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第24話 わしに名前がにゃいとはどういう事にゃ!!


わしは猫にゃ。


名前は……あれ、名前はなんだったかにゃ?


灰色の三又猫は思い返した。

この城に来てからの己の呼び名を……。


「にゃんちゃん」

「毛玉ちゃん」

「モップちゃん」

「灰色ちゃん」


……名前がまだ無い!!


城に住み着いて1ヶ月程。


「よし、にゃ」


灰色の毛玉は思い立った。

こうして名の無い猫は名前探しの旅に出た。







猫は廊下に踊り出し、まずは使用人たちから…と思ったが、この城の者たちは妙に忠義に厚いから、国王夫妻が可愛がっている猫に勝手に名前は付けまい。

灰色猫はオリーヴとラドが責任を持って監督するという話で使用人たちも納得しているため、猫は居場所の分かりやすい方、まずはオリーヴのもとへと向かった。


今は午後2時くらい。この時間オリーヴは自室にて書類などの雑務をこなしている。

オリーヴの部屋の前まで来ると、向かい側にある、他の侍女部屋の扉が開いた。


「あら、猫ちゃん」


ベテラン侍女のドナが、猫に返事を要求するでもなく声をかける。

続いて部屋からクレアが顔を出した。

分厚い瓶底ネガネの中の瞳が一瞬でゆらめく。


「にゃあー」


猫は軽い挨拶のつもりで一声鳴く。


ドナは興味なげにどこかへ歩いて行ってしまった。

クレアはなぜかどこにも行こうとせず、むしろしゃがんでその場から動かない構えを取っている。


「んにゃぁ?」


ご飯かおやつでもくれるのかにゃ?、と猫はモフモフの頭をかしげてそのままごろんと腹を見せる。

この城に己をいじめる者などいやしないのだから、甘えるだけ得である。事実、すり寄って行くと1日に何人もの使用人たちから貢ぎ物をもらえた。


クレアは分厚いメガネの下で丸い目をキョロキョロと動かして辺りに誰もいないのを確認する。


「も、もふ…ちゃん」

「?」


突如、猫の視界が暗くなった。


「うああぁぁ…ふわふわぁぁあ……!」


クレアは猫の灰色の毛並みに顔を埋め、感嘆の声を漏らしている。


「ん゛に゛ゃ゛あ゛!!!!」


強めにクレアの顔を蹴り、灰色の毛玉は転がるようにオリーヴの部屋へ飛び込んだ。


どたどたっ、という音で気付いたのだろう、オリーヴが机の上で「わあっ」と声を上げる。


「え、にゃんちゃん?どうしたのそんなに慌てて」


そう言うオリーヴも慌てているように見える。

猫がオリーヴの顔を見ると、彼女は口元に垂れていたヨダレをぬぐった。


「さては寝てたにゃ?」

「んへ…バレちゃった…」


どうかラドさんには内密に…と言うオリーヴをじっとりと睨み、猫はこの部屋に来た理由を話し出した。


「わしの名前なんにゃが…」

「え?にゃんちゃんの?」

「……ん、んん…」


こいつ“にゃんちゃん”に疑問すら持った事ないな、と猫は思った。




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