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六・Choice

「いや―お二人とも、昨日はよく眠れましたか?」

「まぁ・・・ね。」

「少なくとも下手なカプセルホテルよりはよく眠れたわ。」


三連休の最後の夜を鬼闘幇団の医務室で過ごした舜兵と月見、二人とも目の下に薄く隈ができている。さっきのセリフは強がりらしい。


「とりあえず簡単な朝食と風呂を用意しています、話がありますが、まず頭をスッキリさせてきてください。」

「ありがと、時枝さん。」

「恩に着るわ、時枝。」


そう言いながらフラフラと医務室を出ていく月見と舜兵。なんだか酔っ払いみたいだ。


「そうそう、スッキリし終わったらコンピュータールームに来てください。」

「「は〜い。」」



〜〜〜〜〜〜〜〜〜


「さて、舜兵君。スッキリできましたか?」

「はい、さっきよりは万倍マシです。」


場所はコンピュータールーム、時枝と舜兵と月見がいる場所の前のモニターにはあり得ないような数式がずーーーーっと羅列されている。


「さて、これから鬼闘士としての登録がありますが、最後にちょっと聞きたいことがあります。」

「は、はぁ。」

「各務君、本当に鬼闘士になるつもりですか?」

「え・・・・・」


突然の問いかけだった、とても根本的な。


「あなたは今まで鬼闘士とは無縁な世界に住んでいました。あなたはこれからここのエンターキーを押せば命を賭けなければならない事もある鬼闘士の世界に本当に入ることになります。

 あなたは16年生きてきました、それより長い時間を鬼闘士として戦わなくてはならない。それでもあなたは鬼闘士になりますか?」

「・・・・・・・・・・初めて・・・」

「?」

「初めて鬼を見たとき、俺、怖いって思った。あんな化け物見たこと無いし、そんなのに平然と立ち向かえる『鬼闘士』って存在も。」

「へぇ〜〜〜舜君そんな風に思ってたんだ〜?」


素早く月見が言葉を返す、怖いと言われたことが癪に触れたらしい。


「とにかく、そんな存在の事を聞いて、実際に戦って、思ったことがあるんだ。」

「ほぅ、何ですか?」

「俺や月見、時枝さん、それにほかの鬼闘士の人、この人達は鬼が見える、戦える。

 でも、鬼闘士じゃ無い人は?突然何者かに襲われて、警察も犯人が分からない。そしてその死や事件は無かったことにされる。

 そんな酷いことはさせたくないし、見たくない。俺には、遺族の気持ちはちょっとしか分からない。でも、鬼に襲われた人が思うのは『死にたくない』なんだと思う。

 俺はこんな力を持っていながら見殺しにはできない。だから時枝さん、俺は鬼闘士になる。大義名分は要らない、ただ、人が残酷な死に方をするのは嫌なだけだ!」

「盛大なスピーチはよく理解できました。ですが、ちょっと聞きたいことがあります。」

「?」

「命を捨てれますか?見ず知らずの人のために命を捨てれますか?」

「・・・・・・」

「その覚悟が聞きたいのです、あなたが本当に鬼闘士になって、命を捨ててでも見ず知らずの人を助けれるか。」




















































長い沈黙、他人の代わりに死ぬ。それがどんなことか、自分が死んでまで人を助ける。そんなことができるのか。



――――分からない。


それが答えだった。

「分からない・・・・」

「そうですか、分かりませんか。

 でも、それが正しいですよ。誰かの為に死ねますか?と聞かれて『はい』と答えるのはただのバカです。

さて、時間がかかってしまいましたね、これから登録を・・・・と言ってもエンターキーを押すだけですが。」

『並の人間がこの質問に“死にたくない”と答えるのは何度も見ています。しかし、彼は微弱ながら自分を捨てれる気持ちがある、また、“死ねます”と答えるほど愚かじゃない。おもしろいじゃないですか。』





〜〜〜〜〜〜〜〜〜





かくしてここに新たな鬼闘士が生まれた。


名を各務舜兵かがみしゅんぺいと言う。

これから彼には浮き世離れした闘いの世界と、今までと変わらない安穏とした世界がある。


これからだ。


すべてが日の下に照らされる武闘劇の幕が上がる。


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