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第十五話:勇者の仲間は当然普通の強さじゃありません

「…………よいしょっと。ふぅ、重かった!」


 大木を中心に広がる広場――森の主の住むその場所に、リセラはふらふらとよろめきながらやって来た。


 三角巾に緑のエプロン姿は昨日と変わらず。

 彼女の両手には木の皮でできた大きなバスケットが下げられている。その中には昨日余ったフルーツ、家に保存してあった干し肉があふれんばかりに詰められていた。


「まだ朝から何も食べていないでしょう? ちょっと少ないかもしれませんけれど、どうぞ召し上がってくださいね」


 リセラはバスケット――食物の宝庫を森の主の目の前に置く。

 巨大猪である森の主は鼻をひくひくと動かし、興味を示す。そしてのっそりと起き上がりかけるのだが、目をぱちぱちさせ痛そうにしている。

 どうやらリトとの戦闘で足を負傷しているらしい。足の骨は折れてはいないものの、ヒビが入っている可能性がある。


「そんな無理して起き上がらなくていいですよ。ほら――」


 そう言ってリセラはバスケットを森の主の口元まで持ち上げる。すると、


 バリバリバリッ。


 森の主は大きな口を開けてバスケットごと一口で平らげてしまった。


「ふふふっ、また夕方くらいに持ってきますね。えーとあとは……」


 リセラはエプロンのポケットから腕の太さほどの包帯を取り出す。

 数種類の薬草と一緒に水にけた包帯。疲労回復、痛み緩和の効果がある。


「これを足に巻きたいけど……えーと、どうすればいいでしょう?」


 リセラが包帯を持ったまま、森の主の周りをぐるりと一周する。傷の様子を見ながら、もう一周しようとしたところで森の主に動きがあった。


 ずうううぅん……。


 横に倒れる――というよりは寝転がり、包帯を巻きやすいように短い足を伸ばす。


「あ、ありがとうございます。あら? ……思ったよりも傷が……」


 腹、四本の足全て、に大きな打撲痕が残っている。擦り傷もあちこち見られるが、幸いなことに皮膚が分厚かったためか出血などはない。

 リセラは太い丸太のような足から包帯を巻いていく。


 …………。


 後ろ足、前足と地面に近い方を巻き終える。


「あとは……えいっ!」


 ぴょん、ぴょんと飛び跳ね、頭上の二本の足に包帯を巻こうとする――が、なかなかうまくいかない。

 すると森の主は、リセラのいる方向と逆側にごろりと転がった。


「きゃっ! びっくりしたー……でもこれなら……」


 リセラはすぐに転げた先に回り込む。

 そして後ろ足一本に包帯を巻き終えたところで、手持ちの包帯がなくなった。


「たくさん持ってきたつもりだったのに、こちらも足りませんか……えっと、包帯だけでも取りに行きますね。あとお腹に貼れるような薬草も持ってきます」


 森の主にそう言ってリセラは広場をあとにし、村に向かった。




 ぶううううぅん。


 広場から出て五分くらい経っただろうか。リセラの耳には耳障りな羽音が聞こえてくる。


「嫌な音……何なのこれは……?」


 彼女の方に向かってくる音の発信源はすぐにその姿を現した。


「へぇ……人間の小娘一人か。かわいらしい子じゃねえか、キキキッ」


 現れたのは、人間の子供のような姿の悪魔。背中に薄い羽、お尻から一本の毒針が生えた『ビーデビル』だ。

 片手に槍を持ち、背中の羽で宙に浮いている。その羽音が不快な音色を奏でているのである。


「なぁお譲ちゃん。こんな場所で会ったのも何かの縁だ。付き合ってもらえるか?」

「ええっ!? 魔物とお付き合いするつもりなんて……」

「――こんな辺鄙へんぴなところに飛ばされた憂さ晴らしによぅ!」


 ビーデビルは急降下し、リセラに狙いを定め、槍を構える。


「きゃっ!」


 リセラが後ろに飛び退き、しりもちを着く。ぎりぎりかわすことに成功した。

 そして、突き立てられた槍頭の位置――地面に生えた草を見て、驚きの声を漏らした。


「……草が枯れていく……。あの槍危ないかも……」


 リセラの察する通り、ビーデビルの持つ槍はただの槍ではない。自身の毒を塗ってある毒槍だ。

 毒は即効性で刺された対象の体力を急速に奪っていく。


 危険を感じたリセラは、とっさに護身用の黄色く光るアブストーンをビーデビルに投げつける。


 ごんっ!


 地面に刺さったままの槍を引き抜こうと必死だったビーデビルに直撃。


「……いてっ! なんだただの石――うお!?」


 地の属性を持ったアブストーンの効果により、ビーデビルの体が地面に吸い寄せられ、衝突する。


「ぐっ! よくもやりやがったな……。次は絶対はずさねえ……」


 たいしてダメージは与えられず、ビーデビルはすぐに起き上がり、引き抜き終わった槍を構え直す。表情は明らかに怒りに満ちていた。


「えいっ!」


 リセラは続けてアブストーンを数発投げるも、簡単にかわされる。手持ちはすぐになくなった。


「キキキッ、なんだ、もう終わりか? じゃあこっちの番だ」


 ビーデビルは槍を両手で持ち、リセラに向かい突進してくる。


「くっ……きゃっ!」


 リセラは一撃目を横になんとかかわすも、転んでしまう。


「キキキッ!」


 ビーデビルの追撃はすぐに来た。




 もうだめ――とリセラが死を覚悟したとき、何者かの声を聞いた……ような気がした。


『――伏せろ!』


 優しく、力強いその声に、リセラは疑うことなく地面に這いつくばる。

 その直後、リセラの頭上を巨大な影がまたいだ。


「――危ね! ……くっ、てめえ……」


 ビーデビルはとっさに方向を変え、巨大な何者かをかわす。

 リセラの窮地に現れたのは巨大猪――そう、森の主である。


「昨日もさんざん追い回してくれやがって……魔物のくせにどういうつもりだ!」

「……」


 森の主は答えない。


「…………まあいいか。憂さ晴らしの対象が増えただけだ。うれしいことに足怪我してるみたいだしなぁ、キキキッ。昨日より明らかに動きが鈍いぞ? 今なら――」


 ビーデビルは森の主に狙いを定める。

 森の主も突進を仕掛けようとするのだが、ぶんぶんと飛び回るビーデビル相手にスタートを切れない。


 ……ドドドド!

 なんとかビーデビルの動きを先読みして突進するも、やはりスピードがなく、簡単にかわされる。そして――


 グサッ!


 突進をかわされた直後、そのまま攻撃に転じたビーデビルの槍が、森の主の体側面に刺さる。


「きゃあああああ!」

「ブモォ……」


 悲痛なリセラの叫びと森の主の痛みを訴える声が辺りに響く。

 森の主は荒い鼻息のまま動けなくなった。


「さーて、あとは……譲ちゃん一人……キキキッ」


 ビーデビルは下卑た笑みを浮かべたままリセラににじり寄る。


「こいつが大切そうに守った子だからなぁ……見逃す――――なんてことはせず、心臓を一突きにして見せ付けるか、キキキキキッ!」


 ビーデビルがリセラに向かって振り下ろそうとする。

 その瞬間――


「『炎壁ファイアーウォール』!」


 リセラとビーデビルの間に突如できた炎の壁により、彼女らは分断された。


「ふぅ、何とか間に合ってよかったー」

「あちちちっ! 次から次へ……何者だ!?」

「魔物に名乗る名なんてない! ……と言いたいところだけどどうしてもというんなら教えてあげる! 私は魔術師のエレナ。よーく覚えときなさい!」


 ビシッと指をビーデビルに向かって差すエレナ。そして、先ほど出した炎の壁をリセラの周囲にぐるっと張り、彼女を守る。


「さあ、いつでもかかってきていいんだよ?」


 エレナが挑発する。

「……ちょっと魔法が使えるからっていい気になるなよ」


 ビーデビルがエレナに向かってすぐさま飛んでいく。


「うっわ、この羽音苦手なんだよね……さっさと終わらせようっと! 『火球ファイアーボール』!」


 直径一メートルもの火の玉がビーデビルへ放たれる。


「……キキキッ、そんなの簡単にかわせ――なっ!」


 ビーデビルはすぐに異変に気付いた。

 かわそうと上へ、横へ、下へ動こうとするのだが強風によって押し戻される。


「く、くそおおお!」


 火の玉がビーデビルに直撃する。焼き尽くされた魔物はそのまま灰となった。


「相手――うーん、相性が悪かったね」


 風を自在に操れる以上、空を飛ぶ小物はエレナの敵ではない。


「エレナさーん!」


 リセラの呼び声。

 エレナはすぐに彼女の元へ走る。


「大丈夫でした? 怪我してない?」

「エレナさーん。怪我はありません! それより……暑いです」

「わわわわっ、ごめんなさい! 解除するの忘れてました!」


 エレナは慌てて炎の壁を消す。


「はぁ……はぁ……私は大丈夫ですけど、主さんが……あの魔物の槍に刺されて……」


 汗だくのリセラが森の主を指差す。

 エレナはすぐに森の主の刺し傷を確認する。


「…………大丈夫! 毒は体に回ってないみたい」


 ビーデビルの毒槍は分厚い皮膚によって阻まれていた。動けなくなったのは単純に足に無理を掛けすぎたからである。


「はぁー、よかった……」


 リセラは安堵のため息をつく。


「ただ皮膚は早く消毒した方がいいですね。ビーデビルだから……蜂の毒に効く薬草とか持ってません?」

「あいにく今は……でもこの辺りに生えているはずですので探してきます!」


 ――数分後。


「ありました!」


 リセラが見つけてきた薬草を傷口に当て拭う。


「とりあえず応急処置はおっけーっと。それじゃ早く村に戻りましょうか!」


 エレナがリセラに村に戻るように促す。

 リセラには言い出せないでいるが、エレナとしては襲われていた村が心配でもあった。


「ええ……でも主さんをこのままにしておくのも……」


 確かに今の動けない状態で、先ほどのような魔物に襲われたらひとたまりもないだろう。

 リセラが考えあぐねていると、森の主がおもむろに口を開いた。


『……安心しろ。もう辺りに魔物の気配はない』


 今度はリセラの耳に、はっきりと聞こえた。

 リセラは驚き、森の主を見る。

 森の主はうなずくかのように頭をかすかに動かした。


「……大丈夫そうですね」


 リセラは安心して、村へと歩き始める。


「すぐ残りの手当てをしに来ますから!」


 離れる間際、リセラは振り返り、森の主に呼びかけた。



 

 ワブ村がエレナの目に映る。


(大丈夫みたいだね……)


 どうやら魔物は無事撃退できたらしく、村人の多くは傷の手当てや壊れた家屋などを修理していた。


「あれ? もしかしてあの人影ってリトかな? でも――」


 エレナ達の向かいから真っ直ぐ歩いてくるのは二人組だ。


「おーい、エレナー!」


 リトの声が聞こえてくる。やはり彼に間違いない。


「えっ? じゃあ一緒に歩いている人ってまさか……」

「こいつ仲間にしたぞ!」


 リトはドヤ顔で隣にいる彼――ダクドを紹介する。


「ふぇ!?」


 エレナにとって、頭痛の種となる仲間が一人増えた。


アブストーンをぶつけると……

地属性――地面にたたきつける

風属性――遠くへ吹き飛ばす

火属性――炎に包む

水属性――効果なし(水と併用しなければただの石)


みたいな感じです。


リトが登場しないとなんか……普通。

できるだけリト(もしくはダクド)は話に入れたいですね。



べ、別にネタ切れだからリトを出してないわけじゃなななないんだからね!

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