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第11話 ベッドでのキスは禁止です!!

 


 モーラは大きく深呼吸した。


 城のバルコニーをゆっくりと前に進み、後ろで重たいドレスの裾を持ってくれているオリーヴと目を合わせ、しっかりと頷き合う。

 夫婦で公の場に出るのはこれが初めてだ。

 ドレスに合わせてシェリーナが作った耳飾りが、王都の秋晴れに揺れた。

 隣には獣人の夫。緊張するモーラの腕に、愛する人のフワフワの尻尾が優しく巻き付いた。


「ふふ」

「……じゃあ、行きましょうか、モーラ様」


 緊張しすぎている妻が自身の尻尾で和んだのを確認し、アルヴェルとモーラは国民の前に進み出た。


「アルヴェル国王様おめでとうございまーす!!」

「モーラ様すてきー!!」


 そこかしこから祝福の言葉がかけられ、まるで金色のシャワーを浴びているみたい。

 と、ロマンチックな感想がモーラの中に浮かぶ程、この生活にも慣れてきたということだ。


「モーラ様……」


 アルヴェルは隣で緊張しているであろう妻に声をかけようとそちらを見た。

 すると、モーラは泣いている。


「え!?モーラ様!?」

「あ、ええ、違うんですアルヴェル様……こんなに大勢の国民に祝福されて……フォレガドル王国にいた頃は考えも及びませんでした。これはうれし涙なんですよ。」


 二人で顔を見合わせて微笑むと、一層国民たちの歓声が大きくなる。

 ややあり、アルヴェルがスッと手を上げると、バルコニー前の式典広場がしんと静まった。


「私、ハバルナ国王、アルヴェル・レガースは、隣におられるフォレガドル王国のモーラ・テーネルド様と、正式に夫婦となった。この歓声を糧に、ハバルナの一層の繁栄を今一度約束しよう!!」


 導かれるように新郎新婦はキスをし、国民の割れんばかりの歓声が何分も続いた。

 その後、城では貴族たちを招いた大規模なパーティが行われ、いつにない賑わいの中1日を終えたのだった。



 ◇◇◇



 ―――国王夫妻の寝室


(うわーあ!!キスしちゃった!!!!)


 モーラはベッド横の椅子に腰かけてひとり悶えていた。


「初めてキスしちゃった……」


 考えるたびに歓声の中キスをしたことが思い出されて、モーラはいたたまれない気持ちになる。

 隣にある豪華なベッドがいつもと違う意味を持ってそこにあるように感じる……。


 やけに煌びやかな寝具から目を背けるように、モーラはテーブルに突っ伏した。








 ―――……




「……モーラ様?……こんなところで寝たら風邪を引いてしまうな……」


 アルヴェルは寝室の小テーブルで眠っているモーラを、そっと抱き上げた。

 顔が近くにあり、式典の事が思い出される。

 美しいドレスを身に纏い、目を潤ませてこちらを見つめるモーラを、長年の思い人を、今この手を重ね合わせている事を、心から幸せに感じた。本当は、アルヴェル自身も涙が滲んでいたのだが、なんだか恥ずかしかったのでぐっと堪えた。





 モーラをベッドに寝かせ、軽く額にキスを落とす。


「ありがとう、本当に……。きれいだ、…モーラ……さん……っおやすみなさい」


 呼び方を変えてみたのが恥ずかしかったのか、少し上擦った「おやすみなさい」を言い、アルヴェルもすぐに眠りについた。








(わーーーーっ!びっっっっくりしたーーーーっ!!)


 モーラはアルヴェルと顔を合わせてベッドに入るのが気まずくて、咄嗟に寝たふりをしていたのだ。

 キスされた額はじんじんと熱を持ち、心臓はバクバクと音を立ててはしゃぎ回る。モーラはしばらく目が冴えたままだった。



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