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第12話 お兄様が怪しい小瓶を持っていますわ

 

 大々的な結婚式典から数日経ち、王宮も平静を取り戻しつつあった。

 シェリーナは自室と繋がっている作業部屋に篭り、入念に最後の仕上げをしていた。


「……よし」


 式典の時にモーラが耳に着けていた、大きなイヤリング。これを平時も使いやすいようにと、華美な装飾を減らしシンプルなものに加工していたのだ。

 特に重さを軽減するため、宝石の数を極端に減らし、それに伴う継ぎの金属類を削減した事でシンプルなデザインに仕上げた。

 耳近くにはダイヤを入れて、そこから垂れるように細い金属で兎の尻尾のようなフェイクファーを繋げた。以前に作った、モーラの腰下に付ける尻尾を小さくしたようなデザインだ。色味も抑え、白を基調とし、シルバーに合うようにした。


 シェリーナは完成したイヤリングを簡単な小物入れに寝かせ、モーラの部屋へと向かった。

 モーラの部屋へ向かう途中、アルヴェルの執務室の前を通る。執務室の扉は開いていて、中の様子が見えた。


「こちらの魔法薬をお試しくださいッチャ」

「……力作…フ……」


 怪しげな魔法薬をアルヴェルに渡す小柄な白衣姿の2人。

 小瓶に入っているそれは少量だが、アルヴェルがためらいなく飲もうとするものだから、シェリーナは大声で叫んだ。


「ちょっと!!!お兄様だめっ!!!」


 言うや否やシェリーナはアルヴェルの執務室に飛び込み、兄の手から小瓶を奪った。


「わっ!どうしたシェリーナ!?」

「お兄様、だめですわ!魔法薬をそんなに毎日服用しては体に障ります!!」


 白衣姿の2人をシェリーナがギッと睨む。


「モーラお姉さまが来てから毎日飲んでいらっしゃるのでしょう!?」

「ムッ!!チャルルの作った変身薬が体にわるいッチャ!?」

「……何もわかってない……フ……」


 シェリーナと白衣姿の2人に、側で控えていたらしき巨躯が割って入った。


「こら、やめなさい」

「わぁ!!巨人ッチャーーー!!」

「……きょ………フル…フ……」


 ラドは言われ慣れているようで動じない。


「シェリーナ、2人は研究者だよ。今までの変身薬を体に優しいものに作り変えてくれた方たち。」


 シェリーナはほんと?と聞くようにラドの顔を見る。

 ラドは深く頷き、


「チャルルさんとフェルルさん、双子でハバルナ国魔法薬学の開発部門を率いていらっしゃいます。」

「す、すみませんでした……………」


 シェリーナは素直に頭を下げる。


「分かればいいッチャ!!」

「フ…フ……」


 シェリーナの顔がまた険しくなり始めた所で、ラドとアルヴェルが双方をたしなめ、その場は事なきを得た。



 ◇◇◇



 魔法薬には他の薬と同じように副作用があり、変身薬ともなれば体に負担がかかるものである。

 アルヴェルとラドは1ヶ月程、昼間は人間の姿で過ごしていたので、万全を期しても少々の体調不良が現れることもあった。

 とはいえ安全な薬であることは確かなのだが、国王には他に考えがあった。

 もっと安全に、医師の処方がなくても使用できれば、国交の幅が広がるのではないか。


 獣人の国として独立してそれなりに歴史もあるが、世界的に見れば獣人の国というのは珍しく、見た目が野性的なため慣れていない人々にとっては恐怖の対象になりがちだ。

 歩み寄る事こそが理解の基本。その為にはまず自分たちから歩を進めるべきだ。


 そう考えるアルヴェルは開発部に依頼を出し、開発部は見事に今回の新薬を完成させたのである。


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