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第15話 寝室への来訪者(2)

 

 騒動から一夜明けた城内は不穏な空気が漂っている。

 使用人たちは怯えて仕事にならないし、大臣たちも城に近付きたがらないので、数日間の暇を出した。


 ラドはそんな状況にやきもきしていた。

 事件のあった場所の近くにいたという事もあり、解決できない事に焦っているのだ。


 事件の当事者であるオリーヴも、ラドの配慮により休みを取らせ、王妃と過ごす時間を持たせてある。



 ◇◇◇



 傷心のオリーヴは安全が確認された部屋で、主人に膝枕されていた。


「オリーヴ…無事でよかった……」

「うう…まだ、怖いです……」


 モーラは「大丈夫、大丈夫…」と友人の頭を撫でながら、昨夜の一件を思い出していた。


 侵入者は、物を動かしたり、人の動作に反応もしているようだ。一体、何の目的があってそんな事を?

 城内に入ってくるなど、普通の考えの人間ではないはずだ。しかし、やっている事といえば、城内の者に危害を加えるでも高級な調度品を盗むでもない。


 モーラは頭を抱えた。


(うーん……被害が無いのは幸いだわ……)


 でも、本来の目的は何なのだろう。

 考えれば考えるほどに侵入者に対する訳の分からない恐怖が、深まっていく気がした。



 ◇◇◇



 夕食を終え、その日は何も起こらないまま夜が更ける。

 オリーヴは国王夫妻の寝室近くの小部屋に移動してある。


 いつものように夫妻は寝室で軽く談笑し、眠りにつく準備をしていた。

 アルヴェルは不安からかどことなく落ち着かない様子を隠すようによく喋ったが、モーラもそれを察して平静を装っていた。


 ベッドに入り、2人がもう寝ようかという頃。緩く燃えていた暖炉の火が消えかけ、アルヴェルが木を足しに暖炉へ向かった。


 モーラが1人座るベッドに、何かが飛び乗る衝撃があった。


「え!?」

「どうした!?」


 アルヴェルが枕元に備えていた剣を抜き、モーラを庇う。


「い、今、何かがベッドの上に乗ってきたような」

「どこの国の刺客か」


 アルヴェルがベッドを睨み、今にも剣を振り下ろさんとする。


 ぽとん、と音がして、モーラの足元に何かが触る。

 素肌の脛に、何か毛糸のような……。


 アルヴェルが床に向かって刃を突き立てようと振りかぶる。


「待って!!」


 モーラが大声と共にアルヴェルを制した。


「!?」


 モーラの声にアルヴェルは咄嗟に手を止めた。


「……猫、です!」

「は……?」


 モーラは足にすり寄ってきた毛玉を拾い上げる。


「猫、です。アルヴェルさん。見えないけれど…間違いなく」

「侵入者が、猫?」

「はい…一連の犯人は、おそらく」


 モーラが拾い上げた猫と共にベッドに座る。

 みるみるうちに長い毛の灰色の猫が姿を現した。


「んーにゃ。やれやれだわにゃあ~」


 のんびりとした口調で喋る、低くしゃがれかけた声。間違いなく灰色の猫から発されている。


 アルヴェルは剣を収めるのも忘れ、ぽかんと口を開けて突っ立っている。


「おお、寒い寒い。とりあえずそこの布団に入れてくれにゃ」


 はっとしたアルヴェルが猫を止める。


「か、勝手に何を!!」

「よせよせ、うるさいのはきらいじゃあ。わしはただ、あったかい所を探していたまでよ」


 猫は長い毛に埋もれそうな平坦な顔を動かし、アルヴェルに向かって喋っている。


(尻尾が3本生えてる…!)


 モーラは新たなモフモフに目を輝かせていた。




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