第十六話:仲間の名前も決めましょう
「人の姿をしてたって、それだけじゃ全然情報足りないよー。なんでいきなり襲ってきたこいつが、急に仲間になってるの? ほんとに大丈夫? 信用できるの!?」
エレナがダクドを指差しながら、リトに問い質す。
場所はリセラ宅――ダンお手製のテーブルと椅子が置いてある一室、昨日夕食をとったところである。
片側にエレナ、その向かい側にリトとダクドが並んで座っている。
「大丈夫だって! ちゃんと『仲間にならねえ?』って聞いたらオッケー出してくれたし! もうその時点で仲間確定だろ?」
「いやいやいやいや! 軽すぎるって! ちゃんと考えた!?」
「……正直試しに言ってみたらまさかのオーケーだったりする……でもまあいいじゃん! にぎやかな方が楽しいだろ!」
「にぎやかはにぎやかで…………ってそれよりも、この人いきなり襲ってきたんだよ!? 結構危なくない!?」
「問題ないない。昨日の敵は今日の友っていう言葉、知らないのか?」
「まだ一日も経ってないけど!?」
リトに何言ってもダメだと判断したエレナは、問い質す矛先をダクドに変える。
「――君だってそうだよ。ダクドだっけ? なんで急に仲間に加わろうとしたの!? なんか企んでるんじゃないよね……?」
「……ふん、付いて行くのは我輩の勝手であろう。別に馴れ合うつもりはない」
「ほらリト、こんなこと言ってるよ!?」
リトは『まあまあ』となだめるように手を振る。
「……だがこの世界のことも分からないことだらけだからな。いろいろ見て回るのもいいかもしれん。……そうだな……いうならここの魔王と決着をつけるまでの共同戦線というわけだ。――くくくっ、我輩の力を借りれることを感謝するがいい」
「ふーん……」
邪悪な笑み(ただ笑っているだけ)を浮かべるダクドに対して、エレナは疑いのまなざしを向ける。
「そんな怪訝そうな顔すんなって! こいつ、元魔王はたぶん……あれだよあれ! ――そう、『ツンデレ』だ!」
「え? 何それ?」
エレナが首を傾ける。
「知らねえのか? ほら……『べ、別にあんたのために手伝ってあげたんじゃないから! 勘違いしないでよね!』……っていうあれだぜ?」
「…………リト。正直今までで一番気持ち悪かったよ」
リトのツンデレ全力演技にエレナはドン引きする。いままでのリトの奇行を数倍上回る威力があった。
「うっ……言葉だけで我輩を恐怖させるとは……腕を上げたな……」
リトの隣に座っているダクドは気持ち悪そうに口を抑えた。
ダクドの精神に絶大なダメージを与えたようだ。
「まあでもそういう性格ってことね。なんとなく分かった。だからもう真似しなくていいから……二度と」
エレナは最後に念を押しておく。
彼女の向かいのダクドは目を閉じ、耳を塞いで完全に防御体勢に入っていた。
(――ダクドのこの反応…………うん、当たり前だよ! 最初に襲ってきたこと以外はまだまともかも……少なくともリトよりは断然マシ!)
すでにエレナの中で『普通』や『まとも』という基準が崩れ去ってしまっている。
別に十分強いし、ダクドが仲間に入ってもいっか、と妥協した。
「じゃあとりあえず自己紹介だけでもしようよ! 私はエレナ=アーヴィル――」
「俺は――」
エレナ、リトの順に自己紹介を終える。
「ん? 我輩もするのか? ……面倒だがまあいいだろう。名を知れ渡すのも大事であるからな」
面倒とは言いつつ、自己紹介をしてくれるダクド。リトの言うとおり、少しツンデレなのかもしれない。
「我輩の名はダクド。年齢はいつもなら何百、何千歳とかだが……」
「……何千歳? 賢者……でもありえないよね。第一、若く見えるし……」
「……設定だ。気にするな」
「まぁ今回は見た目で二十歳でいいんじゃね?」
「ふむ、そうしておこう。年齢など適当で問題ない」
ダクドは年齢についてはどうでもいいと思っている。
それもそのはず。今までのゲーム世界では、大昔から君臨しているとか、千年もの間封印されていたなど、具体的な年齢が設定されていることは少なかったからである。
――ダクドが自己紹介を続ける。
「我輩もこやつと同様召還されてきた身だ。たぶん同じような世界からであろう。そこでは魔王として君臨していたが、ここでは……我輩自体何者なのか分からぬ……。ただノラモンでは絶対ないとだけ言っておく! 我がプライドに賭けて!」
「へぇー」
適当に相槌を打つエレナ。
これもまた設定かな――と彼女は考えている。
まがまがしさや、威厳が見当たらない目の前の男が、魔王だったといわれても全然ピンと来なかった。
「あとはそうだな……我輩の属性は本来『闇』なのだが……」
「……闇? そんな属性聞いたこともないよ?」
「なんかこの世界では『火』、『水』、『風』、『地』の四属性だけみたいだぜ」
「何!? それで使えんのか……。辛いところだ……ただ弱点の『光』属性もないのはまだ救いか……」
「要は魔法は使えないんだね? もう話しておきたいことは――」
「特にない。以上だ」
ダクドの自己紹介が終了した。
「……あっ、そうだ。そういえばダクドもリトと同じでファミリーネームがないんだよね? 私たちと同じアーヴィルにしておく?」
エレナは一つ気になっていたことを確認しておく。
「なんだ? そのふぁみりーねーむというのは? なぜ名前を二つもつけるのか分からんが……とりあえず貴様ら人間と同じなのは気に入らん。却下だ」
「じゃあなしのまま? でもそれだと宿屋に泊まるときになんて書いたら……」
「ふん、必要なら我輩自ら考えようではないか…………そうだな、『ダーク』というのは――」
「「――却下」」
リトとエレナが同時に反論する。
「リトもそうだったけど、なんでそれなの? 流行ってるの!? ダサいのに!」
「俺だってすでに却下されてるんだ! お前にその名は譲れるか! 元魔王でいいじゃん。その方が呼びやすいから!」
名前というか役柄そのものである。
「いやさすがにモトマオーっていう名前は普通人に使わない――」
「むっ? 人間にないのか? ならそれでいい」
「いいの!?」
「特別ならそれで構わん。むしろその方が良い位だ」
「まあ納得してるならそれでいっか……」
新しい仲間の名前が決定する。
ダクド=モトマオー。
(『モトマオー』って人じゃなくて、騎馬につける名前っぽいんだけどなぁ)
エレナは心の中でつぶやくのだった。
簡単なパーティ紹介
リト=アーヴィル(勇者?)
属性:『火』『水』『風』『地』
武器:エターナルソード(なまくら剣)
防具:シルバーTシャツ(繊維状の銀をを編みこんで作られたTシャツ)
エレナ=アーヴィル(高位魔術師)
属性:『火』『風』
武器:護身用ナイフ
防具:高位魔術師のローブ(魔法耐性有り)
ダクド=モトマオー(元魔王)
属性:『無』
武器:なし
防具:魔王のマント(魔法耐性有り)




