第16話「大盗賊ミケの試練」
「さて、次は私の番だね。」
クロードが戻ってきて扉が再び静かになった後、大盗賊ミケは扉の前に立って笑みを浮かべた。
「お前、本当に大丈夫なのか? クロードの話を聞いた感じだと、試練はかなり厳しいみたいだったぞ。」
俺が心配そうに声をかけると、ミケは肩をすくめながら軽く笑った。
「大丈夫に決まってるじゃない。私は盗賊だよ? 相手の隙をつくのが得意なんだから、何が来てもなんとかするって!」
「お前、何でも軽く考えすぎなんじゃないか?」
クロードも呆れたように口を挟むが、ミケは全く気にする様子もなく、扉に向き直る。
「まあまあ、私を信じて見ててよ。きっと面白いところを見せてあげるからさ!」
「ふぅ……無理するなよ。無事に戻ってくるのが最優先だからな。」
セフィーナが優しく声をかけると、ミケは振り返ってウインクをした。
「ありがと、セフィーナ。でも無事に戻るだけじゃつまらないでしょ? ちゃんと成果を持って帰るよ。」
ミケの言葉に子供たちは少しだけ安心したように頷く。そして、次元の扉が再び光を放ち始める。
「じゃあ、行ってくるね!」
ミケはその小柄な体を躍動させるようにして、扉の中へと消えていった――。
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ミケが次元の扉を抜けた先には、広大な森が広がっていた。うっそうと茂る木々に囲まれ、空はほとんど見えない。足元には枯れ葉が積もり、湿った空気が漂っている。
「ここが私の試練の場か……ふふっ、なんだか盗賊向きの場所じゃない?」
ミケは素早く木々をよじ登り、高い位置から周囲を見渡す。だが、その森はどこまでも続いているように見え、どこがゴールなのか全く分からない。
「さて、どこに進めばいいのかな?」
彼女が独り言を呟いた瞬間、突然空中に文字が浮かび上がった。
『この森は迷宮。出口を見つけることが試練である。だが、迷いを抱く者には出口は見えない』
「迷宮ね……それで迷いを抱く者はダメって?」
ミケは苦笑しながら木から飛び降りた。
「迷いを抱くなって言われてもね……まあ、何とかなるでしょ。」
彼女は軽い足取りで森の奥へと進み始めた。
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進むにつれて森はさらに暗く、複雑になっていった。同じような風景が続き、道は無数に枝分かれしている。
「これ、どの道が正解なのか全然分からないね……。」
ミケは小声で呟きながらも、地面のわずかな痕跡や風の流れを頼りに進んでいく。盗賊としての勘が冴えわたり、慎重に進む彼女の動きはまるで動物のようだった。
だが、しばらく進んだところで、突然地面が大きく揺れた。
「な、何!? 地震!?」
彼女が驚いて立ち止まると、地面から巨大な植物の触手のようなものが伸びてきた。それは鋭い棘を持ち、明らかに攻撃的な動きをしている。
「なるほどね。迷宮ってだけじゃなくて、敵まで出てくるのか……。」
ミケは腰の短剣を抜き、触手の攻撃をかわしながら切り返した。
「ふふっ、この程度じゃ私を捕まえるなんて無理だよ!」
彼女の俊敏な動きに触手は翻弄され、次々と切り落とされていく。
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触手を倒してさらに進むと、森の中心らしき場所に到着した。そこには巨大な樹木がそびえ立ち、その幹には奇妙な扉が埋め込まれている。
「これがゴール……なのかな?」
ミケが近づこうとすると、今度は樹木の根が地面から伸び上がり、彼女の進路を塞いだ。
「また敵? ほんと飽きさせない試練だね。」
ミケは再び短剣を構え、根に向かって駆け出した。
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だが、この根は触手よりもさらに厄介だった。動きが速い上に、鋭い棘が彼女を取り囲むように迫ってくる。
「さすがにこれは……手強いね!」
ミケは一瞬の隙をつき、根の間をすり抜けていく。そして幹に張り付くように飛び上がり、短剣で扉の周囲を削り始めた。
「この扉さえ開ければ……!」
彼女が扉を開こうと力を込めた瞬間、空中に再び文字が浮かび上がった。
『盗賊の知恵を示せ。力だけでは開かれない』
「知恵ね……なるほど、仕掛けがあるってことか。」
ミケは扉の表面を慎重に調べ、微妙な凹凸や隠されたスイッチを探し始めた。そして、幹の一部に小さな隙間を見つける。
「これだ……ここに鍵を差し込むのかな?」
彼女は短剣を隙間に差し込み、慎重に角度を調整して回した。
カチリ――。
扉がゆっくりと開き、森全体が光に包まれた。
「やった……突破した!」
ミケは扉の向こうに現れた光の道を進み、再び次元の扉の前に戻った。
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「ただいま!」
ミケが笑顔で戻ってくると、子供たちは歓声を上げた。
「おかえり、ミケ! 無事でよかった!」
「ふふっ、任務成功って感じかな。」
「どうだった? 試練は厳しかった?」
クロードが尋ねると、ミケは少しだけ疲れた表情を浮かべながら答えた。
「まあ、厄介な敵も出てきたけど、盗賊らしい試練だったよ。これで次の準備も整ったね。」
「次は俺か……嫌な予感しかしねぇな。」
次の挑戦者は大魔導師マーリン。全員が次の試練に備えながら、緊張の空気を漂わせていた――。




