第17話「大魔導師マーリンの試練」
「さあ、次は僕の番だね。」
ミケが次元の扉から戻り、新たな試練を知らせる光が扉から放たれると、静かにその場に立ち上がったのは大魔導師マーリンだった。彼は長い杖を軽く振りながら、不敵な笑みを浮かべていた。
「マーリン、大丈夫? あなたの試練は何が出てくるんだろう。」
セフィーナが心配そうに声をかけるが、マーリンは肩をすくめるだけだった。
「何が出てきても、僕は大丈夫さ。僕の魔法があれば、どんな試練だって突破してみせるよ。」
「その自信はどこから来るんだ……。」
隼人が呆れたように言うと、マーリンはにやりと笑い返した。
「隼人、君こそ信じてくれよ。僕がどれだけ優れた魔導師か、君はまだ本気で知らないみたいだね。」
「まあいい。無事に戻ってくれば、何も文句は言わないさ。」
クロードが苦笑いしながら杖を見つめるマーリンに言葉をかけると、彼はその長い髪を指でかき上げながら答えた。
「心配いらないよ。僕が帰ってくるときには、この扉の謎がさらに解けているはずだ。」
彼の軽い調子に、子供たちは少しだけ笑顔を取り戻した。そして、次元の扉は再び輝きを増し、マーリンを迎え入れるようにゆっくりと開かれた。
「じゃあ、行ってくるよ。」
彼は杖を片手に扉の中へと歩みを進め、光の中に姿を消した――。
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マーリンが扉を抜けた先は、暗闇に覆われた広大な空間だった。地面も空も見えず、ただ黒い霧が立ち込めているだけだった。
「これは……何も見えないね。」
彼は杖を掲げ、魔法の光で周囲を照らそうとする。しかし、光はすぐに黒い霧に飲み込まれ、何も見えない。
「なるほど。この霧そのものが試練の一部ってわけか。」
マーリンが冷静に状況を分析していると、突然霧の中から低い声が響いた。
「知恵ある者よ。この試練を越えるには、己の魔力と知性を示せ。」
「魔力と知性を示せ、か……ふむ、面白いね。」
マーリンは杖を構え、周囲の霧を払うように魔力を放った。しかし、霧はその魔力を吸い込むようにして消えるどころか濃くなっていった。
「簡単にはいかないってことか。」
彼が再び魔法を放とうとしたその時、霧の中から無数の影が浮かび上がってきた。それらは人型をしており、漆黒の体から赤い目だけが光っている。
「さあ、試してみようか。この霧の中でどこまで僕の魔法が通じるのかをね!」
マーリンは笑みを浮かべると、杖を振り上げて魔法を発動した。
「炎よ、燃え広がれ――『フレイムバースト』!」
彼の足元から放たれた炎の渦が影たちに向かって広がる。しかし、影たちは炎を避けるどころか、それを吸収するように動いた。
「吸収した……?」
マーリンは目を細めて考え込む。
「なるほど、ただの力押しじゃ通じない相手か。なら、少し頭を使うしかないね。」
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マーリンは影たちが自分を囲むのを見ながら、動きに注目していた。
「こいつら、霧と一体化してる……この霧を何とかしないと、いくら魔法を使っても意味がないな。」
彼は杖を地面に突き立て、静かに呪文を唱え始めた。
「闇を払いし光よ、真実の道を照らせ――『ホーリーバニッシュ』!」
眩い光が杖から放たれ、周囲の霧を一気に払い始める。影たちはその光を嫌がるように後退し、姿を消していった。
「これで霧を少しずつ消していけば、先に進めそうだね。」
彼は杖を掲げ、光を放ちながらゆっくりと前進した。
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しばらく進むと、霧の中に巨大な門が現れた。その門には複雑な文字と模様が刻まれており、何か仕掛けがあるのは一目瞭然だった。
「これがゴールってわけじゃなさそうだね。仕掛けを解かないと通れないのか。」
彼は門を調べながら、刻まれた文字を一つ一つ読み取っていく。
『四つの炎を灯せ。知恵の試練を越えし者のみ、この門を通る資格を得る』
「炎を灯せってことは、この模様が関係してるんだろうな。」
彼は模様の形状や配置をじっくりと観察し、四つのポイントに魔力を注ぎ始めた。そして――
「これでどうだ。」
門がゆっくりと開き始め、暗闇の奥に続く光の道が現れた。
「やったね。これで試練は突破か。」
マーリンは杖を握り直し、光の道を進んでいった。
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次元の扉の前に戻ったマーリンは、軽く息を整えながら扉を抜けた。そして仲間たちが待つ場所に帰還する。
「ただいま!」
「おかえり、マーリン!」
セフィーナが笑顔で迎え、クロードとミケも拍手を送る。
「さすがだな。お前、何も心配いらないって顔して戻ってくるとか、余裕すぎだろ。」
クロードが苦笑しながら言うと、マーリンは杖を回しながら肩をすくめた。
「だって余裕だったんだから仕方ないだろ?」
「調子に乗るなよ、次はもっと厳しい試練が来るかもしれないぞ。」
隼人が苦笑いしながら言うと、マーリンは小さく笑って答えた。
「その時はその時さ。さて、次は……本田だっけ?」
プログラマー本田彰人が前に出てきて小さく頷いた。
「うん、僕の番だね。何が出てくるか分からないけど、やるしかないよね。」
全員が次の試練に向けて準備を進める中、緊張感が漂い始めていた――。




