2nd Season Start
『こことは違うどこかの日常』
2nd Season Start
『人』の夢と希望を守るために生み出された、そのためのこの腕、この身体。
正義を信じて戦ってきたが、いつのまにかその崇高な目的は失われ、あるのはただ『生きる』ための渇望のみ。
このままではいけない、再び正義のために戦うために・・いや、己自身がこの世界の悪の象徴たる『害獣』とならないためにはどうしてもあれが必要なのだ。
人間という脆弱極まりない種族が、自分達の種を守らせるために作りだし、強大な他種族の長たる『魔王』や『神』を倒すために作り出したという『人造勇者』。
他の種族の間では自然発生の生き物と伝えられていたりもして、実は人為的に作り出されたものであるということは意外と知られていないこの恐るべき人型決戦兵器の中に、ごく少数であるが自我に目覚め、勇者であることをやめてしまった者が存在する。
彼らは、己の超人的な能力一切を捨て去り、ただの脆弱な人間として生きる道を選んだといわれるが、それを捨て去るにあたってそれらの超人的な能力を一つの宝珠として封じ込めたという。
それが『勇者の魂』
異界の力ではない、この世界に元から溢れている大自然のエネルギーと、『人』が持つ強き心の力が合わさり無限の力を発揮すると言われている。
自分達『人造勇神』のモデルとなった『人造勇者』のその『勇者の魂』だけが、不完全な自分達を完全なものへと変化させてくれるのだ。
だが、ただでさえ『害獣』によってほとんどの『人造勇者』が狩り尽くされたこの危険な世界で、わざわざ脆弱な人間として生きる道を選び、今も尚生き続けている『人造勇者』など自分が知る限りたった二人しかいない。
そのうちの一人は、愛する妻にその力の全てを与え、最早『勇者の魂』を持っていないことがわかっている。
つまり、この世界で『勇者の魂』を持っているとはっきりわかっているものは一人しかいないわけだ。
そいつからどうしても奪い取らなければならない・・
生き残った他の兄弟達よりも早く・・
完全なる正義となるために。
完全なる悪にならないために。
だが・・
果たして僕はそいつから奪い取ることができるだろうか?
『人造勇者』として生きる道を捨て去り、わざわざ脆弱な人間として生きる道を選んだそのバカな人間から果たして奪い取ることができるのだろうか?
僕は知っている、あいつがどれほどの大バカであるか。
友達という他人の為にいつも命がけで戦い続ける愚か者。
僕は知っている、あいつがどれほどくだらない幻想にとらわれた人間であるかを。
自分を差別する他種族のもの達を、軽蔑している風を装いながらも心の中では信じていることを。
でも僕は知っているのだ・・あいつがどれほど強いかを・・
わからない・・わからない・・脆弱な人間であるあいつがなぜ、あれほどまでに強いのか・・
僕をいつでも殺せるだけの力を持ちながら、なぜいつもそうしようとしなかったのか・・
だが、まあいい、まずはあいつから『勇者の魂』を手に入れて完全になることが先だ。
完全になることができたそのときには、きっとその答えがわかるはずだ。
さあ、待っているがいい、我が宿敵よ。
おまえから『勇者の魂』を奪うのはこの僕だ。
僕こそがおまえを倒し、『勇者の魂』を手に入れるにふさわしい。
他の四人の兄弟たちの誰よりも僕が・・このキマイラ 人造勇神 倚天屠龍が・・
待っていろ・・
宿難 連夜!!