第27話「選択の先へ」
「ここが……最後の試練なのか?」
目の前に広がるのは、一面が真紅の空に覆われた不気味な荒野だった。足元にはひび割れた大地が広がり、遠くには黒くねじ曲がった塔のような建物がそびえ立っている。
「これまでの試練と違って、嫌な感じがするな。」
クロードが剣を抜き、警戒しながら周囲を見渡した。
「確かに……空気が重い。まるで、この場所そのものが敵意を持ってるみたいだ。」
マーリンが杖を握りしめ、魔力の流れを確認している。その言葉にセフィーナが不安げな表情を浮かべた。
「ここが本当に最後の場所なら、きっと今まで以上に厳しい試練が待ってるんだよね……。」
「厳しいなんてもんじゃないさ。ここでしくじったら、全てが終わりだろうな。」
ハッサンが拳を握りしめながら不敵に笑うが、その言葉には覚悟が滲んでいた。
「で、どうする? あの塔まで行くのか?」
ミケが少し離れた塔を指差す。俺たちが立っている場所からは、塔までの道が遠くに続いているのが見える。だが、その道の途中には何か黒い影が揺らめいているのが分かった。
「あの影……きっとただの風景じゃないだろうね。」
彰人が端末を操作しながらそう呟く。
「おそらく、あれが最後の試練だ。塔にたどり着く前に、俺たちが乗り越えなきゃいけない壁なんだろう。」
俺がそう言うと、クロードが剣を振りながら自信ありげに答えた。
「壁なら壊すだけだ。俺たちはここまでどんな敵だって倒してきたんだ。最後もやるだけだろ。」
「そうだね。でも、慎重に行こう。これまでと同じように、全員で協力しないと突破できないはず。」
セフィーナがそう言うと、全員が頷いて一列になり、塔を目指して歩き始めた。
塔への道を進むにつれて、黒い影の正体が徐々に明らかになってきた。それは人型をしており、まるで俺たちを待ち構えるように立っている。
「……何だあいつら?」
クロードが剣を構えながら呟く。
「どう見ても敵だよね。でも、ただの魔物とは違う……。」
セフィーナが不安げに言葉を漏らすと、ミケが目を細めながらその影を見つめた。
「ねぇ、あいつら……私たちに似てない?」
「私たちに似てる?」
セフィーナが驚いたように聞き返す。確かに、影たちの姿はどこか俺たちに似ているように見えた。
「まさか……これは……!」
彰人が端末を確認しながら驚きの声を上げる。
「この影たち、僕たちの“記録”みたいだ。これまでの戦いで俺たちが積み上げてきたものが具現化してる!」
「記録だと? それが敵になるってどういうことだよ!」
ハッサンが苛立ちを露わにするが、マーリンが静かに答えた。
「試練だ。俺たち自身の強さ、これまでの歩み、それを乗り越えられるかを試されてるんだ。」
「つまり、俺たちは俺たち自身を超えなきゃいけないってことか……。」
俺は深く息を吐き、全員を見渡した。
「やるしかないな。全員、準備しろ!」
黒い影たちは一斉に動き出し、それぞれが俺たちの動きを模倣するように攻撃を仕掛けてきた。
「こいつら……俺たちの戦い方を完全にコピーしてるのか!」
クロードが影の一体を剣で受け止めながら叫ぶ。その影はクロード自身の動きを完璧に再現していた。
「隙を見せたらやられる! 全員、自分自身に勝つつもりで戦え!」
俺が叫ぶと、全員がそれぞれの影と対峙し始めた。
ハッサンは自分そっくりの影と拳を交える。
「こいつ……俺の攻撃を全部読んでやがる!」
「だったら、自分を超えるしかねぇだろ!」
ハッサンは拳に全力を込め、影の動きを上回る速度で攻撃を仕掛ける。そして、ついに影を叩き潰した。
ミケは影の背後を狙おうとするが、影も同じように動き回り、隙を見せない。
「本当にやりにくい相手ね……でも!」
ミケは影の動きを誘導し、トラップを仕掛ける。そして、見事に罠を発動させ、影を仕留めた。
セフィーナは光の魔法で影を抑えつつ、隙を見つけて攻撃を仕掛ける。
「私だって……負けないんだから!」
彼女の強い意志が影を打ち破り、光が闇を消し去った。
マーリンと彰人はそれぞれの知識と技術を駆使して影に挑む。マーリンの強力な魔法が影を圧倒し、彰人は端末を使って影の動きを解析し、逆転の一手を打ち込んだ。
そして、俺は自分の影と対峙していた。
「俺を超えろってか……!」
俺はドラゴンの姿に変わり、ブレスで影を圧倒する。しかし、影も同じようにブレスを放ち、俺の攻撃を完全に再現してくる。
「俺自身を超える……なら、もっと上を目指すしかない!」
俺は空高く舞い上がり、全力の一撃を影に叩き込んだ。影は抵抗する間もなく崩れ落ち、消えていった。
全ての影を倒した瞬間、空間が揺れ、大地に新たな道が現れた。その先には、黒い塔の入口が静かに待ち構えている。
「これで……次に進めるんだな。」
クロードが剣を収めながら呟く。俺たちは疲れた体を引きずりながらも、再び歩き出した。
「自分を超える……それがこんなに辛いなんてね。」
ミケが苦笑いしながら肩をすくめる。
「でも、これで俺たちはさらに強くなったはずだ。」
マーリンが静かに言うと、全員が頷いた。
「行こう。次が本当に最後の場所かもしれない。」
俺たちは決意を新たに、黒い塔へと足を踏み入れた――。




