第2話「追われるドラゴン」
俺は新しい寝床を探し、広大な森を抜けてたどり着いた山の頂上に腰を下ろした。ここから見える景色は素晴らしかった。その中でも、ひときわ目を引いたのは巨大な木。遠くにそびえ立ち、空に向かって枝を広げるその姿は圧巻だった。
「すげぇな……あれ、世界一大きい木か? まるで絵に描いたようだな」
ただの大木だと思い、俺はその雄大な姿を眺めながらしばらくこの山で過ごすことにした。静かな環境で誰にも邪魔されない。やっと落ち着ける場所を見つけた気がした。
だが、その静けさも長くは続かなかった。
数日後、突然空気が張り詰めた。
「ドラゴンよ、この地から立ち去れ!」
鋭い声が響き、振り向いた瞬間、無数の矢がこちらに向かって飛んできた。俺はすぐに翼を広げ、身を守る。
「なんだ!? なんだよ急に!」
矢を避けつつ、周囲を見ると、森の中から現れたのは弓を構えた一団――耳が長く、動きが俊敏な者たちだ。どうやら人間ではない。
「お前たちは……誰だよ!?」
もちろん言葉は通じない。だが、彼らの態度からして敵意は明らかだった。俺を排除するつもりなのだろう。
「この地は世界樹を守る聖域。異形の者が立ち入ることは許されない!」
一人の声がそう叫ぶ。どうやら、あの大きな木は「世界樹」と呼ばれる特別な存在らしい。
「いやいや、そんなこと知らなかったんだって! 俺はただ、眺めてただけなんだよ!」
言い訳をしたところで彼らが聞く耳を持つはずもない。矢の雨に続いて、魔法の光が俺に向かって放たれた。
「仕方ねぇな……!」
俺は軽く唸り声を上げ、爪を振り下ろして応戦した。地面が大きく揺れ、彼らの足元が崩れたが、それでも止まらない。次から次へと矢と魔法が飛んでくる。
「やれやれ、本気で来るなよ……!」
俺は翼を大きく広げ、一気に空に飛び立った。
空を飛びながらため息をつく。
「また居場所を失っちまった……やっと落ち着けると思ったのにな」
それから俺は次の寝床を求めて空を飛び続けた。だが、どこへ行っても問題が起きた。
とある湖に降り立てば、今度は湖を守る者たちが現れて俺を追い払おうとし、ある山に足を踏み入れれば、山の守護者だという獣のような連中に追われた。
「なんで俺はどこに行ってもこうなんだ……!」
俺は疲れ果てながら空を飛び続けた。
そして、たどり着いたのは広大な大地の果て――最果てと呼ばれる場所だった。そこには荒涼とした風景が広がり、人の気配はほとんどなかった。
「……ここなら誰もいないか?」
そう思って少し歩き回ると、小さな村が視界に入った。古びた木造の建物がいくつか並び、畑らしきものも見える。本当に小さな村だ。
俺は慎重に村を見下ろしながら、確認するが人の気配は、なかった。
「さすがに最果てだからもう人は、居ないか。でも
もし村人が隠れて居たら……うーんあの村に近づくべきか、それとも……」
俺はしばらく空を漂いながら、次の行動を考えることにした――。