壱・運命の転機 其之参
彼女は美人だ。
彼女は人気者だ。
彼女は秘密を持っている。
彼女の秘密は・・・・・
「ねぇ月見さん、何で転校初日にユーレーの現場を見に行く訳?」
返事は返ってこない。『行けば分かる』と言う所だろうか。
廊下を早歩きで進んでいる転校生伏葉 月見に無理矢理付き合わされたことは何故か『学校の怪談巡り(肝心の怪談は一つしかないが)』だった。
「で、次はどっちに進むの?」
「そこを右に曲がった階段をずーっと上まで昇って。音楽室3階にあるから。」
どうやら目的地は音楽室らしい。
二人は階段を昇って行く。
「ねぇ各務君。」
「何?月見さん?」
「・・・・・見ないでよ。」
「・・・・・・・見ないですよ。見たくも・・」
「あっそ、じゃ早く行こ。」
「ハイハイ。」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜
音楽室、怪談話のオンパレードである場所。
バッハさんやベートーベンさんやヘンデルさんの目が動くとか、ピアノが勝手に曲を演奏しだすとか。
そんな中で内府高校の怪談は少し変わっていた。
「黒板が笑う?」
「うん、誰も居ないはずの音楽室で笑い声が聞こえるからドアを開けて垣間見たら、黒板から口が現れてて、それが笑ってたって。」
「私ベートーベンさんの事かと思ったのになぁ。」
「何?その期待。」
「女の子ってケッコーベタな事が好きなのよ。」
「あぁ、そう。」
各務の返事はそっけない。
『知ったところで何になる?』
程度である。
「で、各務君、これから起こること、全部現実だからね。」
「?何でそんな事言うの?」
「これから起こることは普通の人にはちょっとダメージが大きいから。」
「?」
一体何の事なのか、各務には理解不能だった。
「じゃ、行くよ?」
その確認が終わったとたん彼女の顔が真顔になった。
「行きます!
神道火印の拾参 連火鎗!」
言ノ葉が空中に溶け込むと、黒板に向かって差し出された月見の右掌に炎が収束し、やがて炎の鎗となり黒板に発射された。
「ちょっ、何やってるの月見さん!それはもういろ・・・・・」
グゴガァァァァァァァァァァァ!!
空間を切り裂く絶叫。この場にいる二人では到底出せないような低音域が音楽室に響き渡った。
そして、『それ』は黒板から現れた。
酸漿のような目に朱色の体躯。金色のざんばら髪をおどろに振り回し、口は耳元まで裂け、さらに犬歯は顎まで伸びている。
体は2メートルはゆうにあり、指一本一本は人の腕の骨のように太い。
「何?こいつ・・・」
「『鬼』よ。まだ今は笑って人を脅かす程度だけど、いずれ人を喰うようになるわ。」
鬼・・・天つ神に対して地上などの悪神。邪神。
恐ろしい形をして人に祟りをする怪物。
それが今目の前に居る。怒り心頭と言ったところだろう。目は吊り上がり、歯ぎしりをしている。
「どーすんのさ!鬼なんて!」
「決まってるでしょ?倒すのよ。」
「どうやって!」
「今さっき私が使った奴、やってみて?」
「できるわけが・・・・」
「できるわよ。あなた、『鬼闘士』の才能大有り何だもの。」
ようやく鬼闘士の単語が出て鬼ましたー。
裏話としては月見ちゃん実はまだ性格がはっきりしてないんですがw
まぁ葵ちゃんと梓ちゃんの中間ぐらいになるでしょうねw