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第十一話:ボスまでたどりつきました

「よし、勝利―!」

「早っ!?」


 あまりのあっけなさに驚くエレナ。


 ハイリザード二匹はどちらもたった一撃で戦闘不能になった。一匹は突然のリトの攻撃をもろに食らい、もう一匹は剣でガードしたにもかかわらず、リトの一振りで吹き飛ばされていた。


「いやー先制取れたから相手の攻撃も全く受けずに……っとターン制じゃなかったんだったな。これはアクションRPG、アクションRPG……」

「だからそのアクションRPGって何なの?」

「いやー実際俺も詳しくはわからねえんだけどさ。噂に聞いたところ、戦闘のやり方が今までと違ったりしていて人気あるらしいぞ」

「うーん、戦術なんて見当たらなかったんだけどなぁ……。それに人気があるなんて聞いたこともないよ?」

「それもそうか。この世界の中の人にとっては流行なんて関係ないもんな」


 ゲームの流行に関係があるのはここレムリアとは全く別の世界、地球に住む人々だけである。


「おっ、またさっきと同じ奴が一匹いるぞ」


 リトが遠くに見つけたハイリザードを指差す。


「そうだね。今度は一匹だけかー、なんかダンさんが言ってように本当に手ごわい相手なんているのかな? この程度なら普通の戦士でもまず十分相手できるだろうし。……ちょっと変な感じがするんだよねー……、いつもと違うっていうか……」

「おーい、考え事をしているところ悪いけど、もう戦闘終わったぞ」


 リトは今度も敵を一撃で沈めて、エレナのところに戻ってきていた。


「だから早いって。まあその強さじゃ少しくらい何か問題があっても大丈夫か。……それにしてもよくその剣のまま戦えるよね。村の人からもっと斬れ味のいい剣をもらえそうだったのに――変えなくてよかったの?」


 リトの剣はサンストーンにより刃こぼれしたなまくら剣のままだ。攻撃は斬ると言うより叩く――ほとんど鉄の棍棒に近い。


「もちろんだ! 装備が一つしか持てないならこっちを選ぶ! 最初に持つ剣ってのは最後に光り、最強の装備になる場合があるからな。それにこれは前の世界で、そりゃもう苦労して手に入れたものだし、そう簡単に手放せるかっての」

「別にその剣に魔力が潜在しているとも思えないんだけどなぁ」


 まじまじとリトの持つ剣を見つめつぶやくエレナに彼は人差し指を振りながら答える。


「ちっちっちっ、魔力じゃないんだなーこれが。持ち続けて条件を満たしたりと場合によるけど……言ってしまえば『仕様』だな」

「使っているうちに強くなっていくってこと? そんな武器は……物語でしか聞いたことないけど」

「その『使用』じゃない……まあいいか。実際この世界でこのエターナルソードがどうなるかはわからねえけど、後々の楽しみってことで。今のままでも戦闘に支障はないから別にいいだろ?」

「まあリトがそれでいいなら私がどうこう口出し話じゃないか。…………そろそろダンさんが『やばい奴』を見かけたあたりだよね?」


 ダンが見かけたという目的の地点はすぐそこまで近づいていた。


 森の奥深く。

 木々が生い茂り、鳥の鳴き声も不気味に思えるほど辺りは薄暗くなっている。


「そのはずだな。ただちょっと風景がさっきからそれほど変わってないから不安だけど。ボス前ってもうちょっと分かりやすくないとプレイヤーが困らない? ……ボスと遭遇するスリルも味わってもらおうってわけか? 俺からしたら凝り過ぎてる気がするわー」

「……ちょっと何言ってるか分からない」

「――ぐはっ! やめてくれ、その言葉は結構心にくるから!」


 エレナの言葉にリトは少し大げさにリアクションする。


「だってほんとのことだもん……まあいままで見てきた、知ってきたものが違うのが原因だよねー」

「その通り! 経験の量も違うし、経験値の量も違う。だからもう少し俺のことを敬ってくれてもいいんだぜ? 主人公として!」

「あっ、あそこに誰かいるよ」

「俺の話は無視!?」

「いやだって強さはともかく、人間的に敬える要素が見当たらないし。それより目の前にいる人のほうが大事! 危険な魔物もいるんだから注意してあげないと」


 エレナがリトの腕を引っ張りながら迷っているであろう人の場所ヘ向かう。


「ま、待て。その方向はまだ慣れてな……うえ」


 リトはほとんど引きずられるような形になった。




 薄暗い森でぽつんと棒立ちしている男。肌の色は青白く、長めの白髪、背はリトよりも高く百八0弱といったところで大人びて見える。仰々しい赤黒いマントをまとい、少し吊り上った赤い目で森の奥をじっと見据えている。


「どうしようリト、話しかけづらい……。あの人こっち一瞬見て目を逸らしたよね? なんか冷たい感じがするよぉ。話しかけてみて『うるさい、ここにいるのは俺の勝手だろ』とか言われたらど、どうしよう……」


 男の近くまで歩いてきたエレナが彼の横顔を見てうろたえる。それほどまでに男は寄せ付けない雰囲気をかもし出していた。


「ねえ……リトが話しかけてきて」


 エレナは碧色の目をふるふるさせて、リトに頼む。


「そんなびびらなくても――まあ行ってくるわー」


 リトはぽつりと一人たたずむ男に近づき話しかける。


「おーい、この辺りにボスがいるらしいから逃げたほうがいいぞ」

「……」

「……? おーい、聞こえて――」


 男は無言のままゆっくりとリトの方に向き、口元に邪悪な笑みを浮かべた。


「ふむ。貴様がこの世界の勇者とやらか?」

「へ? わかる? いやー見る目あるね! この世界に来て初めて言われたわー」

「やはりそうか。では――」

「!? ――がっ!」


 男が突如突き出した拳がリトの胸部に命中する。完全に不意をつかれたリトはガードすることもできず、攻撃をもろにくらい、地面を転げまわった。


「なっ!? こいつ――」


 リトが攻撃されてすぐ、エレナは応戦しようとする、が――


「っ、速い!?」


 瞬く間に距離を詰められる。


「『反射風リ・ウィンド』! ――ぐぅっ!」


 本来なら敵自体を術者の周りから吹き飛ばす風の障壁をとっさに張るが、男の攻撃はその障壁を貫く。


 攻撃を受け、木にたたきつけられたエレナはそのまま気を失った。


「ふん、たわいない。いつもは苦戦する勇者といえど、序盤では相手にならんか……」


「ちょーと待ったー! 勝手に勝利宣言しないでくれるか?」


 立ち上がったリトが男に向かって片手で剣をつきつける。さきほどのダメージはそれほど受けていない。


「ほう、さすがは勇者といったところか」

「またも良いことだけは言うねえ。俺も答えたんだし、答えてくれよ。お前は何者だ?」

「ふふふ、この容姿では気付かんのも仕方ないか」


 男は嘲り、ナルシストのようにマントを華麗にバサッと広げ、自分の名を口にした。




「我輩は魔王『ダクド』! この世界を支配するものだ!」


 森の中で始まる勇者と魔王の決戦。

 ――ですがまだまだ話は続く予定です。二人(勇者、魔王)もちゃんと言っていますし、……まだ『序盤』と。

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