第7話 国王の側近が私の友人を呼びだした件
オリーヴは、自分より一回りも二回りも大きいラドに怯えていた。
いわば城内の使用人を始め侍女や秘書官など全ての統括を務めている国王の側近である。ただでさえ怖い雰囲気の彼に一人で呼び出されるなど、人生で経験したくない事の上位に入る。
ラドは長い廊下をずんずんと先に進んでいき、止まる様子がない。
「ラ、ラド様、どこまで行くのでしょうか……」
まさか、使用人に仕置きをするための拷問部屋などを所有しているなんてことは……。
「……人が居る場所でできる話ではないので、私の部屋に行きます。」
「部屋ですか!?」
「……ええ、執務室は秘書官がいるので。」
誰にも見られたらいけないような事をされるんだ!!!!
オリーヴは来た道に体を向け、全力で走った。
「!? オリーヴ!!」
ラドは逃げ去るオリーヴを追う。
ぜえぜえと息を荒げるオリーヴは立ち止まった。
「逃げられるわけないだろう。」
オリーヴの足ではもちろん逃げ切ることはできず、あっと言う間にラドに腕を掴まれる。
「ひいいい……っ!!殺さないでください!!ひどいことしないでください!!許してください!!」
「……は?」
「誰にも見られないところで私を始末するんですよね!!?」
「しません…。」
「やっぱりそ……ん?」
「しませんよ……。」
ラドはオリーヴを自室の椅子に座らせ、紅茶を入れてやった。
「落ち着きましたか。」
「は、はい、すみません……。」
「……話したかった事というのは王妃殿下とあなたの会話についてです。国王夫妻の情報を不特定多数の人間に聞かれる可能性のある場所で大声で話さない。それを言うために呼んだだけです。」
「それだけですか……?」
ラドの鋭い目がオリーヴを正面に捉える。
「それだけとは何事ですか。」
「あひっ……すみませんん……!!」
「そういう所です!!王妃の側近としての自覚が足りない!!」
「はいっ!すみません!!」
「……あなたの良い所はその素直さです。まだ共に仕事をして短いですが…、他の使用人たちからの評価も高いです。飾らなく一生懸命な所はよろしい。しかし王妃の側…」
「ありがとうございます!!」
「最後まで聞く!!」
◇◇◇
「……って事があったんですよー!!」
「大変だったわね……」
まあ、恥ずかしかったから叱ってくれてよかった……と心の中で思いながら、モーラは、ふと考えた。
フォレガドル王国にいた頃、本邸から離れたところで育った私は、本来なら貴族の娘たちが侍女として側に何人か仕えるところを、オリーヴたった一人と共に過ごしてきた。父や継母がそう決めたのだが、モーラ自身も特に他の者を側につける必要を感じずそのままでいた。
「ねえオリーヴ、今まで大変だったでしょう。一人で色々な雑事をこなしていたんだものね。」
「えっ、どうしたんですかモーラ様。全然大変じゃありませんよ!一介の使用人に優しくしてくださるのはモーラ様くらいですよ!」
オリーヴの、明るくて朗らかな所が大好きだ。
素直で、優しくて、実家で仲間外れにされていた私のそばにただ一人で仕えて、文句も言わず楽しそうに暮らしてくれている。
ハバルナ王国に嫁ぐとなった時もオリーヴは当たり前のように「付いていきますよ~」と即答したっけ。
「ありがとうね、オリーヴ。私決めたわ。」
「何をですか?」
「あなたを正式に私の侍女にする事を国王と話してみます。」
「えええ!!?」