する。と、同時に野放しにしておくと、とんでもないことをしでかす可能性があることをしっかりと記憶する。


「だ、か、ら! 明日は引っ張ってでもダクドにも付いてきてもらうからね!」


 明日のダクドの同行が決定した。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ