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第3話「子供達と鬼ごっこ」

俺は世界の果てと呼ばれる地にある、小さな村にたどり着いた。そこは本当に小さな村で、建物もいくつかあるだけ。だが、人の気配がない。


「やっぱり誰もいないのか……」


ため息をついていると、ふいに子供たちの笑い声が聞こえた。俺が振り向くと、6人の子供たちがこちらをじっと見ていた。


「えっ……?」


俺のようなドラゴンを見ても逃げないどころか、彼らは興味津々の目で近づいてきた。


「おっきい! ドラゴンだ!」


「ほんとだ、すごい!」


俺は思わず一歩引いてしまった。


「いや、普通こんな化け物見たら逃げるだろ? 怖くないのかよ?」


すると、一人の子供が首を傾げて答えた。


「全然怖くないよ。だって、あんた弱そうだもん」


「……は?」


あまりの返答に言葉を失う。俺を弱いと言ったのか? 驚いていると、別の子供がニヤリと笑って続けた。


「みんな私より弱いよ、ドラゴンでもね」


「……俺がドラゴンだぞ? 強そうくらい言えよ!」


そう反論したものの、子供たちは全く動じない。俺が困惑していると、6人の中の一人が手を叩いて言った。


「ねぇ、鬼ごっこしようよ!」


「はぁ!? 鬼ごっこ?」


「そう、鬼ごっこ。あんたが鬼ね!」


気づいた時には、子供たち全員が笑いながら走り出していた。


「おい、ちょっと待て! 俺はそんな――」


抗議の声を上げる間もなく、別の子供がニヤリとしながら一言。


「なんでもありだからね!」


その瞬間、6人全員が突然飛空魔法を使い、一斉に空中へと逃げていった。


「おいおい、飛空魔法ありってズルすぎるだろ!」


俺が叫ぶと、遠くから子供たちの声が聞こえた。


「早く捕まえてよ!」


「……マジかよ……」


俺は仕方なく翼を広げ、空に飛び上がって子供たちを追いかけることにした。



---


最初に狙ったのは、一人の男の子。俺は速度を上げ、射程圏内に捉えた。


「よし、捕まえるぞ!」


そう思った瞬間――


「古代魔法・グラビティブレイク!」


いきなり強烈な魔法が俺に向かって放たれた。


「ちょ、マジかよ!」


俺はその魔法をまともに受け、空中でバランスを崩し地面に叩きつけられた。


「ぐっ……!」


痛みが走る。体中に深い傷を負い、しばらく動けない。そんな俺を見て、近くにいた女の子が慌てて駆け寄ってきた。


「ちょっとやりすぎだよ! フルヒール!」


彼女がそう言いながら手をかざすと、俺の体に温かい光が降り注ぎ、瞬く間に傷が治っていった。


「おいおい……こんな小さな子供がこんなことを……」


俺が呆然としていると、古代魔法をぶちかました男の子が近づいてきて、得意げにこう言った。


「どうだ、俺のほうが強いだろ?」


「いや、子供に負けたのかよ……俺……」


呆れとショックで何も言えない俺に構わず、別の子供が元気よく叫んだ。


「じゃあ、続きやろうよ! 鬼ごっこの!」


「……まだやんのかよ!?」


俺が抗議すると、遠くから声が飛んできた。


「早く捕まえてよ!」


「……わかったよ! やってやる!」


俺は覚悟を決め、本気で子供たちを追いかけ始めた。



---


だが、全く捕まえられない。子供たちは飛空魔法や瞬間移動のような技を使い、時には古代魔法まで使って俺を翻弄してきた。


「お前ら、本当に子供なのか!?」


それでも俺はあきらめず、捕まえようと追いかけ続けた。


気がつけば、鬼ごっこをして、適当にご飯を食べて、また鬼ごっこをして寝るという日々が続いていた。時間の感覚も薄れ、ふと気づくと――


「……50年!? 50年経ってんのか!?」


俺は愕然とした。だが、さらに驚いたのは子供たちの姿だった。50年経っても全く成長していない。


「お前ら、なんでずっと子供のままなんだ?」


俺がそう尋ねると、一人の子供が笑いを堪えきれずに転げ回った。


「やっと気づいたか!」


「……どういうことだよ?」


俺が問い詰めると、子供たちは次々と話し始めた。


「実は私たち、子供じゃないんだ」


「俺たちは、かつて魔王を討伐した6人の英雄さ」


「魔王を倒した時、異空間に閉じ込められてさ。この呪いのせいで姿が変わって、出られなくなったんだ」


「ここから出るには、呪いを解く方法を見つけるしかない」


「それでさ、あんたが来た理由はわからないけど、もしかしてここから出入りできるかもと思ってさ」


驚きと混乱で、俺は言葉を失った。


「……俺にどうしろってんだよ?」


すると、一人の英雄がニヤリと笑って言った。


「決まってるだろ? あんたを鍛えるんだよ!」


「はぁ!? なんで俺が……」


「呪いを解く方法を見つけるためには、あんたに力が必要だからね」


「また厄介ごとかよ……」


俺は頭を抱えたが、彼らの目には期待が宿っていた。


「よし、それじゃあ鍛えるぞ! まずは鬼ごっこの続きだ!」


「結局また鬼ごっこかよ!」


こうして、俺の奇妙な英雄たちとの日々が始まった――。

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