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第14話 寝室への来訪者

 


「モーラ様ぁあ……トイレ一緒に行ってくださぁい……」


 オリーヴがラドに睨まれた時のように怯えている。

 冬に差し掛かったこの時期、夕方ともなれば廊下は暗く、特に使用人たちの部屋まわりは明かりも少なく一層暗い。

 オリーヴは近頃、そちらの区画を毛嫌いしているようだ。


「もー、幽霊なんていないよ。」

「います!いるとしか思えないんですよ……」


 使用人たちが住んでいる区画は倉庫や洗濯場に近く、寒々しい。確かに王族が過ごす部屋よりは簡素だが、それでも城内に変わりはないので作りはしっかりしているはずなのだが。


「勝手に物が落ちたり、窓が開いてたり……ベッドの周辺が散らかされてたりするんです!!」

「うーん……ラドさんに相談してみた?」

「もちろん!侵入者という事で見張りも増やしてもらいましたよ!!」


 それでも犯人は捕まらないという事だ。


「城内に犯人がいるってこと…?」

「だとしたらもっと怖いので、今日はモーラ様の私室で寝てもいいですかぁあ……?」

「いいけど…。」



 ◇◇◇



 その日の夜、いつものようにモーラとアルヴェルが寝室で眠っていると……。


「アルヴェル様!!アルヴェル様!!モーラ様!!いらっしゃいますか!!」


 ラドが2人の寝室の扉をドンドンと強く殴り、大声で叫んでいる。


「どうした!!」

「入ります!!」


 ラドが珍しく慌てている。


「よかった!お二人とも窓に鍵をかけて!!例の侵入者がモーラ様の私室に入りました!!」

「え!?」

「王妃、大丈夫です!オリーヴは無事です!!」


 モーラはほっと胸を撫で下ろした。


「被害は?」


 アルヴェルが厳しく問う。


「ありません。この部屋の周りにも既に護衛を多数配置してあります。私は捜索を指揮しますので陛下はモーラ様をお守りください!」

「分かった。兵は自由に動かして良い。」

「はっ!失礼します!」


 ラドは大急ぎで持ってきたのであろう、アルヴェルの防具と剣を部屋に置き去って行った。


「大丈夫、モーラ様。私がお守りします。心配しないで」

「は、はい……。」


 窓に鍵をかけ、出入り口に家具で封をした。

 ただならぬ喧騒にモーラはごくりを息を飲んだ。

 静かな寝室にその音が響いた気がした。



 ◇◇◇



 夜が明け、外で小鳥が鳴き始める。時刻は朝の6時。

 私が見張っているから、とアルヴェルがモーラを休ませたので、モーラはしばしの間眠っていた。

 小鳥の声にはっと目を覚まし、慌ててアルヴェルを確かめる。


「おはようございます。」


 いつもと変わらないアルヴェルの様子にまずはほっと息をつく。


「さっき廊下からラドの声が聞こえたから……」


 アルヴェルが言うのを待っていたようにドアがノックされる。


「陛下、モーラ様。ラドです」


 アルヴェルが扉前の家具をどけ、ラドを中に入れる。


「城内はもちろん、城の敷地内も隅々調べました。幸い私の部屋が近く、オリーヴの叫び声が聞こえた時点で兵を城の出入り口すべてに向かわせたので、初動に遅れはなかったと思われます。……しかし、侵入者を見つけることはできませんでした。申し訳ありません」

「そうか……部屋の周りに怪しい者はいなかったという事か?」

「はい。オリーヴが言っていたのですが、『誰もいないのに毛布が動いた。驚いて小さく声を出すと、今度は棚の上の花瓶が落ちた。』だそうです。」


 アルヴェルは眉間に皴を寄せ、難しい顔をしている。


「暗くて見えなかったわけではなく、読書用に灯りを点けていたから見間違いではない、と言っていました。」


 姿が見えない、侵入者……。

 3人は朝日の中、不安な1日をスタートさせるのだった。


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