七・久々の街角
66日も更新してませんでした。スイマセンm(_ _)m
これからも超不定期更新でやっていきますので、長い目で見ていてやってくっださい。
「さて、登録も済みましたし、後はご自由に。なワケですがどうします?」
場所はコンピュータールームから変わってラウンジのような場所へ。
「登録も済んだ、って言ってもあんまり実感がないんだよね、ホントにエンターキーを押しただけだし。」
「どうすると言っても予定は無いんだけど?」
「そもそも『どうします?』ってなんかこの三人で何かやるみたいな言い方だし。」
「まぁまぁ、お気になさらずに。」
《絶対気にする》
これが時枝の言葉に対する二人の率直な感想だった。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「で、月見?」
「何?」
「この腕輪何?」
「プレゼント。」
「あぁ、そう。」
二人は鬼闘幇団のビルから出て帰路についていた。
たいして会話はない、さっきのやりとりだって初めて口を開いた。
「ねぇ月見。」
「・・・今度は何?」
「俺に何かあった?なんかよそよそしいし。」
「べ、別に、何も・・・・何もないよ・・・」
何もない訳がない。実際、彼はとんでもない爆弾をその右手首に宿している。
ただ、言えば楽になるだろうけど、これは時枝と月見だけの秘密だ。本人にすら話すわけにはいかない。
「じゃあ私は家に帰るから、これで。」
「あ・・うん。」
「指令が鬼闘幇団からあるかもしれないから、ケータイのマナーは入れないでね。」
「分かった。」
電車の中はどうするつもりだろう。
「ふぅ、久しぶりにひとりになった気がするな。」
気がするではなく、実際に久しぶりな訳だが。
「とにかく帰ろ。」
「舜クーーン!!」
大絶叫がコエカタマリン(※1)によって固まったかのように舜兵の後頭部を直撃した。
後頭部をさすりながら後ろを振り向くとさっき分かれたばかりの月見が手を振りながらこちらに向かっている。
《は、恥ずかしい・・・・・・》
確かにさっきの大絶叫のせいで舜兵をチラチラ見る人がかなりいる。さらに中にはガン見する輩まで居るほどである。
舜兵の顔は瞬時に茹で上がった。
「はぁ、はぁ、はぁ、良かったー危うく忘れるところだったぁー。」
息を切らせて戻ってきた月見は安堵の表情である。
「な、何?月見。」
茹蛸が恐る恐る月見に問う。
「忘れてたぁ、『鬼の胃袋』の事。」
鬼の胃袋、鬼闘士が刀の収納に使う底なしの袋の事である。
「それで?今から何すんの?」
「ふふふ、ちょうど私に指令が来たから舜クンにやらせよ・・・ゲフンゲフン、舜クンが胃袋を手に入れるのにちょうど良いかな―って思って。」
「一瞬『やらせよ』とか言ってなかった?」
「なななな何のこと?知らないよ?」
駄目だ、これは完全にしらばっくれるつもりだ。そう感じ、追求する気が失せた舜兵はしぶしぶ月見に付いていくことにした。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜
とある廃ビルの屋上にそれは居た。
ただひたすら黒く、夜ならば分からなくなるのでは、と思うほど黒い躯をした巨人が。
その50メートル程の距離にあるビルの屋上にいる二人は月見のケータイを凝視している。
「人型中級鬼黒入道、人型だから胃袋を取り出しやすいかもしれないけど、中級鬼なのがネックね。」
「鬼にもレベルがあるの?」
「ええ、今までの実戦やシュミレートであなたが戦ったのは皆低級鬼、知能は動物並、思考能力はあるけどほぼ本能で動く奴。
で、目の前に居るのが中級鬼、人語を解してしゃべる奴もいるし、知能も低級鬼より何倍もあるわ。
ま、でも頑張って、はい、刀。」
「はいはい。」
今までより格段に強そうな見た目にデータ。でも、やるしかない。
「あ、もしもし、鬼闘幇団ですか?
げ、あんたか時枝。まあ良いわ、私の周囲500メートルに飛簾膜を展開してちょうだい。よろしくね。」
舜兵はこの会話の最初しか聞いていなかったため、『飛簾膜』の存在を知らずに戦い始めた。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜
一応抜刀して距離をとり、構えてみるものの、正直隙がない。
「うぉぉぉぉぉ!!」
ええいままよと正面から突っ込む舜兵、刀を振り上げて黒入道に切りかかる。
ガァァン!
舜兵の刀と鬼の腕が激突した、しかし、腕に全く傷はない。
「なっ!」
刹那、腕を振り払われ、舜兵は吹き飛ばされる。
「っとと、危ない危な・・・い?」
とっさに虚の回廊で体勢を立て直した舜兵の目の前には真っ黒な拳が見えた。
「グッ・・ゥアアアアアアアア!」
衝撃の瞬間、舜兵の顔が少しひしゃげ、振り抜いた瞬間、舜兵は真後ろに吹き飛ばされた。
10メートル
50メートル
200メートル
450メートル
「ガッ・・ハッ」
何かに叩きつけられた感触、しかし、背後は虚空である。何かにぶつかりようがない。
「何だよ・・・これ。」
全く何も見えないのに確かにそこには壁のようなものがある。
「って・・・来たぁーー!」
舜兵が透明な壁から振り向くとなぜか鬼は空を飛びながら再び拳を向けていた。
「目には目を、拳には拳を!
神道 土印の弐拾六 鉄砂掌!・・・・・・ってあれ?ブグハァ!」
鉄砂掌が発動しない。いままでこんな事は無かったのに。そのせいでまた殴られた。
「バカ!土も砂もない場所で発動できるワケ無いじゃない!」
月見の怒号が飛ぶ、先に言って欲しいと舜兵は吹っ飛ばされながら思っただろう。
「っとと、鉄砂掌も使えないし刀も弾かれる、どうやって戦えばいいんだよ・・・・」
再び虚の回廊で体勢を立て直した舜兵がうそぶく。
「にしても、なんかさっきから石油臭いな。」
ふと、舜兵の鼻にあの石油の独特のにおいが漂ってくる。
だが、周囲を見渡しても、ガソリンスタンドもなければポリタンクらしき物もない。
「・・・・しかもほっぺが黒い・・・もしや。」
『もしや』と言い終わるが早いか否か、三度目の拳が向かってくる。
「こんどは殴られないぞ!神道 火印の拾参、連火槍!!」
ガン!
金属質な音は舜兵が右手に持った刀と鬼の拳がぶつかった音。そして、舜兵の左手と連火槍はしっかり鬼に向けられていた。
「いっけぇぇーー!!」
至近距離から連火槍が放たれる、避ける術はない。
そして舜兵は槍が放たれると同時に後退した。
何かが焼ける臭いが立ちこめる、やや、ガソリン臭い。
「よっし、予想通り。」
先程まで鬼が居た場所には炎の固まりがあった。
もちろん炎の正体は鬼である。この黒入道とか言う鬼、皮膚層に薄い石油の膜があるようだ。
〈ゥウオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオォォォォォォ・・・・〉
火達磨になった黒入道が天を揺るがすような叫びを上げる、皮膚が焼けただれていく様は焦熱地獄(※2)を見ているかのようである。
「月見!早く胃袋を取り出す方法を!」
バックステップで後退した舜兵が急に月見の方を振り向いて問う、今回の戦闘の発端となったことを。
「ヘ?
あ!そそそそそうだったね!
まずは首を落として、その3秒以内に四肢を全て断ち切るの!」
「分かった!」
ドチャッッ...
ドッッザスッグソッッダンッッ
宙には四肢と首を落とされた物体が残った。それは四肢と首が消滅しても消滅えなかった。
「これで・・良いの?」
「ええ、残り火は私が消すわ。
神道水印の八 流漫」
詠唱と共にどこからともなく水が流れてきて、空中に一本の川ができた。
その水は鬼の成れの果てを終着点とし、残っていた火を消し始めた。
「なんでこれだけ消滅えなかったの?」
「昔、鬼を倒すのが好きで好きで堪らない鬼闘士がいてね、その人が快楽的に今の手順を偶然辿ったら胴体だけ消滅えなくて、更に快楽的に内臓を引っ張りだしてたら胃袋が便利だって分かったの。それが鬼の胃袋の始まり。」
「いや、話をはぐらかさないで・・・」
「消火完了ね、さ、次の手順に移るわ。」
《また、しらばっくれる気だ・・・・・》
もうどうでも良くなった舜兵は腑抜けたように月見に従った。
多分これ以降の話は擬音語がなくなると思います。
なんでって?いや、それじゃ小説じゃないかなー、とおもいまして。