第14話「次元の扉と選ばれし者」
「次の扉を開ける前に、隼人、まずは少し休もうよ!」
子供たちの声が頭の中に響く。俺は目の前に浮かぶ扉を見つめながら、大きく息を吐いた。
「お前らにしては珍しくまともな提案だな……そうだな、一度戻るか。」
ゴーレムを倒して次の扉が現れたものの、今の俺は疲れ切っていた。この状態で進むのはさすがに危険だと判断し、俺は扉を安定させたまま引き返すことを決めた。
「よし、戻るぞ……ちゃんと扉が繋がってるといいんだが。」
俺は最初にくぐった扉を振り返り、ゆっくりと足を踏み入れた。
---
視界が一瞬揺れ、再び子供たちの待つ訓練場へと戻ってきた。
「隼人、おかえり!」
「無事に戻ってきてよかったよ!」
子供たちは満面の笑顔で俺を出迎えた。俺はその様子に少しだけ安心しながら、地面に腰を下ろした。
「はぁ……ただいま。とりあえず報告するぞ。扉の向こうには広大な草原があって、その中央に巨大なゴーレムがいた。」
「ゴーレム? もしかして試練だったの?」
「そんな感じだな。力を示せって書かれた石碑があって、そいつを倒したら新しい扉が現れた。」
俺が説明すると、子供たちは興味津々に身を乗り出してきた。
「じゃあ、その先にはさらに大きな試練が待ってるかもね!」
「それは勘弁してくれ……もう体力的に限界だ。」
俺がため息をつくと、一人の子供が魔法を唱え始めた。
「じゃあ、回復魔法をかけてあげる! 少しでも楽になるはずだよ!」
「おお、助かる……お前らがいると疲れるけど、こういう時だけはありがたいな。」
「うふふ、もっと感謝していいんだよ?」
子供たちは笑いながら、俺に次々と回復魔法をかけてくれた。
---
「それで、次の扉にはいつ行くの?」
少し休憩していると、子供の一人がそんなことを聞いてきた。俺は水を飲みながら答える。
「明日だな。さすがに今日は無理だ。それに次はお前らも少し来てもらうぞ。」
「えっ!? 私たちも行くの?」
「そうだ。お前らだけをここに残すのは心配だし、扉の先に何があるか分からない。少しでも力を貸してもらわないとな。」
俺の言葉に、子供たちは少し驚いた様子だったが、やがて笑顔を浮かべた。
「分かった! それなら私たちも準備しておくよ!」
「頼むぞ。俺一人で全部やるのはさすがに限界だ。」
---
次の日の朝、俺たちは再び次元の扉の前に立っていた。子供たちも全員揃い、それぞれ武器や魔法の準備を整えている。
「準備はいいか?」
俺は目の前に浮かぶ次元の扉を睨みながら、子供たちを振り返った。6人の子供たちは緊張した表情を浮かべながらも、力強く頷いた。
「うん! 今日こそ、私たちも一緒に行くよ!」
「今回は全員で突破だな。」
俺は扉を指さして言った。
「この扉は今までと違って安定してる。きっと全員通れるはずだ。」
俺の言葉に子供たちは明るい表情を浮かべた。
「じゃあ行こうよ、隼人!」
「よし、行くぞ!」
俺が先頭に立って次元の扉をくぐると、体が吸い込まれるような感覚が広がった。そして次の瞬間――
「おい、どうした?」
振り返ると、子供たちは扉の向こう側で立ち止まったままだった。
「な、なんで!? 入れない!」
「嘘でしょ、なんで弾かれるの!?」
子供たちが扉を通ろうとするたび、何か見えない力に押し返されてしまう。
「おい、どうなってるんだ!? 扉は安定してるはずだろ!」
俺が叫ぶと、6人の中で唯一の聖女――セフィーナが、静かに扉の前に立った。
「ちょっと試してみるね……。」
彼女が一歩前に出ると、驚いたことに扉はスムーズに彼女を受け入れた。
「えっ、私だけ……?」
セフィーナは困惑しながら振り返る。俺も驚きつつ声をかけた。
「……お前、どうして通れたんだ?」
「わ、分からないよ。でも、みんなはどうして……?」
セフィーナが不安そうに子供たちを見つめると、一人の男の子が唇を噛みしめながら言った。
「もしかして、これは選ばれた人しか通れない仕組みなのかも……。」
「選ばれた人?」
俺が首を傾げると、別の子供が真剣な顔で説明を始めた。
「この扉は試練を乗り越えた人だけが通れるのかもしれない。もしくは、何か特別な力を持ってる人だけとか……。」
セフィーナが通れて、他の子供たちが弾かれる――この現象には何か理由があるはずだ。俺はスキルボードを開いて、次元の扉の詳細を確認する。すると、新たな説明が浮かび上がった。
『次元の扉は一度に一人のみを通す。さらなる試練を乗り越えることで、次の者が通る資格を得る』
「なるほどな……そういうことか。」
俺はスキルボードを閉じ、子供たちに向き直った。
「この扉は、試練をクリアするたびに一人ずつ通れる仕組みらしい。つまり、次の試練を越えない限り、お前たちはここを通れない。」
その言葉に子供たちは目を見開いた。
「じゃあ、今はセフィーナだけが通れるってこと?」
「ああ、そうみたいだな。」
「なんで……? 私たち全員で進みたかったのに……。」
悔しそうに呟く声が響く中、セフィーナが申し訳なさそうに口を開いた。
「ごめんね、私だけ……。」
「セフィーナ、お前が謝ることじゃない。」
俺は彼女の肩に手を置いて続けた。
「むしろ、お前がここを通れるのは何か意味があるはずだ。だから一緒に来てもらう。お前の力を頼りにするぞ。」
セフィーナは少し不安そうな顔をしたが、やがて力強く頷いた。
「分かった! 隼人の力になれるよう頑張る!」
---
セフィーナを連れて扉をくぐり、俺たちは次の世界へと足を踏み入れた。そこは一面が真っ白な空間で、天井も地面も壁もない。ただの無限の白い空間だ。
「ここ……何もないね。」
セフィーナがキョロキョロと周囲を見回す。俺も同じように目を凝らすが、確かに何もない。ただ、不思議な静寂が漂っているだけだった。
「何かあるはずだ。この場所が試練の場だとすれば、ただの空間ってわけじゃないだろう。」
そう言った瞬間、白い空間の中央に黒い影がゆっくりと現れ始めた。その影は次第に形を成し、人の姿になっていく。
「……誰だ?」
俺が身構えると、黒い人影がこちらを指さしながら静かに喋り始めた。
「力を示せ。それがこの空間を抜ける条件だ。」
「力を示せ……また戦いかよ。」
俺はため息をつきながら構えた。すると、セフィーナが一歩前に出てきた。
「隼人、私も戦うよ! ここを突破するには私も力を出さないといけないんでしょ?」
「お前、大丈夫か?」
「大丈夫! 私、聖女だから回復魔法や補助魔法なら得意だよ!」
俺は彼女の決意を感じ取り、頷いた。
「分かった。俺が前線で戦うから、お前は後ろから援護してくれ!」
「うん!」
---
黒い影が巨大な剣を持ち出し、ゆっくりと俺たちに近づいてくる。その気配だけで空間が揺れるような恐怖を感じる。
「いくぞ!」
俺はドラゴンの姿になり、ブレスを放った。しかし、黒い影はそれを剣で簡単に弾き返した。
「くそっ、強いな!」
「隼人、動きを止めるね!」
セフィーナが杖を振り、影の足元に魔法陣を展開する。光が影を拘束し、動きを一瞬止めた。
「今だ!」
俺は全力で爪を振り下ろし、影の体を攻撃する。だが、影はすぐに拘束を振りほどき、剣を振り上げて反撃してきた。
「危ない!」
セフィーナが素早く回復魔法を唱え、俺の傷を癒やしてくれる。
「助かった……! お前がいると心強いな!」
「もっと頑張るから!」
俺たちは息を合わせ、次々と影に攻撃を仕掛けた。そしてついに影は崩れ落ち、白い空間に静寂が戻った。
---
「やったのか……?」
俺が息を整えながら呟くと、空間の奥にまた新たな扉が現れた。
「これが次の扉……!」
「隼人、私たちやったんだね!」
セフィーナが笑顔を見せる。俺は彼女に頷き返しながら、次の扉を見つめた。
「次は誰が通れるのか分からないが……まずは戻って報告だな。」
俺たちは再び扉をくぐり、仲間たちの元へ帰る準備をした――。




