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第7話「人間の姿とドラゴンの力」

「なあ、隼人。」

訓練が一段落し、休んでいた隼人に子供の一人が声をかけてきた。


「なんだ?」


隼人が応じると、その子供は少し興味深そうな表情で聞いてきた。

「人間の姿のままでさ、ドラゴンのスキルって使えるの?」


その言葉に隼人は一瞬動きを止め、考え込んだ。

「いや、俺もまだ試したことがない。使えるのかどうかもわからん。」


すると、別の子供がニヤリと笑いながら口を挟む。

「じゃあ試してみようよ! せっかく擬人化できたんだし、これを確認しないのはもったいないよ!」


「いやいや、簡単に言うけどな……どうやって試せばいいんだよ?」


隼人が困惑していると、子供たちは顔を見合わせながら一斉に手を挙げた。

「簡単だよ! 僕たちが相手をするから!」


「……やっぱりそう来るのかよ。」


隼人は呆れたようにため息をつきながら立ち上がった。



---


子供たちが広場に集まり、隼人を囲むように立つ。彼らはそれぞれ魔法や武器を構え、準備万端の様子だ。


「じゃあまずは、ドラゴンブレスを試してみようよ!」


「……人間の姿でブレスなんて吐けるのか?」


隼人が疑問を口にすると、一人の子供が指を立てて説明し始めた。

「理論上はできると思うよ。だって擬人化スキルは、姿を変えるだけで隼人の力そのものが消えるわけじゃないはずだからね。」


「なるほどな……まあ、試してみるしかないか。」


隼人は大きく息を吸い込み、ドラゴンだった時の感覚を思い出そうとした。そして、口を大きく開け――


「ブォォォォォ!!!」


放たれたのは、かつてドラゴンだった頃と同じような火炎のブレス。だが、威力は明らかに落ちていた。


「おおっ! ちゃんと出た!」


「けど、なんか弱くない?」


子供たちは感心しつつも、どこか物足りなそうな顔をする。


「まあ、そりゃそうだろ。人間の姿なんだから、ドラゴンの時と同じパワーは出ないんだろうな。」


隼人がそう答えると、別の子供が楽しそうに言った。

「じゃあさ、次はドラゴンの『爪』とか『翼』とか、他のスキルも試してみようよ!」


「爪と翼……いや、今のこの姿にそんなものがあるかどうか……。」


隼人は自分の手を見つめた後、スキルボードに意識を集中させた。「ドラゴンの爪」と書かれたスキルを発動してみる。


すると、人間の手がわずかに輝き始め、鋭い爪のような形状に変化していった。


「おっ、これが人間バージョンの『ドラゴンの爪』か?」


「うんうん、悪くないね! その姿なら、武器がなくても近接戦闘でかなり戦えるんじゃない?」


「なるほど……けど、これもやっぱりドラゴンの時と比べると威力が落ちてる感じがするな。」


隼人は爪を握ったり開いたりしながら、感触を確かめた。



---


次に試したのは「翼」だ。スキルボードに表示されている「飛翔」のスキルを発動してみると――


「おっ……出た!」


隼人の背中に大きな黒い翼が現れた。ただし、ドラゴンだった時のような圧倒的な威圧感はなく、サイズもかなり小さい。


「これで空を飛べるのか?」


隼人が翼を広げると、一人の子供が手を振りながら叫んだ。

「やってみなよ! せっかくだから空中戦も試してみよう!」


「またお前らと戦うのかよ……ほんと容赦ないな。」


隼人は翼を大きく羽ばたかせ、ふわりと地面を離れた。人間の姿でも飛ぶことはできるようだ。


「すげぇ、ちゃんと飛べるじゃねぇか!」


隼人が空中でバランスを取っていると、子供の一人が魔法を放ちながら笑った。

「じゃあ隼人、逃げてみなよ! 捕まらないようにね!」


「おい! いきなり攻撃してくるな!」


空中に放たれた魔法を必死でかわしながら、隼人はドラゴンだった頃のスピードが出ないことに気づいた。


「くそっ、思ったより遅いな……!」


「まあ、今の姿じゃ限界もあるよね! でも、それをどう活かすか考えるのも鍛錬の一つだよ!」


子供たちは楽しそうに笑いながら、次々と隼人を追い詰めていく。



---


鍛錬を終えた隼人は地面に降り立ち、大きく息を吐いた。


「やっぱり人間の姿だと、全然本来の力が出せねぇな……。」


すると、一人の子供が肩を叩きながら励ました。

「それでも十分すごいよ! 人間の姿でもこれだけ動けるなら、外で役立つ場面も多いと思うしね!」


「まあな……けど、まだ慣れるには時間がかかりそうだ。」


隼人は新たな課題を胸に抱えながら、空を見上げた。人間の姿とドラゴンの力をどう活かすか――それを探るための鍛錬はまだまだ続きそうだった。

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