第5話「スキルボードと擬人化の試練」
なあ隼人、他に何か変わったスキルは、ないの?」
6人の子供のうち一人が、スキルボードを覗きながらそう尋ねてきた。
「えっと……『スキル擬人化』ってのがあるな。」
「しっかしまんま異世界転生ものだな」と隼人が、つぶやくと、子供の一人が「あーやっぱりね!」と笑い出した。
「え、何だよ?何でそんなに納得してるんだ?」
隼人が驚いて聞くと、一人の男の子が肩をすくめながら答えた。
「いや、だって『異世界転生もの』って感じじゃん。擬人化スキルとか出てくるのって、そういうパターンだよね!」
「おいおい、まさかお前らも転生者だったりするのか?」
隼人の問いに、別の子供が首を横に振る。
「違うよ!僕達は転生じゃなくて『異世界召喚』されたんだ。」
「異世界召喚だって!?……マジかよ。じゃあ俺がここに来たのも、何かの理由があるのかもしれないな。」
隼人が深く息をつくと、一人の女の子が頷きながら言った。
「うん、隼人がここに来れたのも偶然じゃないと思う。きっと何か意味があるんだよ。」
しばらく沈黙した隼人は、拳を握りしめながら力強く言った。
「分かったよ。お前らを助ける方法を探してやる。それが俺に課せられた役目なんだろな。」
その言葉に、子供達は満面の笑顔を見せた。
「あリがとう、隼人!あんたは、本当に頼りになるね!」
隼人は改めてスキルボードに視線を戻した。擬人化スキルの詳細を確認すると、そこには思いもよらない条件が、記載されていた。
「なんだこれ……?『殺したものにしか擬人化出来ない』だと?」
隼人は思わず声を上げた。子供たちもスキルの説明を覗き込み、不思議そうな顔をする。
「擬人化って、じゃあ人間の姿にもなれるの?」
「いや、それは無理だ。俺、人間なんか殺したこと無いし……。」
隼人が、呟くと、一人の男の子が、突然真剣な顔をして言った。
「じゃあさ、俺を殺してみる?」
「……はぁ!?お前何言ってんだ!」
隼人は目を見開いて驚いたが、男の子は、穏やかに微笑んだままだった。
「大丈夫だよ。ここでは僕たちは、不老不死だからさ、殺されても復活するんだ。」
「いや、だからって俺にそんなこと出来るわけないだろ!」
「……傀儡。」
その瞬間、隼人の体がピタリと動かなくなった。まるで糸で操られるように、意志とは無関係に前足が、動き出す。
「おい……やめろ!俺の体を勝手に動かすな!」
しかし、隼人の抗議も虚しく、彼の爪が男の子に向かって振り下ろされる。
隼人の鋭い爪が男の子の体を切り裂き、地面に彼が倒れ込んだ。
「やめろって言ったのに……俺……俺は!」
隼人は罪悪感に押し潰されそうになりながら、地面にうずくまった。すると、体を操った女の子が涙を浮かべながら言った。
「……ごめんね。でもこうするしかなかったの。こうでもしないと私たちは、ここで永遠に閉じ込められたままなのよ。」
しばらくの沈黙の後、倒れていた男の子がゆっくりと立ち上がり、穏やかに微笑んだ。
「ごめんね、隼人。残酷なことさせてしまって。でも、僕たちの気持ちもわかってほしい。」
隼人は、苦しそうに顔を歪めながら、震える声で答えた。
「……分かったよ。これで前に進めるなら……俺は、お前らを助ける方法を見つける。」
スキルボードに目を戻した隼人は、擬人化が、可能になっていることを確認した。覚悟を決め、スキルを発動する。
「擬人化……!」
その瞬間、隼人の巨大な体は光に包まれる、次第に小さくなっていく。変化が終わるとそこに立っていたのは、普通の人間の姿をした隼人だった。
「……これが俺の新しい姿か。」
子供たちは目を輝かせて拍手した。
「やったじゃん!これで外で人間として行動出来るし、情報収集もしやすくなるよ!」
隼人は自分の手を見つめ、拳を握りしめた。
「そうだな……これで一歩前進だ。君たちをここから出す方法を、絶対に見つけてやる。」
6人の英雄たちは満足そうに微笑み、隼人に「あリがとう」と涙を浮かべながら静かに告げた。
こうして隼人は、新たな力と覚悟を手に入れ、英雄たちを救うための次なる一歩を踏み出した。