第30話「新たなる旅立ち」
俺たちは塔の外へと歩みを進めた。目の前に広がるのは見たこともない世界。魔王を倒した世界とはまるで違う、どこか異質な空気を感じる場所だった。
「ここが……俺たちの次の目的地か。」
クロードが剣を握りながら呟く。
「まさか異世界に飛ばされるとはな……。まあ、驚くのも今さらか。」
ミケが腕を組みながらニヤリと笑う。
「確かに、今までの経験に比べれば驚くことじゃないわね。でも、ここがどんな世界なのか早く調べた方がいいわ。」
マーリンが冷静に言う。
「異世界か……データ解析のしがいがありそうだな。」
彰人が端末を開き、周囲の情報をスキャンし始める。
「でも、この世界の人たちにとって、私たちはどういう存在なんだろう?」
セフィーナが不安そうに呟く。
「分からねえけど、俺たちがここで何をすべきか、探る必要があるな。」
ハッサンが拳を鳴らしながら言った。
「まずは情報収集だな。どこか人がいる場所を探そう。」
俺がそう提案すると、全員が頷いた。
俺たちは森を抜け、開けた草原へと出た。遠くに小さな村が見える。
「あそこなら情報が手に入りそうだな。」
クロードが村を指差す。
「でも、私たち……普通に受け入れてもらえるのかな?」
セフィーナが不安そうに呟く。
「隼人は人間の姿なら問題ないが……俺たちはどうだろうな。」
ハッサンが腕を組む。
「最悪、俺のプログラミングで認識を変える手もあるが、まずは普通に接触してみるか。」
彰人が冷静に提案する。
「隼人、あんたが先に行ってみるのが良さそうね。私たちは少し離れた場所で様子を見てる。」
マーリンが言うと、俺は頷いた。
「分かった。じゃあ、俺が様子を見てくる。」
村の入り口まで歩を進めると、子供たちが遊んでいるのが見えた。俺はできるだけ警戒されないよう、ゆっくりと近づく。
「こんにちは。」
俺が声をかけると、子供たちは驚いたようにこちらを見た。
「お兄ちゃん、誰?」
一人の女の子が首を傾げる。
「俺は旅人だ。ちょっとこの村について聞きたいんだけど、いいかな?」
「旅人? 変なの、珍しいね!」
男の子が笑いながら言う。どうやら警戒はされていないようだ。
「ねえ、お兄ちゃん、この村に何しに来たの?」
「ただの旅の途中だよ。この村はどんなところなんだ?」
俺が尋ねると、子供たちは顔を見合わせた。
「普通の村だよ! でもね、お姫様がいるんだ!」
「お姫様?」
俺が聞き返すと、子供たちは楽しそうに頷いた。
「うん! 村のみんなを守ってくれてるんだよ!」
「どんな人なんだ?」
「すっごく優しくて、強いんだよ!」
「会ってみたいな。その人に話を聞けるかな?」
「うーん……分かんないけど、お兄ちゃんなら大丈夫かも!」
子供たちはそう言って、俺を村の中心へ案内してくれた。
村の中心には、立派な建物があった。門の前には二人の兵士が立っている。
「この人がお姫様に会いたいって!」
子供たちが元気よく言うと、兵士たちは俺をじっと見た。
「旅人か。何の用だ?」
「この村について知りたくてな。お姫様と話すことはできるか?」
「姫は忙しい。簡単には会えない。」
「どうしても必要な情報があるんだ。話をするだけでいい。」
俺が粘ると、兵士たちは顔を見合わせた。
「……待て。確認してくる。」
一人の兵士が中へ入っていった。
「さて、どうなるかな……。」
俺は一息つきながら、周囲の様子を観察した。村の人々は平和そうに暮らしているが、どこか緊張感がある。まるで何かを警戒しているようだった。
「待たせたな。姫が会うと言っている。」
戻ってきた兵士がそう言うと、俺は軽く頷いた。
「ありがとう。」
中へと案内されると、一人の女性が椅子に座っていた。
「あなたが旅人ね?」
彼女は美しいが、どこか凛とした雰囲気を持っている。
「そうだ。俺は隼人。この村について知りたくて来た。」
「……あなた、普通の旅人じゃないわね?」
彼女はじっと俺を見つめる。
「なぜそう思う?」
「何かを隠している目をしている。」
彼女の言葉に、俺は少し驚いた。この村の姫、ただ者ではない。
「あなたは何者なの?」
彼女が問いかける。俺は少し考えてから、静かに答えた。
「……俺は異世界から来た者だ。」
その言葉に、姫の目が大きく見開かれた。




