第28話「黒き塔の試練」
黒い塔の内部に入ると、一気に空気が変わった。外の荒野とは違い、塔の中は冷たい空気に満ちていて、薄暗い光がかすかに足元を照らしている。壁一面には奇妙な紋様が刻まれ、かすかに魔力が漂っているのが分かった。
「ここ、やけに静かだな……。」
クロードが剣を握りしめながら周囲を警戒する。その表情は緊張に満ちている。
「何か……来るよ。」
セフィーナが杖を構えながら呟いた。その瞬間、塔全体が低い音とともに揺れ始めた。
「おいおい、また始まったのかよ!」
ハッサンが拳を構え、全員が戦闘態勢に入る。すると、目の前に突然、黒い霧が集まり始めた。
「霧? いや、これは……!」
マーリンが杖を掲げ、霧の正体を探る呪文を唱える。その答えが出る前に、霧は一瞬で形を変え、人型の何かが現れた。それは黒い鎧を纏い、漆黒の剣を握りしめている。
「騎士……か? いや、ただの人間じゃないな。」
彰人が端末を操作しながらつぶやく。
「間違いない……これ、また俺たちを試す存在だ。」
俺がそう言った途端、黒い騎士が剣を振りかざして突進してきた。
「来るぞ! 全員、構えろ!」
クロードが叫び、俺たちは一斉に応戦した。
黒い騎士の剣は異常なほど速く、力強かった。クロードが盾で防御するたびに大きな音が響き、その衝撃で足元が揺れる。
「こいつ……ただの敵じゃない。動きが完璧だ!」
クロードが必死に防戦している間、ミケが背後を狙って短剣を振り下ろす。しかし、その攻撃も黒い騎士は完全に読んでいるようだった。
「くそっ、なんで私の動きが分かるのよ!」
ミケが苛立ちながら距離を取る。その隙にハッサンが拳を叩き込むが――
「うわっ……硬ぇ!」
黒い鎧はハッサンの一撃さえも弾き返す。
「なんて防御力だ……!」
「全員、一旦下がれ!」
俺が空中に舞い上がりながら叫ぶ。全員が距離を取ると、セフィーナが回復魔法を展開し始めた。
「こんな相手、どうやって倒せばいいの……?」
セフィーナの声に、彰人が冷静に答える。
「動きを解析してみるよ。ちょっとだけ時間を稼いで!」
「分かった! みんな、もう少し耐えてくれ!」
俺たちは黒い騎士の猛攻をかわしながら、なんとか時間を稼ぎ続けた。その間に彰人が端末を操作し、騎士の動きを解析していく。
「分かった! この騎士、動きは完璧だけど、一箇所だけ隙がある!」
「隙だと?」
クロードが驚いて問い返す。彰人は急いで説明を続けた。
「この騎士、攻撃の後に一瞬だけ防御が甘くなる。その瞬間を全員で狙うんだ!」
「よし、聞いたな! 全員、攻撃のタイミングを合わせろ!」
俺の指示で全員が動き出す。クロードが先陣を切り、騎士の剣を受け止める。
「今だ、隙を作る!」
クロードが叫び、マーリンがすかさず強力な炎の魔法を放つ。それが黒い騎士を一瞬ひるませた。
「いけ!」
ハッサンが拳を叩き込み、ミケがその隙を突いて短剣を鎧の隙間に刺し込む。そして――
「隼人さん!」
セフィーナの声に応え、俺はドラゴンの姿で空から雷のブレスを放った。
「これで終わりだ!」
雷が騎士を直撃し、その姿は一瞬で黒い霧に戻り、消え去った。
「……倒したか?」
クロードが息を切らしながら剣を下ろす。俺たちは全員、疲れ果てた表情でその場に立ち尽くした。
「今のが最後の敵ならいいけど……。」
ミケが不安げに呟くと、塔の奥から再び光が放たれた。その光が収まると、巨大な扉が静かに開き始めた。
「また扉か……。」
彰人が苦笑しながら言う。
「でも、これが最後の扉かもしれない。」
セフィーナが希望を込めてそう呟く。
扉の向こうに広がっていたのは、美しい庭園だった。花々が咲き誇り、清らかな泉が中央に輝いている。その光景に全員が言葉を失った。
「なんだ……ここ?」
ハッサンが呟き、全員が泉に近づく。その水面には俺たちの姿が映っている。
「この泉……何かを示してるのか?」
マーリンが杖を泉に向けると、突然水面が揺れ始めた。そして、空中に映像が現れる。
そこに映し出されていたのは――俺たち自身だった。
「これって……!」
映像は俺たちが戦ってきた過去だけでなく、これからの選択をも示しているように見えた。そして、声が響く。
「選択の時が来た。力を捨てるか、呪いとともに進むか。」
「またその選択かよ……。」
クロードが剣を握りしめながら呟く。
「力を捨てたら、俺たちは普通の人間になる。でも、呪いを背負ったままでは、このまま前に進めないかもしれない。」
セフィーナが静かに言葉を紡ぐ。その声に全員が沈黙する。
「どうする、隼人さん……?」
全員が俺を見つめる。俺は深く息を吐き、泉を見つめた。
「……決断するしかない。俺たちの未来のために。」
俺たちはついに選択の時を迎えた――。




