参・序曲『コン‐ブリオ』 其之弐
鬼の本体は舜兵からやや距離をとった場所に居る。
舜兵は見事に外した。
「・・・・・・・・・・・チッ。」
ただ一言、それだけ言うと尻尾から刀を抜き、鬼に向き直ると刀を中段にかまえる舜兵。
次は相手の出方を伺うのだろうか。
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「蜥蜴型低級鬼・裏切者、裏切りの感情が霊魂に付着し、鬼と成ったもの。その尾はそれを仲間と信じ込んでいた者達の象徴。
さて、舜兵君、君の実力を見せてもらうよ。同じ鬼闘士として・・・・・・・ね。」
運動場の外れ、月見からは目視できない場所でその男はつぶやいた。
月光にも、夜の闇にも溶け込まないグレーの髪を束ね、目を細めるように舜兵を見つめる。
この男の事はいずれまた、機会があればお話しよう。
今は舜兵の事最優先である。
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運動場の中では鬼・・・裏切者と舜兵の戦闘が続いていた。逃亡手段である尻尾を斬ったことで幾分かは楽になったはずだが、舜兵はさっきからずっと裏切者の攻撃をいなし続けていた。
《クソ!・・・まだ、こない!
アレさえしてくれれば、簡単に仕留めれるのに!》
何か策が有るらしい舜兵とは打って変わって、裏切者は面白くなかった。
突然頭に斬りかかられ、変な術を使い、尻尾を斬り落とされた。
ついにここまでか、と思ったら何を考えたのか、自分の攻撃をいなし続けている。
少しずつ怒りが溜まっていき、もはや爆発寸前であった。
《コロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロスコロス!!!!》
思考回路は既にパンクし、『コロス』がエコーのように響き続けた。
もう限界、
5秒前
4秒前
3秒前
2秒前
1秒前
グオォォォォォォガァァァァァァァァ!!
怒り狂った裏切者が地を這っていた体勢から飛び上がり、舜兵に襲いかかった。
裏切者の口が舜兵を飲み込んで・・・・・・
「神道 土印の弐拾六!
鉄砂掌!!」
いなかった。とっさに腹に潜り込み、神道を放ったのだ。
砂が圧し固められ鉄のようになり、それが拳の形を形成する。
それが裏切者の腹部にダイレクトヒット、一撃で上空に吹き飛ばされた。
「まだまだぁ!」
その声と同時に舜兵は飛び上がり、一気に裏切者に追いつく。
「これで・・・・・成仏しなっ!!」
ドグチャッ......
裏切者の胴が真っ二つなり臓肉の花火が花開く。
その花火が戦闘終了の合図だ。
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「お疲れ様、でも時間が掛かりすぎよ。」
「悪い悪い、つい、ちょっとね。」
「はぁ、これが命懸けだって事忘れてない?」
「戦闘で気分が高揚すると忘却の彼方に・・・・・」
「はいはい、でも、何で一つも教えてない土印の、しかも弐拾六番なんてできたの?」
「ん?あぁ、ありゃあ頭の中にいつの間にかイメージができてたんだ。ホントいつの間にかね。」
「ふ〜ん。」
《でも弐拾六番って言ったら神道の中級クラスじゃない。ホントに何者?舜クンって。》
「さ、早く家に帰ろ。まだご飯食べてないよね?」
「え?あ、うん、分かったわ。じゃ刀を預かるわね。」
「はい。」
「確かに。
じゃ帰りましょ、今日は私が料理作るわ。」
「え、マジ?」
「何よそれ、私だって料理ぐらいできるわよ!」
こんな雑談をしながら二人は家に帰っていった。
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「ふむ、さすがは舜兵君だ。習わずして中級クラスの神道を操り、戦闘経験が少ないにも関わらずここまでやってくれるとは。
本当に素晴らしいお方を見つけましたな。
伏葉幻燈斎殿・・・・。」
舜兵を見ていた男は言葉が切れた瞬間、その場から姿を消した。
ちなみに鉄砂掌は本来は少林寺の訓練方法だったはずです。