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第十三話:レトロゲームの魔王も召喚されていました

「やはりこの世界で我輩は……」


 そう言って気力だけで立ち上がっていたダクドはひざを折り、地面に両手を着きうなだれる。――戦意は完全に削がれたようだ。


 一方リトはというと――

「あれ……? やっべ! まさか今の戦闘って負けイベントだった!? 下手に勝っちゃったからバグったか!? 頼むからフリーズだけは止めてくれよ! 意識あるのに体が動かないのはめっちゃ気持ち悪くなるんだぞ! ……何も起こらない? いやでも下手に動けばどうなるか…… ええい、この状態どうしたらいいんだよ!?」

 と、頭を抱え、一人で慌てふためいている。


「え? 私たちが勝ったってことでいいの? ねえ!?」


  戦闘が終わり、急に取り乱した二人を見て、エレナも混乱する。どういう状況か聞こうにもリトは「バグで進めないとかやっぱクソゲーじゃん……」と嘆いていて聞く耳を持たない。


「……もう! 答えてもらわないと先に進まないでしょ! 説明してよ!」


 エレナがリトの背中をぽかぽかと叩くと、彼は「えっ!?」と一言、百八十度体の向きを変えて彼女に向き合った。


「説明するだけでいいのか? 変わったフラグの立て方だなー……進めるならまあいいや。えーとだな……戦闘勝利。以上!」

「それだけじゃ分からないって! それにさっきはこれから本番だとも言ってたじゃない!」


 ざっくりしすぎているリトの説明に納得しないエレナがリトを問い詰める。


「んなこと言われても……魔王っていったら途中で形態変化、変身するのが多かったからさー、今回も同じだと思ったわけ。なのに何も起きないからびっくりして――」


「我輩もだ……」


 打ちひしがれた格好のまま、ダクドが弱々しく声を出した。


「おっとそうだ。まだ倒しきれていなかったっけか」


 リトが彼に向かって剣を突きつける。


「――ふっ、戦意などもうない。とどめをさすならさっさとしろ」


 うつむいたままの状態でも突きつけられた剣を察知しているダクド。何か悟っているのか、諦めているのか避けようと動く様子はない。


「――ち、ちょっと待って! こいつに聞きたいこともいっぱいあるんだから!」


 リトの腕をぎゅっとかかえこみ、慌てて止めるエレナ。


「お、おいエレナ。鎧じゃないから胸がほぼじかに当たって……」

「えっ、あっそ、そうなんだけど! 恥ずかしいから口に出さないでよ! と、とにかく剣を下ろして!」

「はいはい、わかったよ」


 リトが剣をしまい腰に掛けると、エレナは恥ずかしそうにほほを赤く染めながら彼の腕から離れた。


「……うーむ、やっぱり直でも柔らかさはあまり感じれねえなぁ。せっかくの3D世界というのにそれだけが残念だ」

「何か言った?」


 エレナがリトをじろっとにらみつける。


「――い、いやなんでもない! それよりこいつに何を聞くんだ?」

「そうだね、まずは――」


 風を操りダクドを浮かせて、顔をこちらに向けさせる。


「君は本当に魔王なの? 君を倒せば魔物の統率は乱れるの?」


「ふん、貴様らに話すことなど……ない……」


 ダクドは強気な態度をとるが、彼の表情に先ほどまでの不敵な笑みはなく、余裕が感じられない。


「ラスボスかどうか位言えよー。もうクリアになるのか? なあ魔王ったら魔王!」

「……くっ! もうそのように……呼ぶな! わ、我輩は……我輩は……」


 ダクドは悔しそうな声をあげる。


「どうやらこの世界では魔王ではないらしいのだ……。魔法も使えん、姿も変えれん、空間も次元も違う……」

「ん? それって――」


 リトの頭に一つの予想が浮かぶ。


 ダクドは認めたくないとためらいながらも、自分の素性を明かした。


「……我輩は別の世界から召喚されてきたのだ。久しぶりにな」

「やっぱり同じような境遇か! もしかしてだけどド○クエシリーズとか知ってる? 俺そのとき勇者だったんだけど」

「なに!? 奇遇だな。我輩もその世界には行っったことはある。魔王としてだ。今回も魔王城のような場所に呼び出されたため、てっきり魔王として呼ばれたと思っておったのだが……」

「違うのか?」


 ダクドは悔しそうに下唇を噛む。


「……もうすでに魔王らしき人物は存在していた。もちろんそんなの受け入れることなどできん。我輩は城内を暴れまわった。魔王の座を奪おうとしてな。しかし結果はこの通り。あいつに勝負を挑むも、気付けばこんな森の中に転移させられてきたというわけだ」

「いや、その本物の魔王って奴? そいつに負けた時点で自分が魔王じゃないって気付けよ」

「……っ! 我輩はまだ負けてはおらん! 強制的に戦闘離脱させられただけだ! …………しかし、序盤と思われる勇者に負けてしまってはな……魔王ではないと認めざるを得まい」


「――ち、ちょっと待ってよ! 話がほとんど見えてこないんだけど! 私を置き去りにしないでよ!」


 しばらくほとんど意味が分からず、呆然と聞いていたエレナだったが、たまらず声をあげた。そして彼女がなんとか理解できた部分を二人に確認する。


「つまり魔物が暴れる元凶は他にいるってことでいいの?」

「そうだ」

「そして君はこの辺りを制圧しに送り込まれた部隊長ってこと?」

「それは……分からん」

「魔物も引き連れていたんだろ。やっぱりエリアボスとして呼ばれたんじゃねーの?」

「別にあの魔物どもは転移させられるときに一緒に巻きこまれただけだ。あいつら雑魚のくせに我輩の言うことなどまったく聞かん。今は勝手に行動しておるわ」


「リーダー格がいないんだ……。だからあんなにばらばらに行動してたのか……」


 エレナが道中の魔物を思い出す。

 群れを作っておらず、相手の数が少なすぎる。一度魔物に出会ってから次の魔物に出会うまで結構距離があった。

 このことが何か変という違和感につながっていたのである。


「ん? 出合った魔物全てばらばらだったのか? 勝手にまとまろうとしていたやつらがいたはずだが……」


 ダクドは顎に手を当て、目を瞑り思い出す。


「確か……近くに村を見つけたから一緒に攻めようとか言っていたな」


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