第13話「次元の扉の先」
「さあ、隼人。いよいよ扉を越える準備をするよ!」
訓練場に集まった子供たちは、これまで以上に真剣な顔をしていた。俺は彼らの勢いに押されるように、次元の扉を作り出すスキルを発動させた。
目の前に現れたのは、漆黒の空間に続く歪んだ扉。扉自体は以前よりも安定していて、形もはっきりしている。
「よし、今回こそこの扉を通れるようにするぞ!」
子供の一人が拳を握りながら言うと、俺はため息をつきながら答えた。
「いや、簡単に言うなよ。俺だって何が待ってるか分からないんだぞ。」
「分からないから試すんじゃない!」
「……お前らは本当に怖いもの知らずだよな。」
俺は呆れながらも、扉をじっと見つめた。確かにこの先には何かがある。それは分かる。だけど、その何かが俺たちにとって希望になるのか、それとも新たな脅威になるのかは誰にも分からない。
「隼人、今のあんたならできるよ。私たち信じてるから!」
女の子の声が静かに響く。俺はその言葉に背中を押され、再び深呼吸をした。
「分かった。じゃあ行くぞ。」
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まず俺が試しに扉に手を伸ばした。指先が黒い空間に触れると、不思議な感覚が広がる。吸い込まれるような感覚だが、体が分解されるような痛みはない。
「これなら……通れそうだな。」
俺がそう呟くと、子供たちが一斉に前に進み出た。
「じゃあ私たちも一緒に――」
「待て。」
俺は手を挙げて彼らを制した。
「お前らはここに残れ。何があるか分からない以上、全員で突っ込むのは危険だ。」
「でも隼人、あんた一人で行くなんて……!」
「だからこそだ。一人なら何があっても引き返せる。全員で危険に巻き込まれるわけにはいかない。」
子供たちは不満そうな顔をしながらも、渋々頷いた。
「分かった。でも絶対に戻ってきてね。」
「もちろんだ。俺はお前らを残して死ぬつもりはない。」
俺は力強く答え、次元の扉に足を踏み入れた。
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扉をくぐった瞬間、視界が一瞬真っ白になり、次に現れたのは広大な草原だった。青空が広がり、柔らかい風が吹き抜ける。
「ここは……どこだ?」
俺は周囲を見渡しながら呟いた。どうやら危険な場所ではなさそうだ。だが、妙に静かすぎるのが気になった。
「人の気配も、動物もいない……。」
俺は慎重に歩を進めながら、何か手がかりになるものを探した。すると、草原の中央に奇妙な石碑が立っているのを見つけた。
「なんだこれは……?」
近づいてみると、石碑には古代文字のようなものが刻まれていた。
「……読めるのか?」
不思議なことに、目を凝らしていると自然と意味が頭に浮かんできた。
『次元を超える者よ。この地は異界の試練場なり。力を示せ、さすれば扉は開かれん』
「試練場……力を示せ……?」
俺が困惑していると、突然地面が揺れ始めた。
「なんだ!?」
地面から突如現れたのは巨大な石のゴーレムだった。その体は山のように大きく、俺のドラゴンの姿よりもさらに巨大だ。
「いきなりこんなもんが出てくるのかよ……!」
ゴーレムは無言のまま拳を振り上げ、俺に向かって振り下ろしてきた。
「くそっ、仕方ねえ!」
俺はすぐに擬人化を解除し、ドラゴンの姿へと戻る。そしてゴーレムの拳を翼でかわしながら、雷のブレスを叩き込んだ。
「これでどうだ!」
雷がゴーレムの体を直撃する。しかし、ゴーレムは微動だにせず、再び拳を振り上げた。
「効いてねえのか……!? なんてタフなやつだ!」
俺は空中に飛び上がり、さらに距離を取って攻撃を仕掛ける。だが、ゴーレムはまるで壊れない壁のようにすべての攻撃を受け流していた。
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「隼人、聞こえる?」
突然、頭の中に声が響いた。それは子供たちの声だった。
「おい、どうしてお前らの声が……?」
「扉を通して、私たちの魔法で隼人に声を届けてるんだよ! 状況はどう?」
「最悪だ! デカいゴーレムが現れて、全然ダメージが入らねえ!」
俺が叫ぶと、子供たちはしばらく沈黙した後、一人が提案してきた。
「隼人、空間制御を使ってみて! ゴーレムの動きを封じるとか、攻撃を跳ね返すとか!」
「空間制御か……確かに、今の俺なら!」
俺は空間制御のスキルを発動し、周囲の空間をねじ曲げてゴーレムの動きを封じることに集中した。
「……動きを止めろ……止まれ!」
すると、ゴーレムの巨大な体が徐々に動きを鈍らせ、その場に静止した。
「よし、これで攻撃を集中させられる!」
俺は力を込めて雷のブレスを叩き込み、空間の裂け目も利用してゴーレムの体を削り続けた。
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しばらく攻撃を続けた結果、ついにゴーレムは崩れ落ち、動かなくなった。
「……やったのか?」
俺が息を整えながら呟くと、石碑が再び光り始めた。そしてその中央に新たな扉が現れる。
「これが……次の扉か。」
俺はその扉を見つめながら、深く息を吐いた。
「お前ら、聞こえるか?」
「聞こえるよ! 隼人、次の扉が現れたんだね!」
「そうだ。けど……もう少し準備をしてから進むべきだな。」
「うん、無理しないでね。戻ってきてくれてもいいんだから!」
子供たちの声を聞きながら、俺は扉を前にしばらく考え込んだ。この先に何が待っているのかは分からない。それでも、英雄たちを救うためには進むしかない――そう心に決めた。




