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知る人ぞ知る魔女の店  作者: がみれ


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第一話「魔女の店」

※シリアスにはしないでのんびりとした魔女の店を書くつもりです(つもりなので途中で変わるかもしれないです)。

 魔女の朝は早い。

 外の景色からは判断はつかないが、壁に掛かっている木製の古びた時計が5時を過ぎるころに魔女が目を覚ますのがこの店では日常だ。


 黒のブーツに黒のニーハイソックス、この雪山に似合わない赤と黒を基調にしたスカートと白のシャツに魔女は着替える。


 瞬きする間に地面に浮かぶ魔法陣が光ると同時に。


 ───────それは魔法とは違う魔女、魔術師だけが使える魔術と呼ばれるものだ。


 先端は青白い球体を魔力が馴染みやすい精霊種エルフが所有する貴重な魔霊木アルサレスの木材で囲い、杖のように取っ手側が長くなっている魔女の背丈ほどある魔女の杖。


 それをベッドから降りたすぐの地面にある魔法陣に触れて書かれた術式に沿うように白い光が浮かび発動する<収納した服に着替える魔術>


 毎朝毎晩、日常のように使う魔術は魔女にとって日常だ。大した感動などはない。


 ───────では魔女がその目を輝かせるものは何なのか?

 その答えはきっと開店すれば分かるだろう。


 壁にかかっている紺色の袖が、手首まである上着を羽織い、その艶やかな純白の髪を後ろに下ろした後、魔女は目を隠すような黒い布をとり付ける。


 魔女と言えばでお馴染みの魔女の帽子は、それ専用の帽子掛けから取り出せ、帽子のつばを赤い生地で覆い内側を赤色、外側を紺色のようになっている。


 魔女帽子は目や耳を隠すように黒い布がついており、それを頭に被る。


 ───────そして、魔女は店に入る。

 ぱっと見は本屋。


 いくつもの古びた本達はジャンルも文字も作られた時代さえ適当に本棚に収納され店は部屋の広さと棚の多さから圧迫感を感じる内装になっている。


 店としては不適格。

 乱立したタイトルの多くはその人にとって興味をそそられないことだろう。何せそのほとんどが読みにくく何なら流通していない言語で読めない物をあるからだ。


 だが、その中にあるたった一冊。その一冊がその人にとって興味を感じ惹きつけられ何よりも貴重に感じ、時に人生を変える。


 魔女はそれを見るのが好きなのだ。

 だからこそ、まず第一に入った客に見せるのは本棚になっている。


 ───魔女は外に出た。


 一面雪景色。風が吹き荒れ、雪が舞い、吹雪の音が絶えず聞こえるが店の周りは様子が違う。


 店ごと覆う雪だけを通さない結界魔術で周辺は草が見え、気温も外よりかは随分暖かくなっていて、逆スノードームのように真ん中に一軒の建物がある。


 魔女は店の扉にある木の札をひっくり返し、開店の二文字を誰もいない外に見せ中に入った。


 扉からまっすぐの位置にあるテーブルの奥にある客側からは見えない椅子に、横向きに座り頁をめくる。


『魔力運用率から導く属性分岐の逆算仮説とデータ分析』


 先日買い取ったその本をゆっくりと読んでいき、魔女はいつものように白いマグカップに入ったコーヒーを飲む。


「ちなみにブラックではなくかなり甘い」


「言わなくていいよ」


 本を読む目線は変えず、魔女は宙をクルクルと飛ぶ小さなマスコットのような可愛らしい悪魔のような見た目(実際に悪魔)の言葉に魔女は答える。


 客が来ない日はこんな風に店長と使い魔たる悪魔は何気ないやり取りをしながら、本を読みあさったり外を度々見ながらこうして一日を過ごす。


「前から思ってたけど何で外をよく見るの?」


 悪魔は気になって聞いた。


「さあね。未練とも憧れともほど遠いが外を見てみたいと思ってしまうからかね」


 若くも年老いてもいない。だが、若くも聞こえる声で年を重ねた雰囲気で話すその魔女は外を見ながら言った。


「──────じゃあ外を見ればいいじゃん」


 単純な悪魔はそう思ってしまう。

 だがそれはできないと魔女が言う。


「今はまだ迷惑になる。あと数千年経ったら外を見るさ」


「その時には見たかった景色は消えてたりして」


 机に飾ってある遠い東洋の海と和風の建築様式が茜色の沈む太陽とともに美しく切り取れれた写真を見て、悪魔はいたずら気味に言った。


「そしたらまた数千年待てばいいだけさ」


「そうかもね」


 価値観が違うのは長命故からかそのような結論に達する二人。


 悪魔と魔女。

 二人は世界を脅かすわけでも人々を助けるわけでも国家に組みするわけでもなく、ただひっそりと店を営んでいた。いつからあったのかさえもはや知る人はごく少数。


 いやこの場合二人という言葉は少し違う。悪魔と魔女と言うべきだろうか。


 そう魔女と契約した異界の下位悪魔リルウェストは思った。


 チリンチリンと扉が開く音が聞こえ一人の見慣れている常連、この世界に似つかわしくない異質なジャージを着た男が店に入ったのが見え魔女はこう言った。


 "いらっしゃい"と。


「相変わらずこの山きついですね」


 そう言い後ろに背負った自分の体より横幅がでかいバッグを、床に下ろし膝に手をつく男。


「すまないね。いつも」


「いえいえ、高値で買い取ってくれるのでこちらとしてもありがたい限りです。山登りも普段の農作業と違っていい運動になりますし」


 そう疲れながらも笑顔で男は言い、バッグから何個もの黒い豆、コーヒーの豆の写真が貼られている袋を取り出した。


「魔女様の本に書いてあった土の精霊との準契約。おかげで優れた土壌が手に入り、成長が早く品質も良くなって、売れ行きが目に見えて向上しました。本当にありがとうございます。孤児院の子供達も生活が豊かになって笑顔が増えたんですよ。ほら」


 そう言いポケットから孤児院の全員の集合写真を取り出して机に乗せる。

 魔女と悪魔は覗きこんでその写真を見た。


 それを見た魔女は朗らかな表情を浮かべた。


「私も子供が好きだ。だからこういう写真を見ると胸が温かくなるよ」


 魔女は杖と写真サイズの紙を引き寄せ男に尋ねた。


「この写真を模写しても良いかい?」


「ええ。良いですよ。お代はいりません。子供の笑顔は価値がつけれないほどの宝物ですから」


 そう男が言ったのを聞き、ありがとうと感謝の言葉を口にする魔女。


 魔女にとって写真と書物という過去の記憶を残す物は貴重だ。なにせ何千年も生きるのだから記憶は移ろい消えていく。


 その点、補修さえすれば残り続け、細かな当時の様子が残る写真はお金では買えない価値がある。


「準備オッケーだ!」


 悪魔がその小さな体で写真を持ち、机に書かれた小さな魔法陣の上にある写真サイズの白紙の紙に乗せる。


 魔術は魔法と違い、詠唱を必要とせず、書かれた術式に書いた本人の魔力を流しこみ発動する。だから魔術名は当人にしか判別がつきにくい。


 うちの店長が魔術の名前を専門用語でつけるのは魔術の内容を知られたくない風潮が根付いているからだ。


 (だから難しい専門用語を使わないでおいらがこの魔術を言うならそうだな…………<小さな紙に指定した写真を模写する魔術>だな)


 そうして魔力が流れ魔術が発動し、孤児院を後ろに笑顔の子供達とそこで育てている大人の集合写真が世界にもう一つ出来上がる。


「今日はありがとうございました」


 男は行きよりも荷物は詰まっていないが、重さは増えたバッグを背負い扉の方を向いた。


「おや、もういってしまうのかい」


「すみません……この後商談がありまして………」


 人間の平均寿命は例外を除いて100年にも満たないという。

 たった数時間で物事を進める人間に相容れない経験を何度もしてきた魔女は人間の時間感覚をそれなりに理解していた。


「じゃあ、また今度。何時でも私はここにいるよ」


 そう言って魔女は本に視線を逸らす。

 一見ドライな対応に見えるが、彼女を知っている者は本当は寂しいのだと知っている。


 感情が読み取りにくくはあるが、魔女は優しく客に思いやりのある方だというのは、常連なら皆知っていることだ。


 最後の言葉がそれを物語り、どんな時でも扉が開かれればいらっしゃいという言葉が聞こえてくるのもその優しさゆえだろう。


 男が去り、店が静かになる。

 魔女は本を机に置き、先ほどの模写した写真を手に取ってしばらくの間それを眺めていた。


 意外とうちの店長はこういうのを人には見せない。

 悪魔は何故かと聞いたが「さあ?」と答えた。


 そして、ひとしきり見た後、それを写真立てに飾り奥の部屋へしまった。

 店の中に置けるものは限られている。すべての思い出をそばに置くことはできない。


 だからこそ、店長はその写真を長く見続けたのかもしれない。


別作品がシリアスで書き続けて疲れたのでまったりとした小説書きました。

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