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第10話 みんなでご飯を食べたら幸せです。

 


 モーラがハバルナ王国に来てから1ヶ月程経った。

 王妃の目下の悩みは『結婚式』である。

 ハバルナ王国の現役国王夫妻の結婚式である。式典が大がかりならば、準備も大がかりである。


 ひっきりなしに商人が訪れ、部屋には使用人たちが出たり入ったり、今まで大勢と過ごすことの少なかったモーラには大変なストレスであった。


 さらにオリーヴは侍女長としての教養を高めるため、ラドに付きっ切りで指導を受けており、今まで通りの2人の時間を取ることができない。


「はあー……」


 せわしなく続いていた商人と使用人の往来が終わった夕方5時。秋の落日は早く、もう外は暗い。

 不意にコンコン、と部屋の扉がノックされる。

 一日そうしていたので、反射で返事をすると、どうやら料理長の使いらしい。


「王妃殿下、夕食の準備が整っております。すぐにいらっしゃいますか?」

「んー、そうね…」


 そういえば昼食も軽く摂った程度で、ゆっくり食事をするのもいいかもしれない。気分転換にもなるか、とモーラはすぐに食事をする旨を伝えた。





 食卓に着くと馴染みの給仕が飲み物を注いでくれる。


「ありがとう」


 給仕の女性はにこ、と微笑んでお辞儀をし戻っていく。



 今日のメニューは――


 一人の食卓は寂しいが、ここハバルナの王宮料理人の食事はとても美味しい。温かくて、新鮮な驚きと感動があって……


「すごくおいしそうですね。」


 すぐ横から声をかけられ、モーラは驚く。

 振り向くと、アルヴェルがいる。


「えっ、どうしたんですかアルヴェル様!今日もお仕事が忙しくて一緒に食事できないのでは……」

「そうなのですが、妻と夕飯を一緒にしないと仕事の効率が落ちる、とラドに脅しをかけました。」

「もー、だめですよ、あんまり心配かけちゃ。」


 アルヴェルとモーラはいたずらを企む子どもたちのように無邪気な顔で笑い合った。

 席に着いたアルヴェルが食事に手を付けようとした時、ラドとオリーヴが食堂に入ってきた。


「ラド、どうした?」

「オリーヴ!?」


 二人はそれぞれ友人に声をかける。


「ちょっとオリーヴ、そんなに疲れた顔して……!大丈夫なの!?」


 代わりにラドが答える。


「王妃殿下、申し訳ない。オリーヴが限界のようなので、せめて食後にお二人での時間を持たせようと……。」

「ちょうどいい、ラドも入って4人で食事にしよう!」

「え゛えっ!?!?」


 更なる疲労を予期したオリーヴはテーブルの上をチラと見た。そうすると一瞬のうちに目を輝かせ、「いいんですか!?!?」と席に着いた。

 ラドはその様子に一段と顔を険しくしたが、アルヴェルの誘いを断る方が手間がかかると思ったのか、溜め息を吐きながらも席に着いた。






 本日のメニュー


『サーモンと野菜の前菜』……サーモンと野菜数種を一緒に食べるさっぱりとした一般的な前菜。慣れ親しんだサーモンのお刺身が緊張した心と体にほんの少しの安息を期待させる。


『とうもろこしのスープ』……夏に収穫したとうもろこしを乾燥させたものをスープ用にすりつぶしながら、こしたもの。食感をつけるために、何粒かはすりつぶさずにそのままスープに入れて温める。極少量のパセリを乗せて。とろりとした舌ざわりのスープは秋の寒さに効く。のど越しはこってりと重めの飲みごたえ。


『ローストビーフ&ハーブステーキ』……しっとり柔らかいローストビーフは「これからお肉が来ますよ」という準備をしっかり体に伝え、次に来るステーキは身構えた胃が安心する爽やかなレモンの香りと臭みのない食べ応えしっかりの厚さ。大満足のメイン。


『クリームブリュレ』……表面はパリっと焼いて、中はしっとりのクリームが2種類の食感と楽しみを提供する。定番ながらメニューにあると嬉しいデザート。








「あー、おいし~っ!!」

「オリーヴ、ラド先生とのマンツーマン修行お疲れ様。」

「オリーヴの良い所を潰さずに学んでもらうのはなかなか難儀ですよ…」

「ラドもお疲れ様だな!!私の分も食べるか?昔お前が風邪を引いた時みたいにあーんしてやろうか??」

「それを今言いますか?」



 ――食後に少しのコーヒーとお菓子。


 ―…フォレガドル王国に居た頃は、こんなに幸せな時間が訪れるとは思っていなかったな……。


 モーラは、家族で食卓を囲む幸せを噛みしめ、美味しい料理をお腹いっぱいになるまで堪能した。


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