第8話「スキル強化と英雄たちの秘密」
「さて、隼人。次はスキルの強化に挑戦しようか!」
朝早くから訓練場に呼び出された俺に、6人の子供――いや、元英雄たちは勢いよくそう言い放った。
「強化って……具体的に何をするんだよ?」
俺が不安げに尋ねると、一人の男の子が笑顔でスキルボードを掲げた。
「スキルボードには、スキルを強化する『アップグレード機能』があるんだ! それを使って、隼人の力をさらに高めようってわけ!」
「へぇ……そんな機能があるのか。」
俺はスキルボードを開き、指示されるままに操作してみる。確かにスキルの横には、小さく「強化可能」という文字が浮かんでいた。
「例えば、この『身体強化』。これを強化すれば、もっと素早く動けるようになるし、筋力も上がるはずだよ!」
「なるほどな……じゃあ、まずはこれを試してみるか。」
俺は指で「身体強化」を選択し、強化ボタンを押した。すると、スキルボードが光り、全身に力がみなぎるような感覚が広がる。
「……おおっ、何だこれ! 身体が軽い!」
隼人が驚いて拳を握りしめると、別の子供が興味津々に尋ねた。
「じゃあ試しに走ってみてよ! 前より速くなってるかも!」
「よし、やってみるか。」
俺は軽く助走をつけて走り出す。地面を蹴るたびに風を切る感覚があり、明らかに速さが増しているのが分かった。
「すげぇ……これならあの時の鬼ごっこでも勝てたかもな!」
「ふふっ、どうだろうね。でも、確かに速くなってるよ!」
スキル強化の効果に驚きつつ、次に試したのは「ドラゴンブレス」の強化だ。
「これも強化できるのか?」
「もちろん! 威力や範囲を広げられるし、強化すれば属性を追加することもできるよ!」
「属性って……例えば?」
「火炎だけじゃなくて、氷や雷のブレスも吐けるようになるんだって!」
「マジかよ、それは便利だな!」
俺は期待を胸にブレスの強化を選び、属性として「雷」を追加してみた。全身が一瞬ビリビリとした感覚に包まれる。
「じゃあ、試し撃ちしてみて!」
子供たちの指示で、俺は訓練場の岩を標的にし、息を吸い込む。そして――
「ブオォォォォォ!!!」
口から放たれたのは、激しい雷を伴ったブレスだった。岩は一瞬で砕け散り、周囲に電撃が走る。
「おおっ、すげぇ! 火炎より威力が高いじゃねぇか!」
「隼人、これは本当に強いね! これなら魔物相手でも一瞬で片付けられるかも!」
子供たちは目を輝かせながら拍手を送ってくる。俺も思わず満足げに笑ってしまった。
スキル強化が一段落すると、子供たちは突然静かになった。そして、一人がポツリと口を開いた。
「ねぇ、隼人。私たちのこと、もっと知りたくない?」
「お前らのこと?」
俺は少し意外だったが、話を促すように頷いた。
「そうだよ。私たちは元々、魔王を討伐するために召喚されたんだ。けど、討伐に成功した代わりに、この異空間に閉じ込められちゃった。」
「……その話は前に聞いたな。でも、なんでお前らだけが選ばれたんだ?」
隼人の問いに、男の子が少し遠い目をしながら答える。
「僕たちは、いろんな世界から選ばれたんだ。それぞれの世界で、最強の力を持ってたからね。」
「最強……それで魔王を倒せたのか。」
隼人が呟くと、一人の女の子がうなずく。
「うん。でもその代償として、私たちはここで永遠に閉じ込められることになったの。」
「……それは酷い話だな。」
隼人が眉をしかめると、子供たちは微笑みながら言った。
「でもね、隼人。あんたが来てくれたおかげで、希望が生まれたんだよ。」
「俺が?」
「そうだよ! あんたの『次元超え』のスキルがあれば、きっとこの空間から出られる方法が見つかる。」
「そうか……だったら、俺がもっと強くならないとな。」
隼人は拳を握りしめ、決意を新たにした。
「じゃあ最後にもう一つ、試してみない?」
子供たちが再び提案してきたのは、スキル「空間の裂け目」の強化だった。
「これを強化すれば、もっと大きな裂け目を作れるかも!」
「……それで外の世界につながる可能性もあるってことか。」
隼人はスキルボードで「空間の裂け目」を選び、強化を実行する。すると、目の前に今までより大きな裂け目が現れた。
「すごい! 今までよりずっと大きい!」
「これなら人が通れるくらいだな……試しに入ってみるか?」
隼人が裂け目を覗き込むと、そこには何もない暗闇が広がっていた。
「まだ完全にはつながってないのか……でも、一歩近づいた気がするな。」
隼人は裂け目を閉じ、子供たちを見渡した。
「よし、もう少し鍛えてこのスキルを完全に使いこなせるようにするぞ。それでお前らを外に出す方法を見つける!」
「ありがとう、隼人!」
子供たちは嬉しそうに笑い、隼人の決意を力強く見守っていた。