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第6話「人間の姿と新たな鍛錬」

「よし、それじゃあ次は人間の姿のまま鍛錬をしてみよう!」


擬人化に成功した翌日、子供たちは全員揃って隼人にそう告げた。俺――隼人は昨日とは違う小柄な人間の体にまだ慣れておらず、ぎこちない動きしかできない。


「いやいや、ちょっと待て。俺、昨日までドラゴンだったんだぞ? こんな細い腕でどうやって鍛錬しろって言うんだ?」


隼人が腕をぶらぶらさせながら言うと、6人の子供たちはニヤニヤと笑いながらそれぞれの武器を構え始めた。


「簡単だよ! 人間の姿でも戦闘能力を高めるの。まずは体を慣らすところから!」


「なんでお前らそんなやる気なんだよ……」


隼人が呆れたように言うと、一人の女の子が少しだけ真剣な表情になって答える。


「隼人が人間の姿を手に入れたってことは、外の世界で行動できる可能性が大きくなったってこと。それに、この姿なら魔法やスキルを細かく制御できるようになるかもしれない。」


「なるほどな……確かに俺が外に出て動きやすくなれば、呪いを解く方法を探しやすいかもしれないな。」


隼人は納得しつつも、まだ慣れない体に苦戦する自分を想像して軽くため息をついた。



---


「まずはスキルの確認からね!」


子供の一人がスキルボードを隼人の前に差し出した。人間の姿になったことで、新しいスキルや能力が追加されていないか確認するのが目的だ。


「さて……何が増えてるかな……。」


隼人がスキルボードを操作すると、いくつか新しい項目が表示された。


「おっ、『身体強化』ってのがあるな。それから……『近接戦闘適応』?」


子供たちは画面を覗き込んで、興味津々といった様子だ。


「身体強化ってことは、普通の人間より力やスピードが上がるってことかな?」


「そうだと思う。けど、『近接戦闘適応』ってのはなんだ?」


隼人が首を傾げると、一人の男の子が軽く笑いながら言った。


「それは多分、剣とか槍とか、人間の武器を使った時に戦いやすくなるスキルじゃない?」


「剣とか……俺、そんなの使ったことないぞ?」


「じゃあ今日の鍛錬で試してみようよ!」


「またかよ……。」


隼人がうんざりした声を漏らすが、子供たちは全く気にせず笑顔を浮かべている。



---


鍛錬はまず基本的な動きから始まった。隼人は木の棒を渡され、それを剣に見立てて振るように指示される。


「もっと腰を入れて振らないとだめだよ!」


「こうか?」


「違う違う! 足をしっかり踏ん張って、体全体を使うの!」


「おいおい、子供に指導されるってのは結構辛いぞ……。」


隼人は悪戦苦闘しながらも、少しずつ剣の振り方に慣れていった。次は模擬戦の練習だ。子供の一人が木剣を持って隼人の前に立つ。


「じゃあ、実際に僕とやってみよう!」


「お前ら、本当に容赦ないよな……。」


隼人が棒を構えると、子供は軽々と木剣を振り、正確に隼人の攻撃を防いだ。


「くっ……早いな!」


「隼人、もっと相手の動きを見て! 攻撃ばっかり考えちゃダメだよ!」


「言うのは簡単だな……!」


隼人は必死で食らいつくが、やはり相手の動きが速すぎてついていけない。それでも何度も挑戦するうちに、少しずつ相手の動きを捉えられるようになってきた。



---


次に試すのは、隼人のスキル「身体強化」だ。


「スキルを発動してみて! 体が軽くなるはずだから!」


隼人はスキルボードを操作し、「身体強化」を発動する。すると、全身にエネルギーがみなぎる感覚があった。


「おっ……なんだこれ。確かに力が湧いてくるな!」


「それで走ったり、戦ったりしてみて! いつもより動きが速くなるはず!」


隼人が試しに全力で走ると、いつもよりもはるかに速く、風を切るように地面を駆け抜けた。


「すげぇ……俺、人間の姿でもこんな速く動けるのか!」


「隼人、さっきの模擬戦で試してみようよ! 今なら僕に勝てるかも!」


「そう簡単にいくとは思えないけどな……よし、やってみるか!」


隼人は再び木剣を構え、子供と向き合った。スキルを使ったことで動きが速くなり、相手の攻撃にも反応できるようになった。


「いいよ隼人! だいぶ動きが良くなってきた!」


「ふっ……お前らを見返してやる!」


隼人は新しい力を試しながら、何度も模擬戦を繰り返した。



---


鍛錬を終えた隼人は地面に座り込み、息を整えた。


「お前ら、鬼ごっこよりはマシだが……これはこれでキツいな……。」


「でもすごく成長してるよ、隼人! 人間の姿でもここまで動けるなら、本当に外の世界でやっていけるかもしれない!」


「そうか……なら、もう少しこの体に慣れるように頑張るよ。」


隼人は空を見上げながら、少しずつ成長していく自分を感じていた。そしてこの新しい姿で、必ず英雄たちの呪いを解く方法を見つけると心に誓った。


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